竜王、尿意を催す
食事を終え、別の皿に用意された水も飲んで。
余は床にうずくまったまま、これからのことを考えておったのじゃが。
しばらく経った後、厄介な現象が余の身に起きはじめていることに気づく。
食べたものをさっさと流し込みたくて水を飲みすぎたのじゃが、それが尿意という形になって現れたのである。
うぐぐ……どうしたものか……まさか床に粗相するわけにもいかぬし……この男が見てないうちに、外に出て済ませるか? しかしドアは閉まっておるしのう……。
余がそう悩みはじめた、ちょうどその時。
「あれ? どうしたんだろう……あ、そうか」
余を観察して何か思うところがあったのか、男がいきなり余を抱っこする。
お、おい待て。何をする!?
身をよじるがその腕を振りほどくことは出来ず、男は余を抱えたまま玄関のドアを開けて外に出てしまう。
余はそのままいずこかへと連れ出された。
「安心して、すぐ近くだから」
いったい、何を安心せよと言うのか?
外に出ようと思っていたから好都合ではあるが……。
やがて、川のせせらぎが大きくなってきた。どうやら、家の近くに小さな川があるようじゃ。
ここが目的地だったのか、男は川べりで余を突き出すような持ち方に変えた。背中側を男に、お腹側を川に向ける体勢になる。
「ほら、しーしーしよ。しーしー」
うあああああああああああああああああああああああああああああああああ!?
こ、この男、余に放尿させようとしておるのか!?
い、いや、確かに余はそうするつもりだったが!
家の中でされたら困るのも分かるが!
ばっ……馬鹿っ……!! 無礼者! 余は竜王であるぞ!!
余は暴れるが、がっちりと支えられていて脱出できない。
そうこうしている間に尿意は限界点に達しつつあった。
「緊張してるのかな? 大丈夫、大丈夫。出したらスッキリするよ」
男が余を抱き寄せながら、もう片方の手でお腹をまさぐる。
おいよせ馬鹿おなかを押すな漏れる余は一人で出来る放っておけ頼むやめろ駄目お願いやめてやめ
しょあああああああああああああああああああああああああああああああああああ……。
……あ……。
……ああ……。
……ああああああああああああああああああああ……!!
ついに、見事な放物線が余の股間からあふれ出し、川の中へと消えていく。
この瞬間、余の胸に到来したものは、勇者との戦いで感じたそれをも上回る大きな敗北感であった。
余は排泄物と一緒に大事な何かを放出してしまったかのように、もはや身じろぎもせずじっと放尿の感触に身を任せていた。
やがて出しきったことを確認したのか、男は余の体を密着させるように抱き抱える。
視界に入った男は、満面の笑顔で余のことを見下ろしていた。
「しーしー出来たね……えらいえらい」
褒める言葉と共に、男が余の頭を優しく撫でる。
余はもはや抵抗する気力もなく、男に撫でられるがままであった。
ううっ……余はぁ……竜王でぇ……それなのに……よりによって人間の男なんかに……お漏らしするところを見られてぇ……。
男は竜王の尊厳を破壊したことに気づくことなく余を抱っこして帰宅し、寝床として用意された箱の中に放した。
安息の時間を得たことで、余の脳が先ほどの思い出したくもない出来事を勝手に反芻してしまう。
そのたびに、余はこの世の終わりのような気持ちになるのであった……。
……くすん……もうお嫁に行けない……。




