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アメリカ篇 前章4

 1940年4月5日 14:22 ホワイトハウス ――――


「ミーミルの無力化。この命題に対して、3つの困難がある。そう考えている」


 黒板に図式が書き込まれる。アルベルトの図式に、皆が注目する。


「まず、相手は、最大高度20000mを飛行し滞在することのできる。巨人機である。翼幅300m、全長400m。この大きさを、浮かせる能力を持っている。これだけでも、脅威的ではある。――ああ、いったん魔術とか神秘の話は横に置いておこう。いずれ、立ち向かわないといけないとしても、今は、その時ではない」


 アルベルトは、人差し指のチョークを、ノンノン。とでもいうように立てて横に振った。魔術的な話や神秘に対抗する手段をと言いかけた職員は、即座に口をつぐむ。静寂が戻ったところで、黒板に書きこまれる。見ないふりをしていた事実。それは、一瞬にして大統領を渋面にさせる。


「現状、我々にこの高度を攻撃する有効な手段はない。そして、この高度に対する知見もない。この高度が、パイロットにどんな効果を与えるのか、無事でいられるのか。

 それも定かではない。」


 最新の科学情報が書き込まれていく。だが、聞いてメモを取っている学者たちも、時折そのメモの記載を止めて、静かに考え込む。軍人たちは、わかったようにうなづくしかなかった。政治家たちは、ただ静かに傾聴した。それは、聞いているものの半分も理解できないようなものだった。


「私は科学者だから、この場面に宗教的な観点は捨てることにしている。まず、知ってもらいたいのは、人体というものは見た目の通りデリケートな代物だ。傷を負えば血が流れ、一部を縛り続ければ、先は腐り落ちる。ここら辺は、ソー博士のほうが詳しいだろうが、人体というものは、そういうものだ。現在の技術で、高度20000mに人間が滞在できる時間は、ほんの数分。これを超えると低酸素で、脳がやられてしまう。低温で、手足がやられるかもしれない。そして何より……この高度では、太陽が敵になる」


「非人間的な戦場……か」


 ルーズベルトが漏らした声が、狭く静かな講堂に響いた。どうやら、気が付いたらしい。


「片道切符です。大統領。」


 静かに目を閉じてうなづいた。続けろということらしい。


「では、近づけた。攻撃すればいい。とはならないのが、この問題を複雑にしています。現存する武装は、この高度に耐えられるように作られていません。これは、理論だけではどうにもならないもの……工業技術的な課題になります」


 高度20000mで、安定して、武装を使用する。文字にすると簡単だが、そうはいかない。おそらく、その武器を開発できるか。そしてそのテストができるのか。それは大きな問題になる。

 それは、ライン会戦において、このミーミルが使用された可能性をMI6が示したこと。そして、フランスのレジスタンスからもたらされた、奇妙な情報漏洩事件に、この巨人機がかかわっているとすれば。

 これは、単純に高度20000mに迎撃機を飛ばせばよいという話にはならない。たとえ、迎撃機を創る理論ができたとしても……工場をピンポイントで攻撃されたのならば、それも造れない可能性もあるのだ。


「ですが、これは、最も重大な問題の前の些事にすぎません」


 アルベルトの平坦な口調が、皆の思考を現実に引き戻した。

 ここまでの内容が些事?

 皆が、首を傾げた。


「我々は、このミーミルがどこを飛んでいるのか見る方法がないのです。そして、これをどう克服するのか……現状では、方法の一つも出ません」


 音が、今度こそ、消えた。

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