プロローグ
とある森。一人の少年が隠れるように倒れていた。漆黒の髪と赤い眼、青白い肌には幾つもの裂傷があり赤い血が流れていた。そしてその手には金糸の鎖が巻き付いた虹色の魔石が握り締められていた。
「代わりの魔石さえ見付かれば…ゴフッ!」
誰にも届かない呟きは吐血により遮られる。ひとしきり血を吐いた少年はバタリと仰向けになり空を見上げる。もう駄目か…と思った瞬間、暖かな風が全身を包み込んだ。
少年の傷はみるみる塞がり荒い呼吸が穏やかになる。
「これで大丈夫」
金色の髪の少女が少年のそばに駆け寄りしゃがみ込んだ。
「獣にでも襲われたの?」
「…誰だ…!?」
「通りすがりの者です」
「こんな森の奥にか…?」
「探しの物があって」
「まだ…子供だろう…?」
「貴方だって子供じゃない」
「私は…」
言い淀む少年を訳アリと判断した少女は黙って魔石を差し出した。
「これは…」
「さっき代わりの魔石が見付かればって言っていたでしょう?」
「聞いていたのか…?」
「聞こえただけよ、貴方にあげるわ」
ハイっと差し出された小さな手には少女の目の色と同じ菫色の魔石が乗っていた。
「ありがとう…借りるよ」
「別に返さなくて良いわ。探し物のついでに見付けた物だから」
じゃあねと立ち去ろうとした少女を少年が呼び止める。懐から取り出した袋に虹色の魔石を入れ少女に渡す。
「何時か返しに来るから代わりにこれ持っていて」
「うわ~凄い!マジックバックじゃない!?」
「え~そっち?中身の方が凄いのに…」
「本当だ~金糸の呪縛が掛けられてる。これじゃ使えないね」
「え~そっち?虹色の魔石は他に無いのに」
じゃあ何時か交換しに来てと言って立ち去って行った少女の後ろ姿を見つめていた少年は菫色の魔石を握り締めふと気が付いた。
「あっ…名前聞いて無かった」
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