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十四羽 冒険者襲来



町の探索を続けて数時間。

解説くん、そこでボロ雑巾みたいに物干し竿でイナバウアーしる解説くん、聞いていいかな?


「なんだ、相棒」


キリッとした顔を作っても、その格好じゃ滑稽なだけだよ?

まあいいや。 ここは俺ことブリトラが束ねる魔物の町。


「そうだな」


知性ある魔獣である魔物の集まる町。


「まあな」


人と共存できる連中の集まりなんだよな、転生者の知識や技術を欲しがってるし。


「そうだ」


なのに、なのに、どうして冒険者とやらが襲撃してくるんですかねぇ!


「殺せ、殺して皮を剥ぎ取れ! ここの資源は全ていただきだぞ!」


「りょかい! ユーシャさま!」


「ユーちゃんのためにがんばるわ」


「あんたのためじゃないけど、まあやるわよ」


町の家畜小屋や各種生産施設を破壊してるのは、いかにも勇者ですって感じの豪華な鎧の若いイケメンと、それに従う三人の女の子。三人ともそれぞれロリだったり、ゆるふわボインだったり、幼馴染風なツンデレだったりと属性豊富な、ラノベだったらヒロイン枠確定の美少女たちだ。


ユーシャさまだのユーちゃんと言われた勇者くん(仮名)も、世界を救う救世主に相応しい整ったルックスとバランスのとれた細マッチョ体型をしてるのが服越しでもわかる。


勇者を含め四人全員、目が逝っちゃってるのを除いて。


最近の若いもんはシャブでもキメるのが流行りか?

オレも若いけど、こんなんと同類扱いして欲しくないわマジで。


「なにやってる! ここはオレの町だぞ。 それに、この町の魔物は人間に敵意はない。速やかに撤収してくれれば、こちらもなにもしないぞ! さっさと出ていけ!」


幸い、こちらは軽傷者はいても、まだ死者や重傷者はいないのだから。

精霊ちゃんとグリーンの報告だと、一部の魔物は建物から逃げ遅れて倒壊した屋根に潰されたらしいが、全員が手を擦りむいたとか、捻挫したとかの軽い怪我で済んでる。


建物の下敷きになってそんだけで済むとか、魔物はバケモノなのか?


「相棒、魔物は魔獣の派生した亜種だ。 人間からすりゃあ立派なバケモノだぞ。 知能があるぶん厄介だがな」


解説ご苦労様。ボロ雑巾なのにね。


「雑巾は余計だろ!!」


勇者たちが答える。


「出てけだぁ? はんっ! 笑わせるぜこいつ」


「ねー? このトカゲも殺していいのー?」


「ユーちゃんに逆らうなんて、なんて生意気なチビッ子トカゲなのかしら!」


「あたしもこいつムカつくし、手伝ってあげるわよ! 別にあんたのためじゃないんだからねっ!」


どいつもこいつもラブコメしてんじゃねーよ【ピー】すぞマジで。

しかも言ってることもやってることも略奪者そのものだし。

てめえらは盗賊かなにかか。


「かかってこい。 お前ら全員倒す」


「それはアカンなぁ、ドラゴンはん」


背後からヒョイと軽くオレを抱き抱えるのは、精霊ちゃん。


「こぉんな小さなお体でケンカなんてしてしもうたら、大切な体が傷もんになってしまいますわ」


「でもあいつはムカつくからオレが倒す。 他の女の子たちを頼めるか? 精霊さん」


「戦う前に解薬のお薬を飲まなぁアカンですよ?」


「その薬は!?」


胸元から見上げるオレから、精霊ちゃんは黙って顔を背けた。苦笑いも添えて。


おい、なに笑うとんねん。


逃亡中の犯罪者が警官に職務質問されててもこんなに冷や汗はかかないし身体が震えたりもしないぞ。

嫌な予感しかしないんだが。


「さっきの攻撃でウチの職場が壊されてしもうて…………」


「薬はないんだな?」


「……………ごめんなさい」


素に戻るほどか。そりゃそうだ。

美少女とチビドラゴンの強キャラそうな二人が揃って役立たずとか、もうコントだしな。一緒にグランプリ取ろうぜ!おまえツッコミな!


「ブリトラ様! なぜこんなちっさいお姿に!?」


グリーンがきたけど、あいつの体格的に戦えそうにない。

武器だって持ってないんだ。無理だよ。


「ミズネエチャン、ドラゴン、オレ、タタカウ」


ミノタウロスは棍棒持参で駆けつけてきてくれた。

でも鎧も装備してくれたらドラゴンくんは嬉しかったな。


「アタシの世話になってる町でなにやってんだ、このバカどもは!」


姉御も駆けつけた。勝ったな。


「相棒、オレもいるぜ!」


解説くんは寝てろ(無慈悲)。



「みんな! 魔物どもを地獄に送り返すぞ!」


勇者の一声で勇者側の士気も上がった。

決して軽くはない怪我をしてる倒れた魔物の頭を踏みつけてだ。


あいつら、勇者ごっこを楽しんでやがるな。

こっちの戦力も整ったし、もう反撃できるがな。


姉御が視線だけで人を殺せそうな殺気を放っておるのを背中越しでも確認できる。

オレに向けられたものでもないのにかなりの恐怖を感じる。


あとはもう、野となれ山となれだ。


「みんな、あとは頼んだ」







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