運命の婚約者
僕の婚約者は美しく、聡く、そして優しい。
太陽の色をした輝くような金髪に、夜の海を映したような深い青の瞳。シャープな輪郭と薄い唇、凛々しい眉。僕より3つ歳上の余裕ある態度と、広い度量。すでに近衛騎士の訓練生としても頭角を現しているというのだから、非の打ち所がない。
名を、レオン・ヒューバートという。
第二王子である僕とレオンとの婚約は、友であった先々代の当主同士が交わした「互いの孫を娶せよう」という約束によって成った。
僕はその約束に、僕らの祖父に、感謝してもしきれないのだ。
「ルーフ王子」
「なあに、レオン」
「王子、私たちはきっと運命です」
いつか、レオンがそんなことを言ったことがある。僕はそれがくすぐったくて嬉しくて、レオンの隣で幸せそうに笑っていた。
レオンはいつも僕を可愛らしいと言ってくれる。僕の亜麻色の髪も、翡翠色の目も、まろい頬も、目に入れても痛くないくらい可愛いと。
僕らの婚約は、僕らが物心つく前に決まっていた。この方があなたの婚約者よ、と初めて顔合わせをさせられた時、僕はひとめでレオンを気に入った。レオンの方もそうだった、と後から教えてくれた。それが嬉しくて嬉しくて。僕たち両思いだねってはにかんだ。
それが、どうしてこうなってしまったんだろう。
レオンたち騎士団の守る城が悪政に怒った民衆によって一晩で陥落し、僕を除く王族がみな殺され、僕もレオンに助け出されなければ間違いなく死んでいた。
本当に、突然のことだった。
そして今、僕はレオンに連れられて辿り着いた山奥の家屋で、外にも出られず、レオンの帰りを待つだけの人形のような生活を送っている。
「王子」
「なあに、レオン」
「私は幸せ者だ」
あなたと、ふたりきりでいられて。
そう言って、彼はうっそりと笑った。
クーデターの真相を、目の前の男が民衆を扇動したことを知らぬまま、僕はレオンに看取られて死んだ。「運命」といられて、僕は幸せ者だった。
そして僕の婚約者は最後まで、美しく、聡く、優しかった。それだけは確かだった。




