赤い糸
これまでの人生では、女の子と仲良くなることはあっても恋愛関係に発展することが全くなかった。そんな僕は、藁をもつかむ思いで縁結びで有名な神社を訪ねた。なんでもその神社には運命の赤い糸が見える巫女さんがいるという話なのだ。
「お願いします、僕の赤い糸が誰につながってるのか教えてください!」
土下座せんばかりの勢いで頼み込む僕の願いを「それが務めですから」とクールに聞き入れてくれた件の巫女さんは、僕の手や足のあたりをじっと見つめていたかと思うと、なにやら複雑そうな顔をして告げたのだ。
「……あなたのお家の近所に大きなお屋敷があるのはご存じですか?」
「ああ、知ってます。あのとんでもないお金持ちで、そこのお嬢様がまたえらく美人だって噂の――まさか!?」
「ええ、あなたの運命のお相手はそのお嬢様――の飼っている犬です」
「犬っ!? 僕は人間ですよ、そんなことってあるんですか!?」
「珍しいケースではありますが、ないわけではありません」
その言葉を聞いて僕はその場に膝からくずおれる。まさか運命の相手が人間じゃなかったなんて……。
「どうやら、その犬とあなたは前世ではつがいだったようですね。つまりあなたの前世は犬で、お二方は犬のご夫婦だったのです」
そんなことまでわかるのかと驚いていたら、実は恋愛関係だけでなく人の因縁全般がわかるのだという。
「でも、犬に好かれたって付き合えるわけでもないし……。なんとか犬じゃなくてそのお嬢様とお近づきになることはできないんでしょうか」
「まぁ運命の相手といっても絶対結ばれるわけではありませんから……。ああ、運命の相手ほどではありませんが、前世からの縁であなたとそのお嬢様の相性もかなり良いようですよ」
「え、それは本当ですか! いったいどういうご縁で!?」
失意のどん底から一気に救われた気がした僕は勢い込んで聞いてみた。
「ええ。そのお嬢様は前世でのあなたの飼い主です」




