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鬼退治に行こう  作者: 夏目 碧央
3/10

出立いたす

 押し問答が続いた。小一時間、続いた。ばあちゃんとの一騎打ち。言葉の一騎打ちだ。

「とにかく、俺は鬼を倒せるんじゃ。俺がやらなきゃ、誰がやるんだよ。」

「お前がいなくなったら、この家はどうなる?畑は誰が耕すんじゃ。」

「家の事は、矢七に頼んでおいた。そんで、隣の孫作には、うちの畑仕事を手伝うように頼んでおいたから、大丈夫じゃ。」

「そんな、孫作にはどうやってお礼をすりゃあいいんじゃ?」

「それなら問題ない。俺が鬼ヶ島からお宝をたんまり奪ってくるからな。そのお宝を孫作にも分けてやるっていう約束になっとるんじゃ。」

ばあちゃんは呆れてものが言えない、という風に首を振った。そして、

「分かった分かった。それで、いつ立つんじゃ?」

と言った。

「おお!分かってくれたのか?明日じゃ。明日の朝立つ。ばあちゃん、きび団子作ってくれ!」

俺は喜び勇んでそう言った。


 じいちゃんとばあちゃんに見送られ、俺は腰に木刀ときび団子を下げ、鬼ヶ島へと旅立った。

「おーい、朱李。朱李や!待ちなさい!」

振り返ると、宗達先生が走ってやってくる。

「先生、どうしたんですか?」

「本当に、鬼ヶ島へ行くのか?」

「はい。」

「それなら、これを持っていきなさい。」

宗達先生は、布に包まれた銭をくれた。

「先生!こんなもの、もらえん。」

俺はその銭を突っ返した。

「持っていきなさい。お前、そのきび団子が無くなったら、どうするつもりじゃ?まさか鬼ヶ島へ日帰りで行くつもりではなかろう?」

そう言われて、俺はぐっと詰まった。適当にそこら辺の草でも食って・・・というか、畑の野菜でもいただきながら・・・などと考えていたのだ。

「先生、ありがとう。」

俺は素直に銭を受け取った。


 村を抜け、知らない村に入った。そろそろ腹も減ったので、きび団子でも食おうと座る場所を探してキョロキョロしていると、

「おい、ここに良い塩梅の切り株があるぞい。」

と、声をかけられた。見ると俺と同じ年くらいの若者だった。

「おお、気が利くな。」

俺はそう言って、その切り株に腰かけた。そして、腰にぶら下げていたきび団子の包みを取り出し、膝の上に置いた。一つ取って口へ持っていく。いつも通りうまい。一つ食い終わって、もう一つに手を伸ばそうとすると、先ほどの若者がこっちをじいっと見ているのに気づいた。

「それは、なんじゃ?もしかして、きび団子か?」

その若者が言った。

「そうじゃ。」

若者は近づいて来て、更にじいっときび団子に目を落とす。

「それを、一つ分けてくれぬか?もしくれたら、お前のお供をしてやる。」

「お供?」

「見た所、旅をしているのだろう?だが、一人旅は危ない。俺は腕が立つぞ。お前を守ってやるぞ。」

そんな事を言う。

「守ってもらわなくてもけっこうだが、一緒に鬼退治に行ってくれるとありがたいのじゃが・・・。」

「は?鬼退治?」

「そうじゃ。鬼退治。一緒に行ってくれるなら、きび団子を分けてやろう。」

俺がそう言うと、その若者は考え込んだ。そして、改めてきび団子に目を落とす。

「分かった!鬼退治に行く。だから、そのきび団子をくれ!」

そう言って、俺が座っている切り株にじりじりと詰め寄って座った。きび団子をほれ、と差し出すと、そいつは一つ掴んで、口に持って行った。

「むー、うまい!もう一つ、いいか?」

「ほれ。」

「むー、やはりうまい!」

「お前、名前は?俺は朱李じゃ。」

「俺は生成きなりだ。よろしくな!」

軽そうなやつだ。


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