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貴女たちだから頼っていいんだよ?


「初討伐が赤猪とかあり得ないから…まずオニワトリあたりだから……」


 翻訳チートによると、オニワトリとは、鬼のようなツノが頭に生えた鶏で、臀部の毛が黄色と黒色で、鬼のパンツを纏ってるように見えるため、その名がついたもので、魔物の討伐に慣れるための練習台として狩られることが多い。

 繁殖力が高くて、攻撃力が低いので、尚更練習に向いてるそうだ。

 鬼がこの世界にも存在してるようで、ツノとパンツも共通事項なことにも驚いた。もしかしたら翻訳で収まりのいい言葉になっているだけかもしれないが。


 食事を終えたのでチェックアウトして、次の町を目指すことにする。

 町の人らに見送られる。猪を狩って素材を丸々渡してるので、英雄扱いのようだ。


「ツキカ、すげー強いんだな! 赤猪倒せるなんてかっこいいじゃんか!」


 少年タノルも見送りに来ていたようだ。

 流石に朝にあったばかりなので、月華も覚えていた。


「こら! あんたはまたそうやって……!」


 彼の母親が、また失礼な物言いをしたと思って、注意をするが、少年は言い返す。


「ち、ちげーし! ツキカは友達だし!」


 え、そうなの? と言いそうな月華の口を、ゼランローンズが慌てて押さえる。


「そうだな、友達だ。王都に戻ったら手紙を送ろう」


 ゼランローンズがにこっと笑って言葉を返すので、月華もそれに倣っておいた。


「え?! てがみっ?!」


 まだ字があんまり読めないタノルは、後ろにさがって驚きのリアクションをとる。


「計算問題も一緒に入れてやるよ」


 月華が真面目な顔で言う。揶揄うためではなくあくまでタノルのお勉強のためだ。


「お、おてやわらかにお願いします」

「おう」


 町人に見送られながら次の町へ向かった。



 馬車の中で、月華は編んでいた花モチーフを繋げて、縫い上げた。

ストールくらいの大きさのものを楓の肩にかける。


「うわぁ、かわいい!」


 花と花の隙間が空いてて、隙間から着ている服が見えるので防寒具というよりは、オシャレアイテムのようなストールだ。


「なんか昔にこんなストールを、通り掛けに見た気がして」

「私も見た事あるわ! ちょっと気の抜いた服でも、こういうの羽織っておけばオシャレしてるように見えるアイテム!」


 月華にとっては、防寒の意味をなさないスッカスカのストールというか、ハンモックの網をストールにしている品という印象だったが、今になって装飾だと理解する。


「実物を見れば、姐さんも商売モンになるか判断しやすそうだしな」

「確かにそうよね」


 色々お金になりそうな題材は、見逃さないようにしているつもりの2人の目は真剣だ。


 そんな様子をアレクライトは内心残念に思う。

 金はハッキリ言って、王都の一等地を屋敷を余裕で買い取れるくらいあるし、使用人を雇っても困窮せず、綺麗な宝石やドレスを沢山買ってあげれるくらい、あり余るほどあるが、それらを望まない2人の謙虚さがもどかしい。

 女性に贅沢な暮らしを送らせる事なんて、貴族の間では当たり前だ。贅沢な暮らしを確実に送る事ができる人を、女性は選ぶ。

 甘やかして、頼られて、甘えられたい気持ちでいっぱいのアレクライトは、目の前の光景が少し物悲しい。



—————貴方がスヴァルニーの?

 派手なドレスを着て、胸をこれでもかと強調して、髪は縦巻き、化粧は濃い。

 そんな女が見てくる目は、どう見ても値踏みするもの。目つきが金貨を見てるような感じに見えてしまう。

 魔導具をいくつか作ったからお金は14才にしては潤沢にある。

 オレは金じゃねぇっての……!



—————まぁ、貴方なら、ワタクシにドレスをプレゼントしてくれても、受け取ってあげてよ?

 なんだこの高飛車な女は……という感想しか出てこない。お茶会という名の婚活パーティーで、彼に寄ってくるのはいつもこういう高飛車、我儘、爵位だけ高い貧乏家。

 騎士になったあとも、オレをみる目は金貨と一緒だ。



 容姿と金にだけ釣られて寄ってくる、アレクライトの人間性を見ようとしない女たちに辟易した過去を、ふと思い出す。


 そう考えると目の前の女性たちは、アレクライトの金など当てにせず、お金を得る方法を思いついて、実践に向け書き溜めている。努力家な部分はとても好ましい。と思うアレクライトはほんのりと顔が綻んでいた。


――あぁ、頼って欲しいけど、それは彼女らじゃなければ嫌なのか……。


 なんとも矛盾に近い何かを感じながら、アレクライトの胸に何かがストンと落ちた。目の前の人が稀人だから、ではなさそうだ。


——自分の力で生きようとする、心の強さに惹かれたんだ。


 特に楓は、弱い魔物すら倒せなさそうな、庇護対象なのに、女性が働く事に厳しい世界と聞いても、必死に自分の足で立ちたがっている。

 いま、仮に彼女を放り出したとしても、彼女は足掻いて足掻いて生きようとするだろう。

 絶対にそんな事はしないし、この手を離れようとしたら地の果てまでも追っていく自信はあるが。


「なぁ、アレク。聞きたいことがあるんだが」


 月華からの声に意識を浮上させる。


「わたしに合う武器ってなんだろうか?」

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