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銀翼の紋章術師(エンブレムマスター)  作者: 森羅 紫
第一章 紋章術師
24/27

23,救出作戦 -前-

遅くなってすみません(≧Δ≦)

そしてレポート再提出のため、また遅れますorz

そして次の実験レポートを……


 セイの魔法により一分もかからずに指定した場所に着いた。辺りを見渡せるよう近くの屋根の上に降り立ち、『繋ぐ紋章(リンクス・エンブレム)』で居場所を確認。それが指を差した方向にある二階建ての民家だった。


「……あそこに、いるのか?」

「正確には、あの家の二階かな。五人とも動いてる様子はないよ。眠らされているのかな?」

「シルフィーさんの魔法で中の様子とかは分からないのかい?」

「すみません、これは他人との縁を辿るようなものなので、詳しくは……」

「ふむ。ならセイはここに残って、辺りに結界を張ってくれないか?」

「俺も突入の方に加わりたいのですが」

「セイの家族も捕まっているから分からなくもないけど、家の中に敵が何人いるか分からない。人数が多ければ私たちの隙をついて逃げ出す者もいるかもしれない。セイは私より支援や防御系の魔法が強いから安心できる」

「……わかりました。ギルマスにそこまで言われると私情を優先するわけにはいきません」

「ありがとう。早速で悪いけど、支援魔法をお願いできるかな?」

「わかりました」


 セイは再び長耳エルフォ語で呪文を唱える。魔法が発動すると身体に力が湧いてきた。ステータスを確認すると、運を除く5つの能力が10%程上昇しており、今の服が『双黒狼の燕尾服』だから合計15%上昇していた。

 

「最初に私が正面玄関から突入する。私に注意がいくだろうから、その隙に二階に向かってほしい」

「わかった」

「了解です」


 シモンは鞄から柄や鞘まで真っ白い剣を取り出して肩に掛ける。レイさんは腰のポーチから自分の背丈より長い杖を取り出す。杖の先には青い鱗の龍が蛇のように巻き付いており、龍の右手には赤い珠が握られていた。二人の鞄は俺と同じ魔法鞄マジックバッグだろう。シモンは鞄が邪魔になるからか、セイに預けていた。俺も一緒に預けることにする。


「準備はいいですね。それでは救出に行くとしましょうか」








「はぁ……、暇だよな」

「そう言うな。こうやってボーート、入り口を眺めているだけで銀貨10枚貰えんだぞ。まあ、酒が飲めないのは残念だけどな」

「行きと帰りと護衛するのだって銀貨20枚だぞ。しかもパーティじゃなくて、一人一人に。まったく、金持ちってのは俺ら平民とは金の使い方が違うね」

「そういうお前は、今回の報酬で酒と女に全部使い切るつもりだろ」

「ちげえね」


 とある一軒家の一階。五人の男達が高笑いしながらくつろいでいた。酒代わりに水を飲む者。報酬の話をする者。報酬の使い道を話す者。様々だ。しかし油断している彼らだが、必ず手の届く範囲に剣や弓が置いてあった。駄弁ってはいるが、自分らの仕事はしっかりとこなそうとしていた。


「それにしても、何だか寒くなってこないか?」

「まあ、収穫祭が終われば冬だからな。だんだんと寒くなってくるさ」

「いや、そういう訳じゃなくて。部屋の温度が下がっているような……」


 その瞬間、凍えるような風と共に大きく入り口のドアが開かれた。

 驚いた男達は武器を取り、椅子から立ち上がる。

 ドアの先からこつん、こつんと足音が聞こえ、黒いスーツの女が家に入ってきた。


「ノック無しだが失礼する。アステル冒険者ギルド、ギルドマスターのレイナール・クランチェル。せっかく武器を構えてもらって悪いが、武器を捨てて投降して……」


 レイが話している途中に男の一人が弓を射る。矢は、一直線に胸の辺りに飛んでいった。

 だが、その矢が届く前に彼女が作り上げた氷の壁によって防がれた。


「っな!?」

「人の話は最後まで聞くのが礼儀だろう。まぁでも、これが返事と言うことか……」

「青龍の杖に紫の髪、それにクランチェルっていう名前……。まさか……、こいつ冷血魔女か!?」

「あの女のことを知ってんのか?」

「昔、親父から聞いたんだ。四十人以上で結成された盗賊団をたった五人で壊滅させた。その一人が冷血の魔女。あの女は敵対する奴も、逃げ出す奴も、命乞いをする奴も、皆平等に凍り付けに……」


 話した男も、それを聞いた男達にも悪寒が走る。弓を射た男は手が震えて狙いが定まらずにいた。


「ずいぶんと昔の話なのに、まだ私の悪名を知っている者がいるとは思わなかったですが」


 レイは小さく微笑む。彼女からしたら普通に笑っただけなのだが、男達には死に神の微笑みに見えただろう。


「こ、この町のギルドマスターが冷血魔女なんて、聞いてないぞ!?」

「まあ、その悪名を知る者は全て牢獄か亡くなっているからね。私が知らない間に逃げ出していた者がいたみたいだけどね」


 レイは杖を構える。


「実は最近、事務仕事ばかりで鬱憤が溜まっていてね。ここらで解消させてもらうよ」







「す、すごい……」


 そんな言葉が俺の口から出た。圧倒的とは、こういう状況の時に使うのだろう。

 レイさんが放つ氷の矢は、まるで嵐の時の雨のように降り注いでいた。

 敵の男達は為す術が無く、テーブルを盾代わりに使って防いでいる。弓を使っていた男が隙をみて何度か矢を放っていたが、全て氷で防がれている。それに加え、レイさんの魔法によって周りの気温が下がってきている。今も吐く息が白い。

