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銀翼の紋章術師(エンブレムマスター)  作者: 森羅 紫
第一章 紋章術師
26/27

25,ギルド登録

更新大分遅れてすみません(_ _ )/ハンセイ


忘れた人のためのあらすじ


主人公・千葉銀二はトラディという異世界にシルフィーという名の天使族としてTS転成。

森の中で狼に襲われていた長耳族であるリリアーヌを助けて彼女の村へ。

長耳族の元村長であるヴァラールより元の世界に帰る方法を教えてもらうが、直ぐに帰らず異世界を旅することに。

四精霊の一人であるシルフ様から他の精霊族の様子を見てきてほしいと頼まれる。

旅の準備もかねて収穫祭が行われているアステルという近くの町に行く。

一緒に行ったシモン(ヴァラールの孫)達とはぐれたが、紋章術によって発見する。その際、失踪していたシモンとリリナーヌの両親を発見。

救出のためシモンの知り合いである冒険者ギルドのマスター、レイナールさんに協力を仰ぐ。

突入後、犯人と思わしき豚貴族と狐顔の商人がおり、彼らの奴隷である二人の魔人族の少女と戦闘。

紋章によって拘束したが、三回目の紋章作成を行い、眠気を無理矢理消したため、戦闘終了後に気が抜けて倒れてしまった。


以上となります。

次からは、あらすじを書かないように更新日を短くできるよう頑張ります(´▽`)ノ




 ぼんやりと滲んだ光が、瞼の上からでも感じられた。これでは気になって眠れない。

 仕方なく、ゆくり瞼を開く。

 目の前には少しだけ開かれた窓。窓の外は日が落ち掛けているようで、太陽の位置とは反対の空は暗くなってきていた。

 瞼に感じられた光は、近くの建物に取り付けられた金属製の看板が太陽の光を反射していたからみたいだ。

 瞬きを繰り返し、ぼーっとした意識を段々と覚醒させる。

 そういえば、いつベットで寝たのだろう?

 俺は寝る前にあった事を思い出そうと、起きたばかりの頭を回転させる。確かリリに誘われてアステルの町で行われる収穫祭に行き、道具を買ったり出店の料理を食べ歩いたりしていた。

 その後、浚われたと聞かされたリリとシモンの両親と一人でいたため浚われたソウ君の居場所を偶々知り、助け出すために冒険者ギルドのギルドマスターであるレイさんと協力をしてもらい、救出に向かった。

 敵との戦闘で一度は捕まったものの何とか脱出し、犯人の豚みたいな貴族と狐顔の奴隷商人を捕まえた。ここまでは覚えている。その後シモンと何か話した気がするが、何故か記憶がない。

 ベッドから上半身を起き上がらせると背中辺りに痛みを感じた。しかし、その場所は背中であって背中ではない。首を捻って視線を背中に向けると白い翼が確認できた。


「……ああ、そっか。『領域の紋章フィールド・エンブレム』の効果か」


 『領域の紋章フィールド・エンブレム』には、使用後全ての紋章の使用と効果が消える。もちろん『擬態の紋章(ミミック・エンブレム)』の効果も対象だ。効果が無くなり、マノ族から天使族に戻ってしまったようだ。

 着ていた『星天使の衣装(エンジェルドレス)』は『双黒狼の燕尾服』から『天使のワンピース』に変わっており、翼が服の中に押し込められる苦しい事態は避けられていた。それでも寝相が悪かったのか、止まっていた血液が流れるような感覚が左翼に感じられた。


「んで、ここ何処だろう?」


 部屋は十六畳ぐらいの広さで、俺が寝ていたベッドと同じ物が他に五つ、合計六つ置いてある。部屋には俺以外誰もいないが、その代わり床下から複数の人の声がする。先程見た窓の外の景色からして、アステルのようだ。なら、町の中で天使族の姿は不味いだろう。


「《ステータス》」


 ステータスを開くと、そこに表示されたMPは『領域の紋章フィールド・エンブレム』の代償で六割減っており、残り三割ほど。『擬態の紋章(ミミック・エンブレム)』を一回使用する分は何とか残っていた。


