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異世界転移は物語だけでお腹いっぱいです。


 コッペパン大の、フランスパンサンドイッチのような物を頬張り、話を聴く。


――かたい


 その感想がまず真っ先に、心の中で出てしまうほど、かたいパンだった。


「んで? 異世界って断言する理由は? 聖女召喚の儀とは? 現状のわたしたちの扱いは?」


 食べる時間を確保する為か、シロは質問をいくつか投げる。そしてサンドイッチを食べだす。


 シロの質問に答える前に、金髪の男と大男は立ち上がり、深々と頭を下げる。

 何度目かな? と思いつつも、黙って食べつつ、男2人を見る。


「わたくしは、この国の第一騎士団団長、アレクライト・スヴァルニーと申します」

「わたくしは、同じく第一騎士団副団長、ゼランローンズ・シェリッティアと申します」

「「この度は、誠に申し訳ありません」」


 金髪の男と大柄の男が名乗り、改めて謝罪を行う。

 石造りの部屋で最初に遭った、ドヤ顔男や仙人じいさんと違って、この2人は何度も頭を下げる。


――ここまで謝られると、逆に申し訳なくなってくるのは、日本人のサガかしら?


 と思いながらも、楓は食べる手を止めない。

フランスパンのような物は、紛う事なく、フランスパンだ。かたいのだ。楓は顎が疲れてきた。まだ4分の1も食べてないけれど。

 そんな強敵パンを、いつの間にか咀嚼を終えて飲み込んで、テーブルに用意されていた、紅茶を一気に飲み干したシロは、口を開く。


「聞きたいのは、謝罪じゃなく現状だ。さっさと座って話をしてくれ。デカい男2人が頭を下げていたって、デカいんだ。圧が鬱陶しい」


――シロちゃん、オブラートに包んで……。今時、生オブラートは見ないけど。


 2人は申し訳なさそうに座りながら、アレクライトがまず、口を開く。

 2つ目のパンに伸びている手が、カエデの視界に入る。


――シロちゃんケンカだけじゃなく、顎も強いのね……


「まず、『聖女召喚の儀』から。太陽と惑星が直列に並ぶ周期が150年毎に訪れます。その日にだけ、『聖女召喚の儀』を行えます。聖女は繁栄の象徴のため、国の重鎮たちは、こぞって喚び出そうと躍起になっていました。聖女を異世界から、強制的に招くこの行為は、誘拐となんら変わりないものだと、反対する者も居りました。わたくしと、部下のゼランローンズ筆頭に」


――ふむふむ、太陽はちゃんとあるのね。

 惑星直列って、理科の授業で先生が何かを、熱心に語っていた気がしたけど、何だったかしら……?

 召喚は、相手の承諾無しに行われるから、誘拐と一緒。うん、そうよね


「議会で反対の声をあげるわたくしたちを欺き、秘密裏に彼奴らは、神殿へ魔力を込めていたようで、我々が気づき向かった時には、召喚が終わっていました」


――あいつらってのは、多分、あの仙人とフードマントたちの事かしら……聖女と呼ぶ女子高生しか、目に入ってなかったものね。


「貴女がたに、異世界と告げた理由は、あの神殿は、普段絶対に人が入れないよう、結界魔法が施されております。結界を一時的に解除出来るのが、王家の血筋を持つ者のみとなっている事と、外から入ったにしては、貴女がたは冬の備えを一切しておられない。そして、儀式を行った部屋の奥にいらっしゃった。それらのことから、おそらく巻き込まれて来られた方、と判断致しました。過去にも、召喚に巻き込まれた方の、記録がありましたので」


――へぇー、記録とかあるんだ……150年より前って明治あたりよね……さらに前だと江戸だし……モノモチがいいのかしら


「そして、貴女方の現在の扱いは、召喚に巻き込まれた一般人として、わたくしとゼランローンズの独断にて、保護をしている状態となっております。ちなみに、召喚の間を通じて現れた方々には、言語の共通化魔法が掛けられております。言葉が通じてるので、お分かり頂けているかと」


――日本語通じてると思ったけど、翻訳が自動で掛かっているのね……何かこれゲームやラノベでよく見るチートってやつかしら。

 そういえば、魔導具とか魔法とか言ってたわよね……すんなり受け入れてるのは、私がヲタクだからかしら……異世界転移ってヤツよね……どうしよう、帰りたい気持ちの前にちょっとワクワクしてる……鎮まれ、私のヲタク脳!!!


 楓はひとり、自分の脳内と戦いだした。


「ふむ……つまりここは、カンペキに地球じゃないって事だな」


――シロちゃん冷静に事実を突きつけないでよ……ワクワクしつつも、まだ現実味を帯びてないんだからね、私!

でもこの人たちが、盛大なドッキリを仕掛けてるとか……これがVRなのかもしれないし……!!


 シロをチラリと横目で見つつ、顎だけが必死に働いている。次のパンを半分ほど食べたシロは、口を開く。


「惑星直列は、わたしたちが住んでいたところでは、惑星の公転周期を計算予測しても、過去10万年起きてない現象らしい。惑星直列は、ここから周りの惑星が、夜空に見える現象、と言うわけではないよな?」


 アレクライトが頷きながら、言葉をつなぐ。


「えぇ、『星詠師』が天啓を受ける現象で、惑星の位置を知らせてくれます。太陽から一直線に星々が並ぶため、惑星が観測できるのは、外惑星に限ります。『双子月』の上下に輝いている星々が、惑星になります」


――ホシヨミシ……此方の世界にある職業みたいだ。惑星の位置を感じ取るとか、日本じゃ何言ってんの? ってなるはずなのに、何かストンと落ちてくるように納得できる。

 フタゴツキってのも、あの夜空にあったふたつのお月様で、この星の衛星だ、と何故かストンと納得……やっぱり翻訳チートのおかげ??

 安全靴はなんで、翻訳されきらなかったの??

 シロちゃん、工具を振るう作業着のお姉さんなのに、星の事語れるって何者??

 シロちゃんの順応ぶりに、私はついていけない……。


「あんたらが、独断で保護ってのは何の為に? 現に、わたしらの宿代や、飯代だって掛かってる。余分な出費だ。独断って事は、経費で下りないかもしれない。そこまでの親切を受ける理由がわからん」


 パンを飲み込んだシロは、(いぶか)しむ目を向ける。


「特別なチカラや、知識だってない。飯代、宿代を差っ引いてもお釣りが来る金を得るには、売り飛ばすくらいしか浮かばんが……」

「そのような無粋な真似するわけが無かろう! あのボンクラのせいで巻き込まれたのだ! 貴女たちは、もっと我々に怒りをぶつける事をしても、おかしくないはずだ!」


――大男が喋った。たしかゼランローンズさん?

 あ、この中で喋ってないの私だけになっちゃった……

 ん? ボンクラって誰だろう。ドヤ顔のあいつかな? 仙人かな? これには翻訳チート働かないのね……

 2人の説明を聞いて、翻訳チートのおかげで、普段聞き慣れない言葉もストンストン落ちてきて、色々わかった


――私とシロちゃんは帰れない

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 長文の時の句点位置が気になって読みづらいためリタイヤ。 声に出してセリフを読み上げると、変なところで切れている気がします。 言いづらいです。 例 「議会で反対の声をあげる、わたくした…
[一言] 「まず、『聖女召喚の儀』から。太陽と惑星が直列に並ぶ周期が150年毎に訪れます」 科学が進んでいない世界かと思っていたが、天動説じゃなく、地動説じゃん。
[良い点] お、おもしろい…!!!
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