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十二羽 進撃の姉御



『逃げろ相棒! 姉御に殺されるぞ!!』


「オレ殺されんの!?」


お前の巻き添えで殺されてたまるか!

助走を着けて空を飛ぶ。

翼が胴体よりもデカくなったから簡単に空気を泳げる。


「逃がすかぁ!!」


飛んで逃げるオレを翼を怪我してるとは思えないスピードで追撃する姉御さん。


止めろよ、怖いだろ。


「墜ちろ!! クソガイド!」


姉御の喉辺りが赤くなったと思うと、口から火の球が飛び出す。

オレの翼狙っていた火球を身体をひねってロールして避ける。

通りすぎた球は上空で炸裂し、曇天の雲をまるごとぶっ飛ばした。少し遅れて熱波が届く。

オレの鱗の表面を焼き焦がしたがすぐに再生する。

直撃だったら死んでたかもな。


「チッ! 外したか!」


解説くんよ、あれがブレスなのか?


『姉御め………手ぇ抜くぐらいの理性は残ってたか』


手抜きであれなの? 本気だったらどうなってた?


『空を突き抜けて小惑星だって吹っ飛ぶさ。 あの女なら簡単だ』


強すぎだろぉ!!


『だからドラゴン最強格なんだよ、あいつは』


「お前はそんなやつと喧嘩したのかよ! 最悪だなお前!!」


『しょーがねーだろー。 あいつがオレを根暗呼ばわりしたんだからよー』


姉御さんはこいつのどこが根暗に見えたのだろう。

………解説くんは目には見えない生き物だけどさ。


「こうして言葉にして聞くと、解説くんって幽霊みたいだな!」


『あー、幽霊っぽいから根暗扱いされたのかもなー。

ゴースト系の魔物はそういう先入観持たれやすいからな』


幽霊いるんだ。 さすがは異世界だな。


「ブリトラ、降りてこい。 あたしはあんたを攻撃したいんじゃない。 あんたの中にいるガイドモドキの根暗を殺したいのさ。 大人しくそいつを引き渡したらあんたは見逃してやるよ」


「とか言って、降りたらオレごと攻撃するんじゃ………」


「そんなことするわけ無いだろ。 この目をよーく観てごらん。 あたしがそんなことするとでも?」


たった今やっただろ。 どの口がそれを言うのか。

でもここで降りなかったらどっちみち殺されそうだな。


『おい相棒? やめろよ? オレを売り渡すのはやめろよ?』


よし決めた。


「悪いな解説くん。 オレの命は一人用なんだ」


『相棒ォォォォォォォ!!!』


一回痛い目あってきな、この、トラブルメーカーが!!

オレみたいに! オレみたいに!


「よし、スケアクロー。ブリトラの身体から出てこい」


『やめろォォォォォォォ!』


オレだって何回も死にかけてんだ。お前も死ぬほどの目に会ってこい! それこそ相棒だろ。


「この状態のアンタを見るのも百年ぶりだねぇ!! ねえ!!」


姉御の魔法らしきもので実体化(強制)させられた解説くんを前に、姉御は得意気に高笑いしてる。

姉御さんこんなことできたのか。


人間化した解説くんは若くてチャラい感じの金髪ホスト風なイケメンです。

服だって異世界人特有のゴテゴテな派手な飾りの鎧を着こなしてる。どっから生えたとか言ってはいけない。だって魔法だもん。


これは有罪ですね。


「相棒、なあ、おい、目ぇそらすなよ」


魔獣の森にまで飛んできたから、魔物たちに助けを求めようにも周りには誰もいない。


解説くんは詰んでいる。


「じゃあ、オレ先に帰るんで」


「おうよ! 正式な挨拶はこいつをシめてからでいいかい?」


遠慮なく、やっちゃってどうぞです。

背後から聞こえる悲鳴を無視して魔物の町まで帰ることにした。



町に戻るとグリーンジュニアは馬小屋の屋根に犬神家みたいに突き刺さっていた。

誰も見てなきゃ爆笑してるわ、こんなん。


爪で傷つけないように慎重に引っ張り出して起こす。


「グリーン、グリーン! 案内の続きよろしくー!」


「は、はい、任せてください!」


寝起きにドラゴンのデカイ顔が一寸先にあって、一瞬だけビビった様子を見せた。悪いことしたかな。

それでも光の速さで復活するのは流石は元リーダーだ。


「まず村の中心、あそこに家があります」


うん、見える見える。町全体が見渡せる。

中心部に電気が集中してたのは、やっぱりそこが居住区だったからだ。


逆に中心から離れた部分に行くほど畑と家畜小屋しかない。あと倉庫らしき大きな建物だけ。


「あの建物は食料庫か?」


「はい、これも異世界側の技術……ていうか発想なんですよ」


ネズミ返し付きの高床式の建物だし、間違いなくそうだろうね。これを作った転生者(多分電気屋の人)は知識チートをしていたようだ。

ならオレは内政チートかな?

やべぇ、出来る気がしねぇ。

でもリーダーやるって言っちゃったし、やるしかないか。


「魔物に襲われる予定は今後もあるのか?」


「あるわけないでしょう!?」


合ってたまるかって話だわな。





解説くんが戻って来たのは、その日の陽が沈む頃合いだった。

姉御の尻尾に掴まれて引きずられてる。

ボロ雑巾みたいに汚くなってて笑うわ。


「相棒ぉ………。 ぜってぇ許さねぇぞぉ」


なんか恨み言言ってるよ。こっわ。


「挨拶が遅れたねブリトラ。 あたしはヒッグス。 他の奴みたいに姉御とでも呼んでおくれ」


「よろしく、姉御」







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