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彼は何者?

黒いぼろぼろのマントをまとい、上へと逆立つ白い髪をした少年が、ヴェスティル王国の中心都市へと足を踏み入れた。彼は振り返ることなく、ただ前だけを見つめながら大通りを歩き、王国内でも三本の指に入る名門──**「キリト学院」**へと続く道を進んでいった。


建物の中に入ると、彼は周囲を見渡し、受付を探した。見つけるとゆっくりとそこへ向かう。受付では、白いシャツに白いベスト、白いズボンを身につけた少女が入学願書を受け取っていた。


「こんにちは。入学の書類を提出したいのですが。」

少年は静かに言った。


「ようこそ。ではお名前をお願いします。こちらで入学用のデータを作成しますね。それとひとつ…当学院の入学条件はご存じですか?」


「僕の名前はステルティア・ナイト。条件は…聞いた話だけですけど、テストと試験を受けるんですよね?」

黒い外套を着た少年が答えた。


「その通りです。テストと試験は試験官が案内します。ロビーでお待ちください。」


「わかりました。」

少年は受付から離れた。


その背後で、他の志願者たちが彼の服装を見てひそひそ話し始めた。


「何だよあいつ、服ボロボロじゃねぇか。きっと親が貧乏なんだろ。まともな服も買ってやれないんだ。」

紺色のタイツに白いシャツ、肘までの紺色マントを着た少年が言う。


「ほんとだよ、エニオ。絶対ただの田舎者だ。ここでは魔力と頭を試すんだぞ? あんなやつがまともに魔法使えるわけないし、教養だって俺たちの足元にも及ばないさ。かわいそうに、一番最初に落ちるだろうな。」

茶色のタイツにバナナ色のウィンドブレーカー、黒いシャツを着た少年が鼻で笑った。


「だよな、クウェンティオ。」

エニオが頷いた。


やがて全員が教室に呼ばれ、筆記試験が始まった。席に着き、ペンを手に取り、問題用紙を解き終えると、ふたたびロビーで結果を待つよう指示された。


10分ほどすると、三十歳ほどの男性が姿を現した。黒いジャケットに白シャツ、黒いズボンという姿だった。


「入学志願者の皆さん、ようこそ。私は第二試験の試験官です。皆さんの魔力量を評価します。今日は選考の最終日なので、今年の再挑戦はありません。本日合格する三十名が最後です。では、第二試験の内容を説明します。」