「《擬態の紋章(ミミック・エンブレム)マノ》」


擬態の紋章(ミミック・エンブレム)』の効果で天使族の姿からマノ族に変わる。

 種族が変わったことにより、天使族のスキルであった『耐寒』が無くなったため、ワンピース姿では少し肌寒いと感じた。

 幸いにも俺の荷物はベッドの横に置いてあったので、魔法鞄から何か羽織るものを探す。ローブだけでは寒いと思ったので、ヴァラールから貰った魔導具『緋糸スカーレットの布』を肩から羽織り、落ちないように角同士を結ぶ。羽織っただけで肌寒さは無くなり、ぽかぽかと炬燵コタツにでも入ったかのような気分だ。その上からローブを羽織る。

 着替え終わったらバッグを肩に掛け、部屋を出る。ドアを開くと見たことがある廊下に出た。シモンと行った冒険者ギルドだ。

 階段から下を覗くと、おっさん達が酒を飲んでどんちゃん騒ぎをしていた。その中にシモンとセイの姿はなく、レイさんも見つけられなかった。ということは、レイさんと初めてあった奥の部屋、203号室にいるのだろうか。ちなみに、俺が寝ていて部屋は201号室だった。

 203号室の前まで行き、軽くコンコンっとノックをする。部屋の中から「どうぞ」というレイさんの声が聞こえた。俺はゆっくりとドアを開ける。

 レイさんは書類仕事をしていたらしく、机の上で羽ペンをはしらせていた。入ってきたのが俺だと気づくと、ペンを置いてこちらを向いた。


「気がついたみたいだね。気分はどうだい?」

「あ、はい。大丈夫です。お騒がせしました」

「問題ない。それにシルフィーさんをここまで運んだのはシモンだ。礼を言うなら彼に言いなよ」

「あ、はい。わかりました。それでシモンは……」

「一旦、村に帰ったよ。流石に君を運ぶには腕の数がたりなかったようでね、村に両親を置いてから迎えに来るそうだ」

「そうですか。そういえば犯人の豚貴族と共にいた少女達はどうなりましたか?」


 あの時、俺を見て涙を流した少女達のことが気になっていた。


「ふふ……、確かにあの見た目からは豚という表現がお似合いだね。彼女たち魔人(マノーラ)族は君が言う豚貴族、本名はブーヒック・データというのだが、彼の奴隷だ。一緒にいた奴隷商人から購入したらしくてね。少女の一人が偽りを見抜く魔眼を持ち、もう一人が捕縛と収納の闇魔法が使えるらしい。今は牢でおとなしくしてもらっている」

「え、なんで牢屋に?」

「簡単なことさ。彼女達がはめていた奴隷の首輪は設定された主の命令を無理矢理聞かせる力があってね。無理やり外そうとすると、はめている者を呪い殺すのさ。一応ブーヒックとは距離をとっているから命令は聞こえないだろうけど、念のためということさ。それとは別に彼女達は主であったブーヒックの奴隷であり命令で動いていたから罰せられることは無いが、奴隷から開放できたとしてもアステルの町でも魔人族は良い印象を持たれない。孤児院に任せたとしても悪い未来しか見えない」

「そう、ですか……」


 この世界(トラディ)の人達にとって、魔人族は侮蔑するような存在だという現実に締め付けられる思いだった。何もできない俺の思いは、ただの同情かもしれないが。


「さて、今回の事件はシルフィーさんも聞いておいたほうがいいでしょう。犯人であるブーヒック・データは爵位が男爵バロン。だが、これは一年程前に亡くなった彼の父親から継承しただけで、ブーヒック自身貴族としての実績は無い。それどころか両親に甘やかされて育ったから、継承してからはお金を趣味である宝石集めに湯水のように使っていた」


 豚に真珠という言葉が頭を過ぎった。


「そのこともあって、データ家のお金が底をつきかけていた。それがブーヒックの犯行動機だったということさ。お金がなくて趣味の宝石集めが出来なくなるから……と。実はここ三ヶ月の間でアステルの町で八人の女性が誘拐される事件が起こっていたんだ。攫われた者たちで共通する点は、田舎から仕事を求めて上京して来た若い女性ばかり。そしてブーヒックの屋敷からは奴隷商人との取引の書類が複数発見された。捕まえた奴隷商人からも彼女達を南の大国『ヴィファリア王国』に売っていた証言も取れた。明日にでもブーヒックは爵位や資産が没収され、死罪となるだろうね」


