竜王、挑発する
少しして飲み物を手に戻って来たポルテ。女は笑顔でそれを受け取った。
二人は再び話に花を咲かせ始める。
余は、ポルテに抱っこされたまま二人の会話を聞いていた。
なにしろ、この女は勇者の一味じゃ。貴重な情報が手に入るかもしれぬ。
会話の内容から察するに、どうやら二人は幼馴染のようじゃな。女の名はコレットというらしい。
ポルテはコレットのような戦う力を持っておらず、この街でずっと過ごしておるようじゃ。
コレットも血なまぐさい話はしたくないのか、戦いのことに関してはあまりしゃべる気がないらしい。
会話の内容はここ最近の街のことだの、二人の知り合いの誰それが結婚しただの、そういったことに終始しておる。
まったく、じれったいのう……! あの時の戦いがその後どうなったのか、知りたいというのに……!
そんなふうにイライラしだした余じゃったが、何やら女も似たような感情を抱き始めていたようじゃ。
面白くなさそうな顔で、飲み物に口をつけておる。
コレットは飲み物をテーブルに置き、何かを決意するように改めてポルテを見つめた。
「ところでさっきから気になってるんだけど……」
「なんだい?」
「その……ちょっとくっつき過ぎじゃない?」
……ん?
言葉とともに、コレットは視線をチラチラと余に送って来る。
「……? くっつき過ぎって?」
「ええっと……だから……そのトカゲにちょっと構い過ぎなんじゃないかなって……」
もごもご、という擬音が似合うような、はっきりとせぬ物言いをする女。
ポルテはどうやら気づいておらぬようじゃが……。
……ふ……ふふふ……ふはははは……。
なんじゃああ? おぬし、まさかやきもちを焼いておるのかあ?
そうかそうか、そうであったのかあ……!!
何しろ幼馴染であるわけじゃからのう……! 口には出せない感情を秘めていたとしても不思議ではあるまいて!
そうと分かったからには、やることは一つである!
どれ、余とこいつの親密さをたっぷりと見せつけてやろうかのう……!
まずは、こうじゃ!
余はさっそくポルテの衣服をつたって体をよじ登り、胸板に頬をすりすり。
「あはは、今日はなんだか甘えんぼさんだね」
「むっ……」
ちらりと視線を投げかけると、コレットは不機嫌な様子を隠そうともせぬ。
わはは、効果てきめんじゃ!
さらに追い打ちじゃ……ほっぺをペロペロしてやる。
「ふふっ、くすぐったいよ」
「……」
我が直属の四天王もかくや、というくらいの恐ろしい形相で余を睨みつけておる……おお、怖い怖い!
余は気が済むまでコレットにポルテとのふれあいを見せつけると、やがて定位置であるポルテの膝の上に戻った。
勝ち誇った笑みをコレットに投げつけてやることも忘れない。
ああ、最高に気分が良くなった! ざまあみろじゃ!
ああああああああああああああああああああ……。
余は……余は……一体何をやっておるのじゃあ……。
人間の男に対してあんな媚を売るような真似……まるで下級淫魔のようではないか……。
余は竜王なのじゃぞ……。
ううっ……これも……これも……全てあの女魔法使いのせいなのじゃあ……。
コレットが帰ったあと、寝床に戻った余は枕を涙で濡らしながら猛省したのであった……。




