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ダンジョン運営奮闘記  作者: 優樹
魔王会議編
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11.皇帝の興味

今更どうでもいい感がありますが「隻眼の男」にダインという名前をつけてあげました(2012/9/16)

 幼き頃よりランドゲルズには世話になった。

 かつては魔法の研究者として帝国に仕え、魔界では貴重な上級治癒魔法の使い手として重宝された。

 かく言う余も、幼少のみぎりに患った大病をランドゲルズに癒され、それはもう一族の皆が泣いて感謝したものである。

 余が成長してからも折に触れて会い、様々な話をした。

 最初は余を救ってくれた恩人として、余が皇帝候補となってからは余の知らぬ知見を求めて。

 そして余が皇帝として魔界を治めることになったとき、ランドゲルズを補佐する魔族の一人として、余の側に置くことにした。

 しかしだ、余の元を訪れたランドゲルズ、これまで地位も権力も領地も欲さず、ただ己の研究のために生きてきたその男が、一つの願いを告げた。

「これまでの皇帝には許されんかったが、それでも言わせてもらおうかの。わしを人間界に派遣してはもらえんじゃろうか」

 聞けば、人間界に行ってどうしても知りたいことがあるのだという。

 何を知りたいのかと尋ねた余の問いに答えることはなかったが、頼み込むランドゲルズは、それは真剣な目をしていたものだ。

 余はランドゲルズを手放したくはなかったが、それでもランドゲルズがこれまで帝国に貢献してきた結果を鑑みて、魔王として人間界にある僻地のダンジョンへ派遣することを決めた。

 派遣先は元より軍の中では閑職として見られていたダンジョンだったため、余が選んだ魔族をダンジョンに派遣すること自体に問題はなかった。

 しかし相手はランドゲルズである。

 性格はともかく、貴重な上級治癒魔法の使い手として引く手数多の存在だ。

 当然、余が独断で決めたことに反発する者達が出てくることは予想出来た。

 それら反対勢力の声を抑えて、余はランドゲルズを人間界へ送り出した。

 何故か?

 それは過去に自分が命を救ってもらった恩返しとも言えるし、そうでないとも言える。

 余は興味があった。

 ランドゲルズは終ぞ、自身が長年をかけて行なってきた研究の成果について発表することはなかったが、その研究がどのような実を結ぶのか知りたかった。

 地位も名誉も全てをなげうってランドゲルズが行なっている研究。同じ研究者からは結果の出ない研究をしているから、発表も出来ないのだと揶揄されていたその研究。

 一体それは何の研究なのだろうか。

 余はそれを知りたかった。

 そのため、ランドゲルズが亡くなったと聞いたときは、愕然とした。

 人間界へ派遣して長い年月が経ったが、それからランドゲルズとは一度も会っていない。

 正確には、ランドゲルズは人間界に行ってから一度も帝都へ来なかった。

 きっと研究に打ち込んでいるのだろうと思っていた。

 だが久しぶりにランドゲルズの話題が皆の口に上ったと思ったら、聞けば突然の訃報である。

 重要度の低い話題だと思われたのだろう、ランドゲルズが亡くなってから、余に伝わってくるまでに随分な時間がかかっていた。

 当初は魔王会議も開催する予定はなかったが、後継者がいると聞いて余は開催することを決めた。

 ランドゲルズが選んだ後継者を見てみたかったからだ。

 ランドゲルズには身寄りが無く、妻や子供も存在しないことがわかっているため、きっと何かの手段で後継者を見つけてきたのだろう。

 そして今日、ランドゲルズの後継者だという人物がやってきた。

 一目見て普通の魔族ではないなと思ったが、魔力は魔王にふさわしい量が十分にある。姿形で種族が特定出来るような特徴はなかったが、身にまとう気配は若い魔族に見られるような若々しい感じであった。

 御簾越しであったが、余を見るその視線は戸惑っているようだった。

 彼はランドゲルズの研究を引き継いでいるのだろうか。

 それとも、ランドゲルズの研究は彼という完成を見たのだろうか。

 実に、興味深い。

 そして側に控えている供の者、あれはフレイ家の娘、メリル・フェアリード・フレイだ。

 エルフとの混血のため、これまで表舞台に出てくることはなかったが、優秀な人材だと聞いている。

 当主に聞けば、ランドゲルズが自ら選んで人間界へ連れて行ったのだという。

 面白い。

 ランドゲルズがどのような意図を持ってフレイ家の者、それもわざわざダークエルフを選んだのか。

 実に興味がそそられる。

 これからのことを思い、余はひっそりと笑みを浮かべた。


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