21,繋がり結び
前回取り消したものを大幅に修正しました。
考えていた結末も変わってしまったので、前回の21を読んだことのある人は忘れてください(x_x)
それと前回の失敗21話で、批判をしてくれた ttさんには感謝してます。お陰で、前の考えていた結末より良い話が書けそうです(*'▽'*)
ありがとうございました(≧∇≦)
俺はレイドとの戦いの後、腕相撲で手に入れたお金を銀貨1枚程使用して出店にある食べ物を食べまくっていた。
今手にとって食べているのは、出店で売っていた串焼きだ。
なぜ収穫祭なのに串焼きを売っていたのか、串焼きを焼いていたおじさんに聞いてみたら、使っている肉がクリネズミというモンスターの肉だと教えられた。
クリネズミというモンスターは、簡単に言うと針鼠の栗バージョンみたいだ。触感は肉なのに栗の風味がする面白い食べ物だ。
他にも野菜や果物を使った蒸しパンやタルトなどの美味しい物を食べたおかげで、MPも殆どは回復していた。
「MPも回復したことだし、流石にそろそろ合流しないといけないかな……」
改めて思うと、かなり自己中な行動ばかりをしていた。シモン達も心配していると思う。
昔もよく集団行動から離れてしまい、一人で行動してしまう事が多かった。反省はしているが、やはり集団行動は苦手だ。
俺は大通りから外れて、人がいなさそうな裏通りに入る。そこで祈るように手を合わせて『紋章作成』を発動させる。願うのは捜索、居場所、兎に角シモン達がいる所を探せるように祈る。
《……術者の祈りを確認。特殊魔法『紋章作成』発動検索。検索内容『捜索』………………完了。最も近い紋章を提示。紋章名『繋ぐ紋章』。取得条件『友への思い』。術者は条件を満たしており取得可能。取得を開始し……………………完了》
習得後、早速『繋ぐ紋章』の効果を確認する。
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《繋ぐ紋章》 使用MP ?
術者の家族や友人、その家族や友人の家族まで居場所を感じる事が出来る。この効果は、両者が家族友人だと思っていなければ成り立たない。
距離は使用MPのメートル分まで感じる事が出来る。
また、術者の家族や友人に対して念話をする事が出来る。MPは一回につき10消費し、その後1分毎に10消費する。
この紋章を発動中は他の紋章を使用することは出来ない。
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この紋章はGPSと通話が可能な公衆電話みたいな物のようだ。そういえば、もう公衆電話は駅ぐらいしか見なくなったな。
そんな事を思いながら、MPを取り敢えず50消費して、50メートル内にシモン達がいるか捜索する。発動すると胸元に出現した紋章が淡いピンク色に光り出した。
反応は、今俺が行る場所から南西10メートル付近に4人。シモン、セイ、リリアーヌ、ミーシャだ。反応があるということは、彼らは俺のことを友人だと思っていてくれたと言うことだろう。少し安心した。
それと、その反応とは別に南東15メートル付近に動いている反応が1人、その反応が進む10メートル先に止まっている反応が4人あった。
動いている反応はソウ君だった。おそらく、俺達を追ってきたのだろう。
その先にいる動かない4人の反応には、覚えがなかった。リグル、シャマル、レイラ、カルト。
この世界に来て初めて聞く名だった。知らないという事はシモン達の友人か家族という事だろう。
「家族……?」
直感が俺の心に変な違和感を与えている。知人という可能性もあるが、もし家族なら大変なことだ。
彼らは小人族の町に行って、その途中に浚われたと聞かされた。どうして浚われた事が分かったかは知らないが、この町にいるということは浚われた後、この町に運ばれたということだ。天使教徒のこの町に。おかしな点がいくつかある。
まず、浚って町に運ぶ理由がない。それ以前に門番が通してくれないだろう。荷物確認ぐらいはやるだろうし、バレたら牢獄行きだ。
だったら門番に内通者がいる?収穫祭を控えていたはずなのに領主が複数内通者を門番に選ぶだろうか。リリの話では悪いような人には思えなかった。
領主を信用するなら、バレないような工夫がされていたのか。
収穫祭の日に天使教徒でない誰かと取引をする誰かがいる。しかも領主にバレず動くには、隠蔽できそうな彼の側にいる人が一番怪しい。
もし本当に彼らがシモン達の家族なら、ソウ君がそこに向かっているのは捕まったと考えるのが妥当だろう。
村から出るなら人化のペンダントを身に付けていたはずだ。もちろん、シモン達の両親も。
相手は魔導具を無力化する何かを隠し持っていると考えるべきだろう。
一度ソウ君に『繋ぐ紋章』で、会話をしてみよう。
念話なら捕まっていても話した内容が相手に聞こえることはない。10MP消費して電話を掛ける。
「《もしもし、ソウ君聞こえる?》」
「《な、何だ!?頭の中に声が聞こえが……、何だこれ?幻聴!?》」
「《違う違う。私だよ、シルフィー。これは、遠くにいる人と会話後出来る魔法みたいなものなんだ。声に出さずに、心の中で話してみて》」
「《それ以前に声が出ないんだよ!手も足も動かないし、何も見えないんだ!》」
「《どういうこと?落ち着いて話して》」
「《皆を追って来たら声かけられて、振り向いたら行き成り目の前が真っ暗になったんだ。暗いし、全然感覚無いんだ。早く助けてくれ!》」
「《……わかった。シモン達と合流して助けに向かうから、もう少し辛抱して。確かに暗くて物音もしないと怖くてパニックになるのは分かるけど、男なんだからしっかり強い意思を持って!》」
