14,魔導具
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誤字脱字や何か変だった文章表現などありましたら教えてください。
私はメンタルがスライムなんで、ダメ出しされても時間が経てば回復します(´・ω・`)
ヴァラールと合流し、俺達は研究所の入口近くまでやって来た。
ここまで来る途中、村の『長耳族』と男女問わず何度か会い、その度にミーシャに対して「元気になって良かったね」「もう動いて平気なの?」などと言ってきた。
リリに対しても「怪我はない?」「無事でよかった」などと言ってきており、しかもリリに関しては割合的に男性の方が多かった。
ミレナによれば、リリは村にいる女性の中でも特に人気らしく、過去に五回ほど告白を受けたことがあるらしい。告白の回数が五回で済んだのは告白してきた相手に対し、影でシモンが「一緒に訓練でもして汗を流そう」とでも言って連れ出し、丸一日地獄の特訓をさせていたそうだ。
「―――というかシモンは、影でそんな事してないで早く告白すればいいのに……。今時そんなにモテる子と幼馴染で実は両思いなんて、ラブコメ主人公でもそんな奴は中々いないぞ」
「シルフィーさんもそう思いますよね?シモンくん、強くて逞しいのに恋に関しては弱々しいんですよね~」
「本当、勿体無い」
イケメンなのにヘタレで好きな相手に告白すらできない。しかもその相手が可愛い幼馴染の女の子で、実は両思いだったなんて……。
自分で言うのも何だが、せっかく物語の主人公みたいな感じに異世界にやって来たってのに、そんな俺よりも主人公ぽい人で、しかもリア充な奴が目の前にいると……何だかイラっとくる。
そんな事よりも研究所だ。研究所には俺とヴァラールのみが中へと入り、他のメンバーは入口近くで待機している。
最初は何故一緒に行かないのか疑問に思ったが、入った瞬間理解した。
研究所の中は薬品の臭いで充満しているからだ。
元の世界での病院などに似ている感じがするが、先まで息をしていた森の空気と比べてしまうと、息が苦しくなってしまう。
それほど森の空気が澄んでいたということだろう。確かに綺麗な空気を常に吸っている『長耳族』からしてみれば、この空気は辛いだろう。馴れている俺でも若干苦手だ。
「ここでは私を含む数人の研究者で魔導具の研究と開発をしております。世界を渡る『転移門』の整備はもちろんのこと、物を多く収納できる『魔法鞄』や私達が住んでいる『植物の家の種子』、シルフィー様が今履いておられるサイズがかわる『魔法靴』もここで造られています」
『転移門』や借りている『魔法靴』、異世界ファンタジーにはテンプレな『魔法鞄』に関しては特に驚かなかったが、風呂場や洗濯機まである万能家までもが魔導具だとは思わなかった。そもそも種子は魔導具と言えるのだろうか。
「シルフィー様は村を出て旅をするそうで。私からの少しばかりの助力として、旅に役立つ魔導具をいくつか差し上げましょう。こちらの部屋は魔導具の保管庫となっております」
ヴァラールに招かれ、部屋に入る。
部屋の中には、ここで作られた魔導具が数えきれないぐらい透明なケースに収納され、棚の上に並んでいた。
「……これ、全部魔導具?」
「はい。この部屋にある物は、アルト様が生きていた頃から考案され作り出された魔導具が試作品から完成品まで全て丁重に保管されています。魔導具の中には危険な物もございますので、このような特殊なケースに収納されています」
ヴァラールは棚に置いてあるケースの中から二つを選び、その中身を取り出した。
取り出されたのは、茶色のショルダーバッグと銀色に光る十字架のペンダントだった。
「この二つは、アルト様がシルフィー様に渡して欲しいと言われていた『魔法鞄』と『銀十字』という魔導具です。こちらの『魔法鞄』は五百種類までの物を収納する事ができます。『魔法鞄』に物を収納しても重さは変化いたしませんし、収納されている限り壊れたり、腐ったりはいたしませんので、食料品やモンスターの死骸などを収納したとしても問題はございません。もう一つの魔導具『銀十字』はアスト様が作られた作品の一つです。残念ながら『銀十字』に関しては、どの様な効果がある魔導具なのか聞かされていなかった為、分かりません。ですが、アスト様がシルフィー様に必ず渡して欲しいと言われていた魔導具です。必ず何かの役に立つでしょう」
