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五羽目 見えざる襲撃者



『着いたぜ。 あれが魔獣の森だ』


久しぶりに見る緑一色の美しい景色。殺風景な砂漠に目をやられてるのもあって、ダイヤモンドよりもずっと輝いて見える。

この瞬間だけは、エロ画像よりも自然の風景が目の保養になる。

解説くんもそう思うだろ?


『そうかそうか。 あんた、やっぱり前世は男だったんだな』


こいつ同情してる。なにに対してだ?


『今のお前、メスだぞ』


「へ?」


メス?刃物の?


メスとは外科手術や解剖に用いられる極めて鋭利な刃物である。語源はオランダ語のmesナイフに由来する。「メス」という語は日本独自のものであり、西欧各国語では英語でいうところのスカルペル、またはランセットに相当する語でこれを示す。


どこかのサイトで見た、医者じゃなければ役に立たない無駄な知識が脳内をよぎった。


『おーい、とぼけんなー。 本当はわかってるんだろー?』


「オレは本当に女子になっちまったのか?」


『そーだな。 お前さんはドラゴンのメスだ。 大体の転生者は性別は変わらないんだけどな、まさか性別まで変わっちまうとはな?』


だからか、この世界に来てからオレの下の方がやけにスースーすr『オットォーー!! ここから先は良くねぇな!?』


「オレはドラゴンになりたいとは言ったことあるけど! あるけど! 女になりたいとは一言も言ったことねぇぇぇぇ!!! よ!!」


ホントはちょっとだけ、興味合ったような気がしなくもないけどやっぱりしない。


………人生、どうにでもなる。

異世界転生すればそういうこともあるさ。

人間の姿になるでもないし、どうとでもなる。


とにかく、森へ行こう。砂漠を抜けなきゃ未来はねぇ。


『!! 足下、足下から来るぞ!!』


解説くんの怒鳴る声が脳髄を叩いた瞬間、オレの身体は激痛と共に宙を舞った。


なにが起きた? 耳が聞こえない。


ドラゴンなのに、空宙で身動きが取れずに、懸命に滑空しようとする様は、解説くんも見ててさぞや滑稽だったろう。


砂に顔面から叩きつけられて転がる。


「うわっ! ぺっ!」


口の中に入ったきな粉砂を唾と混ぜて吐き捨てる。

何日もこれしか食ってないんだ。いい加減、この味も飽きたよ。


「なんだ、なにが起きたんだ?」


『魔法攻撃だ。 火属性の初級魔法のようだが、お前さんには堪えるだろーよ』


丘の上に移動してオレは目視、解説くんはレーダーで索敵を行うも、攻撃者の姿は捉えられない。

地平線まで見渡せるのに見つからないのは、丘の影に隠れてるのか、それとも………。


「砂の中にいるのか?」


『レーダーには反応無しだ。 敵さんはどうやら無属性魔法のステルスがお得意らしいな』


ステルス。

対空レーダーでも捕捉不能の高い隠密性能の爆撃機や、光の屈折を利用した光学迷彩のことかい?

それともオレたちの視界や脳神経を弄ってオレたちの肉眼からは消えてるとか?


『オレらの脳を奪ってる可能性はないな。 オレっちはエネルギー意識生命体だからな、そもそも奪えるブレインが存在しねぇ』


「と、なると光学迷彩か」


『どうやら魔力波長を利用したレーダーも、音響反射(ソナー)もヤツには通じねぇみてぇだ。 魔力で吸収して音を反射しやがらねぇ』


透明人間かよそいつ。


「どうやって戦えばいいんだよ!!こんなの反則だろ!!チート使うなよ、このチーターが!」


『落ち着け相棒! まだどうにかなる、一旦森まで逃げろ! そうすりゃ撒けるかもしれ……今度は左だ!』


反射的に左を向く。なにもない空間から紫色のボーリング玉サイズのボールが射出される。

考える前に体が動き、サイドステップで回避。

また、きな粉砂に顔面ダイブを決める。


オレの尻尾の先っぽを掠めたボールは、標的を見失ったまま明後日の方角へ飛んでいき、大爆発!! ………ほどでもないが、オレには致命傷になるほどの爆発を起こす。


『後ろだ!!』


今度は背後。背筋が凍るほどのプレッシャーを感じる。

振り返らずにダイブの姿勢から転がる。

顔のすぐ横に着弾した野球ボールサイズの魔力の弾丸が爆発するが、無いよりはマシだと翼でガード。

小さい分、威力は低いのか、盾にした翼の皮膜に小さな穴が開く程度で済んだ。

その〝程度〟で済むかよ。痛ぇし。


「なあ解説くん、この怪我治らない?」


『ほっときゃ治るさ。 なんせドラゴンだからな』


透明人間の正体は未だに探せない。人間じゃないけど。


「出てこい! この陰険野郎!!」


ちょっと挑発してみる。 こんなショボい文句が挑発になるかは知らん。


口下手なオレには、我ながら安い台詞しかはけないんだからしょうがない。

………。


『上だ!!』


魔力弾を避ける。


爆風に乗って滑空。どさくさに紛れて砂漠の外を目指す。


『相棒、速く降りろ! 地上から狙われてるぞ!』


見下ろせば無数の魔力弾の弾幕が形成されていた。

弾幕厚いよ!! なにやってんの!? オレが死んじゃうでしょぉぉぉ!?

あ、オレを殺したいんだったね、そうだったね!


「死ぬから、死ぬから! 助けてくれ!?」


『オレが解析して逃げ場を探る!! オレの指示に従え!』


「わかった!」


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