姉の寝言がどう聞いても、魔王との第一最終決戦の場のようなのだが、そこもヒロインの聖女じゃなくていいわけ?
なろラジ参加作:タイトルに「寝言」
「おやすみ」と、ネット小説を読んでいる一つ上の姉に声をかけた。
「うん、おやすみぃ」
読書中の姉の声はもちろん、めんどくさそうだった。
うちの姉は中二病の気があり、ドラマでも漫画でも現実でもすぐに推しのカップルを見つけては、全力で応援する癖がある。きっと、今も全力で応援中なのだろう。
現実なんてヒロインみたいに輝けないんだから、別にそれはそれでいいんだろうけど。
私だって同じようなものだけど、夢の中くらいは、ヒロインでありたいものだ。そう思って、目を閉じた。
寒い……。やっぱり毛布を準備しておけばよかった。そんな後悔をしながら真っ暗になった部屋の中で目が覚めた。尿意と戦うこと数分間。布団のぬくもりを手放す覚悟が出来たころ、突然姉の声がした。
「いいわ、私が足止めする」
目はつぶっているし、寝息も聞こえる。寝言のようだ。おかげで目がすっかり覚めてしまったことは、よかったことなのだろうか。
ただ、私は、トイレに行きたいから、足止めされると非常に困る。
「ぎゃぁああ」
今度は乙女ならざる叫び声。
な、なに? なんなの?
もう一度、姉を覗き込めば、やはり寝息を立てている。
寝言、なんだよね。
トイレ行っていい?
「早く行って」
は、はい。
「私の魔力が残っているうちに」
……ごめん、姉よ。何を言っているのかよく分からない。それを言うなら、私の膀胱スペースが残っているうちにである。
そう思い、もう振り返らないとトイレに向かうと、止めのように背中に言葉を浴びせられた。
「聖女のあなたと勇者が残っていれば世界の希望は潰えないもの。そうよ、早く行って」
世界というか、あなたの希望の間違いじゃない?
いや、もうとにかく、限界。
すっきりした私が部屋に戻ってくると、姉は安らかに眠っていた。
夢の中で本懐を遂げ、ご臨終されたのだろうか。
どうやら、姉は夢の中でも命を懸けて推しカプ活動をしているらしい。
すみません。馬鹿らしいものが描きたくなりました。
お読みくださりありがとうございました。
この作者他にはどんなの書くの?と思われたら、広告を飛び越えて読み回りリンク集へどうぞ。
お好みのボタンを押してみてくださいね。