ヴァラールから渡された『魔法鞄』は革製だが意外と軽く、サイズは高校で使う鞄より少し小さいぐらいだ。『銀十字』はシンプルなデザインの十字架で、中心に白い宝石が埋め込まれている。『銀十字』は、どんな効果があるか分からない魔導具だとヴァラールは言っていた。試しに『解析の紋章』で『銀十字』を調べてみたが、名前以外は全て《???》と記されていて解からなかった。『解析の紋章』でも調べることができない物があることに驚いた。
取り敢えず貰った『魔法鞄』を肩に、『銀十字』を首に掛けた。
今は髪型がポニーテールになっていたので、髪に引っかからずペンダントを掛けられたが、今までペンダントなどのアクセサリーをつけたことが無かったので少し違和感がある。
「とてもお似合いですよ」
「そりゃどうも」
俺が男だと知っているヴァラールに褒められても素直に嬉しく思えない。
「他には、水を作り出すことが出来る『魔水瓶』や火を作り出す『炬火石』、体温の低下を抑える事が出来る『緋糸の布』も持っていた方がいいでしょう。『炬火石』が作り出した火には、モンスターが寄り付きにくくなる効果がありますので、旅先で野宿をする場合に便利でしょう」
そう言って三つの魔導具も手渡される。早速、貰った魔導具を『魔法鞄』に入れてみた。魔導具は『魔法鞄』に吸い込まれるように入っていき、本当に物を入れても鞄の重さは変わらなかった。元の世界に帰る時にこのバッグも持っていきたいぐらいだ。
ヴァラールに、この世界で手に入れた物は『転移門』で帰るとき一緒に持って帰れるか聞いてみた。
もし持って帰ることが出来たら、金貨や珍しい物など金になりそうな物を持って帰れば億万長者に……などと考えていたが、「残念ながら、こちらの世界の物をシルフィー様の世界に持っていく事は出来ません」と言われてしまった。凄く残念だ。
その後、研究所の中を色々と見て回った。モンスターの研究室に入ったとき、培養基の中に入ったグロモンスターと目が合った時は驚き半分、後悔半分だった。
研究所を出ると、シモン達は変わらず入口近くで待っていた。
リリは俺が身に着けている『銀十字』を見て「いいな~。私もこういうの欲しいな~」と言っていた。
その言葉にシモンは食いつくように聞き入り、ミレナさんはその様子を見て呆れながらも小さく微笑んでいた。
俺達は次の目的地の大樹へと向かった。
大樹は村の中心に聳え立っており、研究所はそう離れていない為、少し歩くだけでたどり着いた。
大樹は遠目で見たときよりも近くで見たほうが迫力があり、あの有名なジ○リ作品を思い出す。
根元近くには大きな石版が設置されており、魔法陣や『精霊語』で文字が書かれている。書かれている内容は何かの魔法のようだが、魔法陣や書かれている『精霊語』が何故か読めない。いや、読めないというより理解が出来ないの方が正しいだろう。
例えるなら数学の公式が何を求めるかは理解できるが、答えが出るまでの過程が理解できない感じだ。
過程は魔法に関する知識がないから理解できないのだろう。いつか魔法関連の本でも読んで知りたいと思った。
「これより、精霊様のいる大樹の神殿入口に向かって転移を開始します。くれぐれも私の近くから離れぬようにお願いします」
ヴァラールは石版の魔法陣に手を触れる。『解析の紋章』を使用して見てみると、ヴァラールが魔法陣に向けて魔力を流しているのが分かる。石版を解析してみると『星の欠片』という名称で示されたが、テキストの方は《???》と記されており、またしても『解析の紋章』で調べる事が出来なかった。
ヴァラールの魔力が魔法陣全体に行き渡り、そこに記された魔法が発動する。『解析の紋章』を使ってなかったら分からなかったが、その魔法は移動系魔法の一種である『転移魔法』だった。『転移魔法』の転移先は《大樹の神殿入口》となっており、俺達は今からそこへ行くことになる。
魔法陣から溢れ出す光が俺達の身体を包み込む。
その瞬間、目の前が真っ白になった。
そろそろ話を進めないとな~