「《……!!そ、そうだな、そうだよな。俺は男だし、いつか父さんや兄さんのように強い戦士になるんだから、このぐらいで怖がってちゃいけないよな。わかった、助けに来るまで頑張るよ》」
「《その意気だよ。じゃあ一度切るね》」
「《あ、ああ。待ってる……》」
俺は念話を切る。今のでソウ君が浚われたのは確実だろう。直ぐにシモン達にこの事を伝える為、再び念話をかける。
「《もしもし、シモン聞こえてる?》」
「《な、なんだ!?頭の中にシルフィーの声が……》」
「《これ、遠くにいる人と会話が出来る魔法みたいなものなんだよ。声に出さず、心の中で言ってみて》」
「《こんな感じ……か?おお!これは便利だな。こんな魔法があったなら早く使え!心配したんだぞ》」
「《ごめん。合流したいから、今いる場所から動かないでね。それと、言っておきたい事があるんだ》」
「《言っておきたい事?》」
「《うん。まず一つ、ソウ君が浚われた》」
「《なっ!それは本当か!?》」
「《本当。この町に私達を追って来ていて、何者かに攫われたみたい。それと、捕まったソウ君が向かっている先にリグル、シャマル、レイラ、カルトって名前の4人がいるんどけど、予想が正しければ4人はシモンとリリの両親?》」
「《……!!そうだ、その4人は俺とリリの両親だ!だけど、何でそんなことが分かったんだ?》」
「《この魔法は遠くにいる人と話が出来る他、居場所が分かるんだ。シモン達の両親がいる場所にソウ君が向かっているみたいだから、そう思ったんだ》」
「《シルフィー、今何処にいる?俺がそっちに行くから場所を教えろ!》」
「《ちょっと待って!》」
俺は今いる場所を確認するため、一度大通りに出る。辺りを見渡して目印になるような物を探すと、ある建物を見つけた。
「冒険者ギルド……」
それは異世界ファンタジーには定番中の定番と言われる冒険者ギルドが存在した。
「《シモン、冒険者ギルドの場所って分かる?》」
「《冒険者ギルドだな。今から向かうから、そこで待っててくれ》」
「《了解》」
そこで俺は念話を切る。冒険者ギルドに向かう前に、もう一つ紋章を作成する。
ソウ君達を救出するなら、犯人達と確実に戦わなくてはならないだろう。
いつかは元の世界に帰る以上、人殺しだけは絶対にしたくない。一度人を殺せば、俺は自分自身を許すことは出来ないし、永遠に後悔するだろう。穏便に済ませるためにも、相手を拘束する紋章を祈って作成する。
《……術者の祈りを確認。特殊魔法『紋章作成』発動検索。検索内容『拘束』………………完了。最も近い紋章を提示。紋章名『結ぶ紋章』。取得条件『友への思い』。術者は条件を満たしており取得可能。取得を開始し……………………完了》
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《結ぶ紋章》 使用MP ?
術者が指定した場所からリボンを出現させ、拘束・巻きつけ・結びなど、イメージした通りに操作する事が出来き、そして好きな長さで切り離す事も出来る。出現させるリボンの色によっては強度や効果が違い、『結ぶ紋章』を終了してもリボンは残る。
使用MPはリボンの色事に異なる。
この紋章を発動中は他の紋章を使用することは出来ない。
リボンカラー
・White 使用MP 1000
切断・打撃・魔法に対する耐久力が低い代わりに、巻きつけた場所の治癒力を高めて怪我の治りを早くする。
・Black 使用MP 50
切断・打撃に対する耐久力が高い代わりに、魔法に対する耐久力が低い。
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確認した『結ぶ紋章』は中々使えるものだった。確認後、俺は人混みを抜けて冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドの中には酒場のようなのがあり、その奥の方に受付のカウンターがある。酒場では騒ぎながら、おっさん達が昼間っから酒を飲んでいた。
中には入らずに建物の壁に寄りかかって、シモンを待つ。
シモンと俺のいた場所は少し離れていたし、この人混みでは来るのには時間がかかるだろう。
時間つぶしに『結ぶ紋章』を使用してみよう。
この紋章は場所の指定や結び方は自由みたいなので、例えば髪を束ねるのに使ったり、ファッションとして服に巻き付ける事も出来ると思う。
フードから出る長い髪が少し鬱陶しかったので、束ねるには丁度いい。フードを被ったまま、手で髪を後ろに束ねる。リボンの出現場所を左手の甲とし、そこから耐久力の高い黒のリボンを出して、押さえている髪を結ぶようにイメージする。
「《結ぶ紋章カラーブラック》」
発動後、手の甲から出現した黒のリボンが押さえていた髪を束ねるように動き出す。髪が一定の方向に引っ張られるような感覚がやって来て、しっかりとリボンが縛られるような布同士が擦れる音がする。
両手を離しても髪が乱れる様子は感じない。全体的に触って確かめてみても、大きな違和感は感じない。ただ、ブラシを使って束ねた訳ではないので、何本か髪が束ねられていなかった。
やはり、こういう事をするならば手鏡ぐらい欲しいものだ。色々な店を見てみたが、鏡は一つも扱っていなかった。この件が終わったら、リリに手鏡を何処で買ったか聞いてみよう。
シモンと合流したのは、それから5分後だった。
俺はその間に手を人と例えて、イメージだけで巻き付けて外されないようにきつく結ぶ練習をしていた。
次の更新は……、バイトとレポートと宿題の三大難関を突破してから報告しますorz