 まあ八人も他国に拉致して、更に長耳エルフォ族にまで手を出したのだから仕方ないといえば仕方ない。


「ところで話は変わるが、シルフィーさんは冒険者になってみる気はないかな」


 冒険者。異世界ファンタジーのラノベでは定番中の定番の仕事。指定のモンスターを討伐したり、商人を他の町まで護衛するといった依頼が印象としては強い。


「そう……ですね。お金を稼ぐ方法も無いですし……。でも、わたし冒険者というものがどのような仕事なのか良く知らないので教えてくれませんか?」

「わかった。そろそろシモンが迎えに来るだろうし、簡単にだけど説明させてもらうよ」


 冒険者ギルドは北の三大国家、長耳エルフォ族が住む『フラングの森』とアステルの町を含めた『ヴィルヘルム王国』、小人エナノ族が住む町『リーリプット』を含めた『フローリア王国』、オーデンス大陸に唯一存在する迷宮ダンジョン『ジッグラト』を有する『迷宮王国イクリオン』と、オーデンス大陸の中央に位置する中立国家『アステリスク法国』『騎士王国エクィテス』、以上の五ヵ国で運営されている。

 ギルドに登録することで身分の証明となり、五ヵ国の都市へ自由に行き来することができる。ただし、問題行動や不正などが発覚した場合は通常よりも重い罰が科される。五ヵ国の間を好きに冒険できるが、最低限のルールを守れという事だ。

 ギルドに登録するには実技試験を受けて合格しなくてはならない。これはモンスターに殺されない最低限の実力を持つ者を選別するだけでなく、五ヵ国を行き来できる権利を与える資格があるかどうかを決めることでもあるらしい。

 ギルドにはランクが存在し、一番下の(フィフス)から最高ランクの(ファースト)となっている。

 ランクによって仕事の難易度が変わり、実力が認められれば年に四回行われるテストを受けることができ、合格することで上のランクに昇格できる。

 主な仕事内容は市民や国から依頼された仕事をする事だが、モンスターの大量発生など人手が足りない時は一定のランクを持つ者は強制参加ということもある。

 依頼は受付近くの掲示板に掲示されているので、受けたい依頼を受付に持っていくことで受付の者が対処をしてくれる。

 依頼は自身のランクと同じものしか受けられないが、依頼が多すぎて処理できないなどの事態が起きた場合は一つ上のランクの者が処理しなければならない。

 依頼は複数受けることが出来るが、失敗したときは通常よりも高い賠償金を支払わなければならず、また依頼を失敗しすぎると賠償金だけに止まらず、ギルド登録を抹消されることもある。

 冒険者同士の個人的な争いには介入しないが、ギルドに不利益がある場合は介入することがある。


「まあ、簡単なルール説明は以上だ。分からないことがあったら、その都度係りの者に訪ねて欲しい。で、登録の方の話になるが、本来なら実技試験を受けて合格しなければギルドには登録出来ないのだけど、今回の事件の協力と私の推薦で試験を免除する事にした」


 試験が免除になるのは凄くありがたい。紋章術師というチート職なら今後、強くもなれて金持ちにもなれそうだ。


「その代わり、今後私からの指名依頼を出来るだけ優先的に受けてもらいたい。もちろん無理なら断っても構わない。どうかな?」

「まあ、それぐらいなら……」

「なら、この書類に必要事項を書いてもらえるかな」


 レイさんは引き出しから一枚の紙を取り出して机の上に置く。俺はレイさんから羽ペンを借りて書類に氏名、年齢を記入した。そこで一旦ペンが止まる。次の項目、種族と職業はどうしよう。種族は人族でいいかもしれないが、職業の方が問題だ。紋章術師って書いていいのか?


「職業の欄は無理に書かなくてもいい。ただ書けばギルドの方でパーティーメンバーを募集していた時に指名されやすくなるだけだからね」


 それならパーティーメンバーを組む気はないので、空白でも大丈夫だろう。書き終わった書類をレイさんに渡す。


「確かに受け取った。ギルドの証明書は明日までには渡せるよう手配しておくよ」


 これで今日から俺も冒険者だ。バイトをする前に就職することになるとは、異世界に来る前には思いもよらなかっただろう。

 登録が終わった後、タイミングを見計らったように部屋の扉をノックする音が聞こえた。












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