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二羽目 竜生RTAおつかれさまでした


救助が到着するまで、残り三日。

水が無ければオレは死にます。最寄りの水場までは歩いて五日の距離。

一晩中歩いて残りは四日分の距離がある。そして、今日中に水が無ければ死ぬと、解説くんに診断されました。


うん、昨日の夜から頭痛もするし、今は目眩もするのは気のせいじゃない。


はい詰みました。オレ死にます。


『すまねえな、産まれた場所が悪かったんだ。 お前さんはいい奴だったよ』


「勝手に殺すな!!!」


どうしよ。マジでどうしよう。


頭を抱えてしまいたいが、そんなことする時間すら今は貴重だ。


今は動かないと死ぬのだ。 なんでもいい、昔のテレビ、本、マンガでもアニメでも、今の状況で役に立ちそうな知識を、雑学を思い出せ!俺!!


「そうだ、解説くん! この近くに動物とかはいないか?!」


『ん?あぁ、オレのレーダーによると、近くにいる。 だがどうすんだ? 血でも飲むのか?』


「そうだよ!!」


狩りなんてやったことないけど、失敗すれば死ぬだけだからね。

産まれて三日で竜生お疲れ様でしたはしたくない。


『なるほどな、それはいい考えだ』


解説くんの同意もある。

行ける行ける。


解説くんレーダーを頼りに、目的のブツを探すこと数時間。

ようやくお目当てのモノを見つける。


『あいつがこの砂漠の魔獣【シュガースライム】だ。 糖分と水分をたっぷり含んだ魔獣だ。 今のお前さんでも十分倒せるレベルだ』


「不意を突ければどうにかなるってこと?」


『逃がすなよ?』


きなこ色のスライムの集団の様子を、きなこの中に隠れて窺う。全身が溶けた砂糖でまぶされて気持ち悪い。


本当は動物の血を飲もうかと思っていたのだが、このスライムどもはエネルギーとして消費される糖分よりも、水分の方を多く含んでいて、丁度いい砂糖水だと解説くんが言ってくれた。


動物の血を飲む行為については、昔見たディスカバリーチャンネルかサバイバル番組の知識だ。

病気になるからマジで緊急時以外はやっちゃいけないらしいけど。


「今!!」


ゆっくりと気取られずに接近。

距離が縮まったら、粉から飛び出して一気に襲いかかる。


爪がきな粉色のスライムに突き刺さった。

長い爪は中心にある核を破壊して息の根を止める。


他のスライムはもう逃げたけど、一匹いれば喉は潤う。


『シュガースライムは世界でもこの砂漠だけに生息する特殊な魔獣だ。 危険を感じたら糖分を道にして、安全な場所にテレポートする能力がある。 戦闘力は……まあ見ての通りだな』


テレポートとかできたのかこいつら。


それ先に言ってよ!!


『わりぃな。 オレっち結構抜けてるんで』


スライムのオレが開けた傷口から、大切な生命の水がこぼれてる。


急いで口をつけて飲む。飲むというか啜る。


甘い。 きな粉よりは薄味だけど甘い! 甘味しか食ってないから糖尿病になりそう。


全部飲み干した喉の状態からして、こいつ一匹で一日分の飲み水にはなりそうだ。

一匹狩るのは簡単だった。

当面の水の心配はしなくてもすみそうだ。


でも飲み過ぎると病気になりそうだ。

メタボリックドラゴンとかダサすぎて笑うわ。

メタリックならかっこいいけど。


『ドラゴンは人間よりも遥かに頑丈で健康だし、火ぃ吹いたり空飛んだりすんだ。 当然、熱量も人間より多く消費する。 あんまし気ぃ使う必要ねぇと思うぞ?』


「今は生きるのに必死だけどさ、人間だった名残りは大切にしたくてね。 前世の記憶持ち越してるのも良いことばかりじゃないな」


『お前さんは今までオレっちが面倒見てきた連中に比べりゃあいくぶんかマシさ。 なんせ、人で無くなったことに絶望して自殺しちまったり、過酷な野生生活で狂っちまった奴も何匹かはいたからな』


「オレ以外にも色々いたのか?」


『おうよ、オレっちは長老の指示でお前さんみてーな前世持ちの竜…………いわゆる転生者が成体になるまでサポートしてんだ! にしてもお前さんは大人しくて、なかなか話しやすいやつだ』


「人間の記憶はどれもロクな思い出が無くてね。 ま、負け犬ってヤツ? それに、ドラゴンや怪獣は大好きだから、大好きなものになれて嬉しいし、ドラゴンの生活をオレなりに楽しんでるからな」


水も補給したし、次はどこに行こうかな?


きなこ砂漠の殺風景な景色は見飽きたし、自然豊かな森に行きたいな。


でも姉御ってドラゴンの迎えも待たなきゃいけないし………。


「次のスライムを狩りに行く。 解説くん、レーダーよろしく」


『あたぼうよ、探してやる』





それから数時間。

スライムを狩って、狩って、狩りまくる。

乱獲とは言うまい? オレ一人で生態系を壊せるわけがないんだから。


スライム砂糖水もたっぷり飲んでお腹いっぱいになったけど、腹がふくれすぎて身動きが取れない。


『いま襲われたら詰むな』


語尾に『wwww』が付きそうなからかう言い方。


『ま、気楽に行こうや。 どうせこの砂漠に肉食の外敵はいねぇんだしよ。 水だって、本当ならたまに降る豪雨だけでなんとかなるんだぜ?』


「オレみたいなのが例外なのか?」


『そういうことだ』


解説くんのズバッと切り捨てるとこ、嫌いじゃないよ。

好きでもないけど。


『オレなんて全然優しいぜ? なんせ、子犬って魔物に取り付いた女はスゲー毒舌だったからな』


「子犬………そのまんますぎる………」


『因みに、その転生者は猫派だったらしいがな。 最後は魔王を倒したあと、自分の世界に帰っていったらしいけどな』


猫派なのに、犬にされる不運よ。

でも元の世界に戻る方法もあるんだ。


『そいつの場合はかなり特殊なパターンだ。 なんせ、ロードフェンリルっつー、多次元に影響を与えるほどの強い魔力を持つ最強のウルフ族がバックにいたのは有名な話だからな。 実在はするのに、誰もその姿を見たことがない、伝承や記録にしか存在しない伝説の魔物の一体だ』


「ロードフェンリルはリアルチートかよ」


『お前さんのボスである長老も、伝説の一歩手前にいるんだがな』


そんなすごい魔物たちが、なんでこぞって転生者に味方してくれるんだい?


『お前さん方は異世界………地球という星の知識がある。その知識や技術は、この世界の発展に使える。 当然、オレたち魔物に有益だ』


「大半は技術者でも、科学者でもないんだけど?」


『そう、ほとんどのヤツは……言っちゃ悪いがハズレだ。

だが、それならアタリが出るまで引き続けるだけだ。オレはな、お前さんがアタリかハズレか見極めることも仕事の一つなんだ』


おちゃらけてる喋り方の解説くんが、真面目に話してる。

緩い印象がある分、真剣な声色は怖いな。


『お前さんをドラゴン族の役に立つ、優秀な戦士にするための教育もオレの仕事だ。 安心しろ、オレがついてるんだ。 一人前に育ててやるよ』


「よろしくな」


『そうそう、これからはオレのことを師匠と呼べよ』


「それはヤダね」













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