 セイに風の結界を張ってもらったのは、逃がさないという理由は名目で、本当は暴れるから被害を押さえて欲しいという事だったのだろうと思う。


「今のうちに二階へ上がるぞ」

「あ、うん。了解」


 レイさんが男達を押さえている間に階段を駆け上がり、シモンが勢いよくドアを開く。

 開かれたドアの先には三人の人物がいた。

 一人は、新品のように白いワイシャツを着た茶髪の男。狐みたいな細い顔で、いかにも詐欺師や裏の商人みたいな雰囲気を漂わせている。

 その男の正面には、豚に高そうな服で着飾ったかのような男。薄紅色の髪が、違う意味で薄くなってきる。

 そして、その豚野郎の足下にはローブで全身を覆った人物。肩幅からして少女と予想する。

 その少女の足下には薬のカプセルを人のサイズにまで大きくしたような物体が五つ転がっていた。


「だ、誰だ貴様等は!?」


 豚が喋った。足下にいた少女はシモンの方を向いき、小さな声で「エルフォ」と呟いていた。

 今でもシモンは人化のペンダントを身に着けている。それなのにシモンの正体を見破ったということは、少女は俺の『解析の紋章アナライズ・エンブレム』のような解析系の魔法かスキルを持っているのだろう。

 その少女の声を聞いた豚はニヤニヤと笑いだした。


「仲間を助けに来たということか。こいつらも捕まえて売りさばくとするか」

「そうですね旦那。男は女より高くは売れませんが、男を扱う売春宿に売れば儲かります」


 シモンの顔が引き攣ったような表情に見える。引いているのか、怒っているのか……。

 一応シモンに、足下に転がっている黒いカプセルがソウ君達だと伝える。それらがソウ君達だとは『繋ぐ紋章(リンクス・エンブレム)』で分かってはいた。

 シモンの作戦で、シモンが敵を引きつけている間に二人の男を捕まえる、という作戦となった。

 本当はローブの少女に正体を見破られるのが嫌だったが、シモンの家族を助け出すため、ソウ君との約束を守るため、シモンの背後から前に出る。

 その時、俺はローブの少女と目があった。

 予想通り、少女は俺の正体に気づいて驚いていた。しかし驚いたのは少女だけでなく、俺の方もだった。


 赤い瞳。


 それはヴァラールから教えられた魔族や魔人族の特徴の一つだ。

 だけど、驚いたのはそこではない。

 本当に驚いたのは、その赤い瞳に涙を浮かべていた事だった。


「おい化物、彼奴等を捕まえろ。両方男だからな、多少いたぶっても構わん」


 豚の命令により、強制的に俺から視線を外してシモンの方へと変える。

 

「……ハイ」


 小さく返事をすると、その小さな手に黒いオーラのような物を纏う。

 オーラは段々と形が整って、黒い籠手のような物に変化した。

 戦闘が始まる前に『繋ぐ紋章(リンクス・エンブレム)』の使用を取り消す。

 そうしないと、他の紋章が使う事か出来ない。相手を捕まえるために『結ぶ紋章(リボン・エンブレム)』を使用する。

 少女がシモンの方へ向かう。シモンは、ここでは狭くて不利だと判断し廊下に出た。

 その隙に俺は二人の男に『結ぶ紋章(リボン・エンブレム)』を掛けようとする。

 しかし俺は、咄嗟に後ろへ下がった。『直感』が俺がいた位置に危険があると教えてくれたのだ。

 下がると同時に床からは黒い大きな腕が飛び出し、俺を捕まえようと延びて来た。

 咄嗟に下がったおかげで捕まらなかったが、腕は形を変えて人型に変わる。

 そして再び俺を捕まえようと走ってきた。全身真っ黒で顔が無いにも関わらず意外と足か速い。


「でも、シルフ様が用意した木人形よりは全然遅い!」


 俺は木剣を引き抜いて切りかかる。

 使っているのが木剣なのにも関わらず、腕や首、胴体を切り裂くと、あっさり斬られてバラバラとなった。

 だが、バラバラとなったパーツは小さな手に姿を変え、再び襲いかかってきた。『結ぶ紋章(リボン・エンブレム)』を使用している時は他の紋章を使用できない。咄嗟に『盾の紋章(シールド・エンブレム)』を使用したが発動しなかった。


「しまっ!」


 小さな手は頭や腕、胸や腹などに振れ、俺の身体を奥へと押しやる。壁にぶつかると、黒い手は更に形を液体のように変え、身体全体を覆うように迫って来た。


「これは、少しまずいかな……」


 おそらく、ソウ君達もこの技にやられたのだろう。身体全体に行き渡った末路は足下に転がる黒いカプセルだ。何としてでも振り解かねばならない。だが、どんなに力を込めても押さえられている力補振り解くことは出来なかった。

 最終的に黒い物体は全身を覆い尽くし、目の前が真っ暗となった。





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