26,最初の依頼
更新がかなり遅れて申しわけ御座いませんでしたーーー<(_ _)>
今回の内容は前回に繋げればよかったと後悔しています(つд`)
内容を忘れてしまった人が多いと思いますので、一ページ戻ってあらすじを読んでください。
登録が終わった後、タイミングを見計らったように部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
レイさんの返事で、部屋の扉が開かれる。「失礼します」と言って入ってきたのは、初めてギルドに来た時にレイさんとの面会を掛け合ってくれた茶髪ボブヘアーの受付嬢だった。
「ギルドマスター。受付にシモン様がいらっしゃっています」
「わかった、報告ご苦労様」
それだけ言うと、受付嬢は小さくお辞儀をして部屋を出た。出る際に一瞬俺と目が合ったが、少し驚いたように目を大きく開いただけで声に出して驚くようなことは無かった。
「迎えが来ているからね、最後に一つ話をしないか?」
「話ですか……」
「ああ、話だよ。シルフィーは旅に出るとシモンから聞いたよ。何処に行くか決めているのかな?」
実は何処に行くかは収穫祭で買い物をしながら考えていた。買い物をしながらその場所に行く方法、かかる日数なども調査済み。
「『リーリプット』です」
「小人族の町か。確か丁度『フローリア王国』まで行く馬車があった筈だよ。どうせなら乗せてもらえばいい。まあ、冒険者なら護衛依頼を受ければいいけど、シルフィーのランクでは受けられないからね。ランクが上がったら受けてみればいい。冒険者の先輩に色々と話も聞けるしね」
「あ、はい。分かりました」
「それともう一つ。先程話した私個人からの依頼を受けてみる気はないかな?」
「それは……依頼の内容を聞いてからじゃないと決められません」
「なに、簡単な依頼だよ。魔人族の少女、二人をシルフィーに預けたい」
「…………え?あ、いやあの、こういうのって普通ここの領主とか国のお偉いさんがどうにかすることじゃないんですか?それ以前に何で私に……」
「先程も話したけど、彼女たち魔人族には居場所が無い。私のように懐が大きい人は奴隷でなくても雇ってあげられるが、そんな人はごく少数だ。魔人族は人族よりも能力が高いから奴隷でないと裏切られた時に危険だからね。奴隷としてなら待ちたいと思う者もいるだろうけど、天使教徒は奴隷禁止。欲しくても買えないという人が多いんだ」
つまり、この世界の大半の人族は魔人族を物だと認識しているということか……。
「それに値段的に買うのは貴族だろうし、国のお偉いさんに報告したら強引でも保護しようとするだろうね。奴隷は禁止でも、魔法・アーツ・スキルを封じる『封魔の輪』を付けさせるのは問題視されないからね。まあ、本来それは囚人に使う物のだけど。あとは『スルド帝国』に送り返すのかな?まあ送り返したら再び奴隷生活だろうけどね。そういう理由があって、二人をシルフィーに一任しようかと思ったんだ。天使族である君なら二人の呪いを解くことも可能だろう?」
やっぱり、俺が天使族だということに気が付いていたみたいだ。ギルドのベッドで寝ていたから薄々そうじゃないかとは思ってはいた。悪魔族の呪いも、紋章術を使えば解くことが可能かもしれない。
「……今の私には無理ですよ」
「今の、ということは、いつかは出来る可能性があるということだね?なら、私はその賭けに乗ることにするよ。依頼内容は魔人族の少女二人を人族に戻すこと。報酬は前払いで金貨五枚。達成報酬として更に金貨五枚に、ギルドマスターと領主権限で人族に戻した魔人族に市民権を与える。こんなんでどうかな?この依頼を受けないのなら、今回の事件の全てを包み隠さず本国に報告することになるけど、どうする?」
「市民権って……、そんな簡単にほいほいあげられる物なんですか?それに、もし全ての魔人族を人族に戻したらかなりの人数になりますよ!」
「そうなれば新しい町を作るなり、王様に直談判するなりするさ。もっとも、全ての魔人族を人族にしたら『スルド帝国』と『ジルニア王国』を敵に回すことになるけど。あそこは魔人族を奴隷として扱ってるからね。まあどちらにしろ、シルフィーが心配するようなことは無い。さて、受けるか受けないか?」
レイさんが冒険者登録を進めてきた時点で、この話の結果は目に見えていた。レイさんは断ってもいいと言っているが、断れば二人は不幸になるかもしれないと脅している。日本人生まれの良心ありし俺にとって、この行為は大変息苦しい思いだった。
「―――そんなことを言われたら……断れないですよ」
「私は誰であろうと使える人は使う。使えない人は使えるようにする主義だからね。では早速、明日の正午にギルドに来てくれよ。二人に会わせてあげる」
俺はレイさんに一杯食わされた気持ちで別れを告げ、下の階にいるシモンと合流した。
「んで、レイに嵌められて魔人族二人を引き受けることになったと」
「あはは……」
シモンと合流した俺は、レイさんと何を話したかを聞かれた。一通り話すと、シモンは小さく溜息をついて呆れたような顔をする。
「話す時間がなかったとはいえ、あまり人族を信用するな。たとえ俺の知り合いだとしてもだ」
「ごもっともです……」
冒険者になれるという餌のせいで、深く考えずに承諾したのは失敗したなーと結構後悔していた。天使族だということもバレたし、また断れないような依頼をしてくるんだろうな……。
「それで、呪いを解く方法はあるのか?」
「まあ一応あるけど、時間がかかるか失敗するかもしれないから、明日の早朝にマナの森に行って試してくるよ」
「わざわざ危険な森に行かなくても、村の中でやればいいだろ」
「そうできれば良かったんだけど、魔力《MP》が足りないからね。精霊水を使わないと。それに旅に出るんだから緊急時に飲めるよう汲んでこようと思ってたんだ」
実は入れる容器も既に購入済みで、鞄に二十五本入っている。包丁を買うついでに買っといたのだ。
「無理はするなよ。命あっての物種だ」
「わかってるよ。私も死ぬのは嫌だし、危なくなったら全力で逃げるよ。それより、シモンとリリの両親、あとソウ君は大丈夫だった?」
「まあな。長時間暗闇に閉じこめられた訳ではなかったらしいから精神的には問題ない。だけど、長時間身体を固定されてたみたいだからな。リハビリが必要だろう」
「よかった。ソウ君がもの凄く怖がっていたから両親は大丈夫なのか心配だったんだ」
「そうか。シルフィー、ありがとう。心配してくれたこともそうだが、家族を助けてくれて本当にありがとう」
「いいよ、当たり前のことをしただけだし。それに家族が離ればなれになるのは辛いから」
ふと病気で入院している妹、仕事で帰ってこない両親を思い出した。いつでも帰れるけど、頼まれたことを終わるまでは帰るつもりはない。
少し話をしていただけなのに、もう転移魔法陣がある家についてしまった。時間というのは意外と早く進むものだ。
「ここまで来て言うのも何だけど、今日リリの家に泊まっていいのかな?家族水入らずだし、迷惑じゃないのかな?」
「それに関しては大丈夫だろう。今日は宴を開くだろうし、俺の両親もリリの両親もシルフィーに感謝している。迷惑所か喜ばれんじゃないか」
「そっか。図々しいと思うかもしれないけど、よろしくね」