「準備できています!」

志願者たちが声をそろえた。


「よろしい。これから皆さんには指定された相手と一対一で戦ってもらいます。では最初の三組を発表します。」


ステルティア・ナイト 対 マイアス・クウェンティオ

ダナツィオ・エント 対 メヤス・マイア

エグニマ・シエル 対 ガイエン・ソクラティオ


「第一組、挙手してください。」


黒衣の少年ステルティアが手を上げ、紺色のマントを着たクウェンティオも手を上げた。


「クウェンティオ、ラッキーだな。あの貧乏人が相手だ。思い知らせてやれよ。」

エニオがいやらしく笑う。


「任せとけよ、エニオ。あんなやつ一撃で終わらせてやるさ。」

クウェンティオは余裕の表情だった。


試験官に案内され、一同は小さな訓練場へと向かった。二人は互いに向き合って立つ。


「始め!」

試験官が手を振り上げて宣言した。


「見てろよ。クウェンティオが学院にふさわしい魔導師ってのを見せてやる。」

エニオは観客席に座りながら言った。


「おい、お前。今なら降参してもいいぞ? 弱い相手を痛めつけるのは趣味じゃないんでな。」

クウェンティオが腕を広げ挑発する。


「その前に、自分が何を言ってるのかよく考えた方がいいと思うよ。相手を侮るのはよくない。」

ナイトが静かに返した。


「何だと? まさか俺に勝てると思ってるのか? 俺が誰だか知ってるのか? 裕福な家の出で、幼い頃から鍛えられてるんだぞ!」


「へぇ。それで相手を判断してるの? それは無知と傲慢の証拠だね。」

ナイトは頭に手を当て、呆れたように言った。


「てめぇ……言わせておけば! エネルギー魔法《破裂衝》!」


クウェンティオが怒りのまま魔法を放つ。

ナイトは軽々と跳んで避けた。


さらにクウェンティオは苛立ち、攻撃を連発する。そして数撃目でついに命中した。


「ほらな。どれだけ避けようが無駄なんだよ。試験は終わりだ。」


「これで終わり? 君、本当に鍛えられてきたの? 全然痛くなかったよ。」

ナイトは皮肉を込めて笑った。


「何だと!? 弱いだと!? てめぇ、今度こそ容赦しねぇ!」


そう吠えた瞬間、ナイトは急に床を蹴って滑り込み、クウェンティオの足を払って転倒させた。

そしてそのまま 拳を顔に叩き込む。


「降参する? 魔法なしでも勝てるよ。」


「だ、誰が……降参なんて……!」


「その気概は悪くない。じゃあ見せてあげるよ――

光魔法《夜明け》!」


光属性の一撃がクウェンティオを直撃し、彼はそのまま気絶した。


「勝者、ステルティア・ナイト。第二組、準備してください。医療班は負傷者を運んでください。」


観客席で見ていたエニオは青ざめ、急いで友人の元へ駆け寄った。


「クウェンティオ! 大丈夫か!?」


「彼は気絶しています。医務室へ運びます。」

医療班の一人が落ち着いて告げた。


エニオは立ち尽くし、つぶやいた。


「……あいつ、何者なんだ?」


夕方──選考終了


「結果は掲示板に貼り出しました。ご確認ください。」

試験官が言った。


エニオと仲間たちは掲示板へ向かった。


「やった! 合格だ!」

エニオは嬉しそうに叫んだ。


掲示板には:


アクシルティア・エニオン 18位


と書かれていた。


「じゃあ、あの少年は……1位……?」

エニオは驚愕して声を失った。


「すごいな。でも俺たちも合格できたんだし十分だよ。」

隣にいたマエルスが言った。


「でもクウェンティオは落ちたんだぞ……。」

エニオは悔しそうに唇を噛んだ。


「心配するな。いい考えがある。」


「どんな?」


「聞いたんだが、自分の席を落ちた志願者に譲れるらしい。27位の女の子だ。三人で押せば余裕だろ。」


「……確かにな。他に方法もないしな。ザラを呼べ。」


「よし、行こう。どこに行ったか知ってる。」


その会話をナイトも耳にしていたが、彼はすぐには追わず、呼び出された学院長のもとへ向かった。


ナイトは学院長室の扉を閉めた。


「合格おめでとう、ステルティア・ナイト君。」

床まで届く青いローブを着た学院長が言った。


「ありがとうございます。でも、なぜ僕を?」


「入学書類に“保護者”の欄が空欄だったからね。君だけだったんだ。理由を聞いてもいいかな? 無理にとは言わないよ。」


「……親はいません。兄が育ててくれています。」


「そうか。ご両親は……その、どうされたんだい? もし言いたくないなら言わなくていい。」


「……捨てられました。それだけです。」


学院長は息を呑み、すぐに頭を下げた。

「すまない。辛いことを思い出させてしまったね。」


「大丈夫です。」


「なら、来週お兄さんを学院に呼んでくれないか? 君の支援について相談したい。ここは名門だ。負担が大きいのは確かだからね。」


「お気持ちは嬉しいですが、大丈夫です。」


「まあまあ、そう言わずに。せめて食堂の食券だけでも受け取ってくれ。うちの食事は自慢なんだ。」


「……ありがとうございます。」

ナイトは食券を受け取った。


「では行っていいよ。何かあればいつでも来なさい。」


ナイトは部屋を後にした。


学院長は静かに呟いた。

「……あの少年に幸せが訪れることを願うよ。」

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