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異世界ファッション


 話が終わって、朝食も終わった頃、アレクライトが部屋を訪ねる。その手には衣料品を持っていた。


 目立たないように着替えて欲しいと言い、彼はすぐ部屋を出た。ゼランローンズはトレーを持って、アレクライトと同じように部屋を出る。


「ロングスカートとブーツかぁ……。ますますラノベの異世界っぽいわね……」


 足を出すのが恥ずかしいのだろうか、肌の露出は抑えるのがメインファッションなのか、そんな感じの服しかない。季節もあるだろうが。

 楓は無難に、ふんわりとしたブラウスに編み上げベスト、焦げ茶色の暖かそうな生地のロングスカートを選ぶ。


 シロに渡された服は男物の服だ。それに関して彼女は了承済みのようだ。

 アレクライトは、できる中の最大限を目指して、めちゃくちゃ頑張ったであろうと思われる。

 男物の服が、やや可愛い系のデザインだ。


 外の寒さ対策に、長袖のインナーとタイツも着用して、ブラウスの上からストールを羽織ると、ファンタジー世界の村娘になった気分だ。


 シロは村の男風、と言うより、領主の息子みたいな感じだ。

 襟付きのシャツに、厚手のロングベスト、スキニーみたいなボトムスに、膝までのロングブーツ。


 髪は適当に後ろで一纏めにしようとしてたので、楓がヘアセットを行った。

 右側の髪を編み込みにして、左側に持っていき纏めた。一纏めでも左側に髪を垂らせば、お洒落息子感が増す。

 リボンで飾りをつければ、男装の麗人に磨きがかかる。

 前髪はシロの要望により、片目を隠してピンで止めた。


「ありがとな。次はクロだ」


 今度はシロが楓の髪をセットする。

 楓の髪はサラサラのストレートタイプなので、きっちりと編まないと解けてしまうようだ。耳の上から編み込みを作りハーフアップに纏めた。

 ちょうどバレッタがあったので、結び目に留めて完成。


 髪を結いてもらってる間に、楓は目元にコンシーラーを塗り、軽くBBクリームを顔全体に塗り、ほんのりピンク色がつく薬用リップを引く。

 デスマーチ真っ只中だったので、普段の化粧は目のクマを消すくらいしか、していなかった。

 化粧ポーチにも最低限しか入れてなかった事を、酷く後悔した。


 シロの目にもクマがあった。だが気にしないらしい。

 肌が強くないので、化粧が出来ないから仕方ない、と開き直ってるそうだ。


 着替えが終わったら、チェックアウトするそうで、荷物を持ってロビーに来て欲しいと言われていた。


 脱衣所の魔導具に作業着とスーツを突っ込んで、浄化をかける。そして魔導具によって畳まれた服を、シロのカートにしまう。


 楓の鞄には、スーツが入るスペースは無かったので、シロが入れてくれた。

 ロビーで先に待っていた男たちは、感嘆の息をもらす。


「よかった、サイズ合ってましたね。似合っていますよ」


 アレクライトが、優しく微笑んで褒めてくれる。

 イケメンの笑顔は眩しすぎて、楓の頬は少し紅潮する。

 このくらいならきっと、BBクリームが隠してくれてると思いたい。


「シロ、似合いすぎてるんだが……」


 どこからどう見ても、イケメンがいる光景に、ゼランローンズの表情は「解せぬ」と言いたげだ。

 楓はうんうん、と大きく頷く。


 キラキラの美丈夫なアレクライト

 ザ・漢! の代名詞のような、猛るカッコよさ溢れるゼランローンズ

 クール系美男子なシロ。女の子だけど。


――眼福だ。


 楓は心の中で、そっと手を合わせて拝む。


 ひとまず、王宮へ行かなければならないらしい。

 元々は、国が保護してくれるって法律? があるみたいなので、国が保護を放棄したと扱って、アレクライトとゼランローンズの家が、保護を交代する手続きを行うそうだ。


 公式的に保護を行えば、後の文句は受け付けさせないので、後から「やはり国が保護を」と言い出しても、楓やシロの承諾なしに、実行できなくなるらしい。


「扉のついた、寒さを凌げる馬車を借りたかったのですが、この町にあった貸し馬車が、荷馬車の幌タイプしか無かったので、道中寒いかと思います、申し訳ありません…」


 そう言ってアレクライトは、またマントを楓に掛ける。

コートも衣服と一緒に貰ったので、断ろうと思ったが、寒さに慣れてないと厳しいものになるので、と押し切られた。

 マントからいい匂いがする。


 視線を横に向けると、ゼランローンズは、無言でシロにマントを巻きつけてる。何度も断られたから、断られる前に押し付けたようだ。簀巻きに近い。


「何で巻くんだよ!」


 シロがツッコミを入れる。だが、答えずにシロが持っていたカートとリュックを、シロから取り上げて手に持った。


「声を掛けると断るだろう」

「雪見たら、体が冬モードになるから、このくらい全然平気だって」

「これ以上、断られたくないのでな」


 有無を言わさず、とテキパキ行動する。

 "冬モードになる"事に誰もツッコミを入れないので、楓は小首を傾げるしか出来なかった。

 幌馬車に、アレクライトとゼランローンズが乗ってきたらしい馬を繋げて、馬車部分に荷物を載せてアレクライト、楓、シロが乗り込み、御者台にはゼランローンズが乗る。

 カーテンをかけ、寒さを少しでも遠ざける。


 そして馬車は動き出す。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 雪を見ると体が冬モードになる! 雪国出身者としてはすごくよくわかる!! なぜか雪が積もると、体が寒さに対応して切り替わった感じがして、少し暖かく感じるんですよね 他のちょっとした描写に…
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