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竜王、決意する

 力を取り戻し始めていると気づいたあの日から、とヴァミュウはポルテや街の住人の目を盗んでこそこそと特訓を続けていた。猫用ドアが取り付けられてからは、昼も夜も出入り自由になったのがありがたい。

 その甲斐あって、自分でも予想していなかった早さでかつての力を取り戻しつつある。

 そもそも元々持っていた力であるから、新たに身に着けるよりもよほど簡単だったのは嬉しい誤算じゃ。


 ドラゴンブレスも初回の幼年期だった頃に比べて、ずいぶんと大きな炎を吐き出せるようになった。今ならば、人間であろうがモンスターであろうが、大抵の相手は一息で焦がし尽くせるはずじゃ。

 身体能力に関しても、のそのそ歩くしか出来なかった頃とは比べものにならぬ俊敏さと強靭さを手に入れた。今の余は、鈍重なトカゲの姿にはあるまじき素早さで高く跳躍し、鋭利な爪で切り裂くことができる。

 残念ながら、竜王として人型だったころに愛用していた魔法などはまだ使えぬようじゃが、ただの竜としてならいっぱしの戦闘力を身につけた、と言えよう。

 竜にしては、身体のサイズはまだ小さいままじゃがの……。ふたたび人型の姿をとれる日はまだまだ遠そうじゃ。

 そうそう、この体ならではの必殺技も身に着けた。必殺技名も考えておかねばな。


 かつて幼年期であった頃に比べると、明らかに余はパワーアップしておる。

 人型の姿をとれるほどに成長した暁には、きっと過去とは比較にならぬほどの実力を手に入れておるに違いない。


 これこそが、余があの時使った魔法の本質なのやもしれぬ。

 つまり、かつての経験や知識を活かして己の一生をやり直し、成長度合を増大、加速させるというわけじゃ。

 何しろ小さい頃には見えていなかった正しく効率の良い道筋が、最初から見えているわけだからの。

 ただ力を取り戻す日を漫然と待っていたら、無為な日々を過ごしていたかもしれぬ。

 きっかけを与えてくれたヴァミュウに感謝じゃの。

 さすがに直に伝える気にはなれぬが。


 そのヴァミュウは先日、ポルテの幼馴染コレットとの邂逅から、特訓に身が入るようになっていた。

 きっと、脳内で何度もコレットを惨たらしく殺しているのであろう。

 そう思うと怖気がするが、特訓を熱心にするようになったのは悪いことではない。

 猫としての本性のせいか、どうにもさぼりがちであったからの……。

 やつが得意としておる赤と青の光から放つ炎と氷の力が増大したのはもちろん、それに加えて多少の魔法も操れるようになったようじゃ。

 その中にはヴァミュウがかつて使えなかった種類の魔法も含まれておる。

 ヴァミュウも余と同じように、以前よりも加速度的に強くなっておることは間違いない。

 猫の体の俊敏性も磨きがかかったみたいじゃし、敵に捕まることもそうそうあるまい。


 ある程度力を取り戻した今の我らなら、少なくとも下級モンスターに遅れをとることはなさそうじゃ。

 そろそろ頃合いなのではなかろうか?

 安全が保証されているならば、いつまでもこの街にとどまる意味はない。この街で無害なトカゲを装っていた理由は、あくまでも身の安全のためじゃからの。


 街の外に出て。

 きっと生きているはずの他の四天王と合流し。

 やがて余の城へと帰還する。

 もはや廃墟と化しておるかもしれぬが、余さえ健在なら、モンスターどもを動員してふたたび一大勢力を築くことも出来よう。

 その頃には余も完全に力を取り戻し……いや、きっとかつて以上の力を手にしておるはずじゃ。

 再び人型の姿となり、玉座で勇者どもを待ち受けてやろう。


 勇者とその仲間たちの実力はもう分かっておる。

 あの時敗北したのは事実じゃが……二度目は負けぬ。

 そう断言できる自信があるのじゃ、今の余には。

 勇者どもをこの手でねじ伏せるのが、今から楽しみである。


 ……。


 おお、そうじゃった。

 もうひとつ別の楽しみがあったわい。

 ポルテの幼馴染であり、同時に勇者パーティーの魔法使いであるコレット。

 ……余こそあの時のトカゲであると正体を明かしたら、あの女はどんな顔をするかの? ポルテもろとも貫くべきだったと嘆くかのう……。

 まあコレットにとどめを差すのはヴァミュウに譲ってやることにするか。

 あの女を剥製にして飾るというアイディアは捨てがたいが、余が倒してしまったら根に持たれそうだしの。


 首尾よく勇者どもを倒したそのあとは、そのあとは……。




 ……全ての人間どもを……そして……最後にポルテを……。

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