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赤眼の吸血鬼  作者: カエルオオカミ
人間の国
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冒険者たちと夜の大森林1

 何とか日が昇る前に元の場所に戻ってくることのできた私は、狼人(ウェアウルフ)の集落でもらった黒いローブを着て、木陰に入ることで日光を避ける形をとっていた。


 そもそも、今まで日の光を避けることが出来ていたのは、この森の驚くほどの木の密集度のおかげだろう。特にこの池の周りでは木の密度は高く、森の中は昼でも薄暗い。

 と....ここに来た当初はそうだったのだが、今は私の魔力を受けた木々や草が魔力を帯びて青白く光っているため、とても幻想的な景色が広がっている。幻想的ではあるが.....どうも落ち着かない感じもあるのだが....。


 白虎との対峙で魔力と血を随分と消費してしまったため、今はしばらく休むことにしている。魔力に関しては時間とともに回復していくのだが、血は現状、得ることが難しいため大切にしたいところだ。まああの状況で使ったことに後悔はないが.....。

 

 私の周囲には、まだ眷属にしていない大量の蝙蝠たち....そして、それらを率いるように飛んでいるシロが鬱陶しく私の周りを飛び回っている。

 こいつらは静かにするということを知らないのか?というか原因はほとんどシロな気がする。リーダーの命令に従わざる負えない蝙蝠たちは、仕方なくシロについて回っている.....といったところか....。


 ちなみに、私がシロに対して何か命令をしても聞く可能性は半分ほど.....。後の半分はまるで聞こえないふりだ。シロだけはなぜか眷属にできなかったのだが、それでもすでに眷属にした蝙蝠たちと同じように命令が出来たためそのままにしていたのだが.....こいつには私が主だという認識が本当にあるのだろうか.....。


 

 その後は、特にやることもなかったためそのまま眠りにつくことにした。


 そして、目覚めるとちょうど日が落ち始めるところだった。魔力も半分ほどまで回復している。


 今現在の目標としては、森の中心へと向かって行くことである。また森を進んで行くつもりだったのだが、魔力がまだ回復しきっておらず万全でないのは心もとない.....。

 やはり万全な状態にしておきたいと思い、次の夜までまた眠ることにしようと目を閉じると.....シロの意思が飛んできたのを感じた。どうやらこちらに来い.....ということだ。


 そっちから来ないで主を呼びつけるのはどうかと思うが.....それに関してはもう考えるのは止めた。見れば、シロが池の水面近くを飛んでいるのが見える。


 私は起きたばかりで重い体を動かすと、ゆっくりと池の近くまでやって来た。それに対してシロはというと.....。遅い....と言わんばかりの不満な感情が飛んでくる。一体何様のつもりなのやら.....。


 シロの話によれば、この森に数十規模の生物が新しくやって来た....ということだ。


 その生物というのは......人間らしい.....。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 魔物の活動の穏やかになる夜を待って、立ち入り禁止になっているはずのピロー大森林に入っていく者たちがいた。銀級冒険者のリベル=ストロークを筆頭とした、十数人の銅級冒険者たちである。


「さすが!リベルの兄貴の言うことに間違いはねぇな!」


「おうよ!視界が狭まって危険なはずの夜に、あえて森に入るとはなぁ.....。」


 リベルが銅級冒険者たちに提案したのは、一般的には危険だとされる夜に森に入ることである。夜は視界が狭まり、魔物に気づくことが出来ないため危険だと一般にはされているのだが.....実際には魔物の活動は夜には穏やかになるため、そもそも魔物と戦闘になることがない。

 このことは、魔物をよく知らなくては分からないことであり、当然、中には夜に活発になる魔物も存在する。リベルは経験的に森にはそのような魔物はいないと知っていたのだ。


 この点で、リベルの判断は正しいと言える。長年冒険者をやっており、大森林についてよく知っているリベルだからこそできた提案だろう。


 しかし、この時点で大きなミスを犯していることに、彼は気づいていない.....。





「それにしても.....やはり森の様子は異常だな.....。」


 集団の一番後ろを歩きながら、リベル=ストロークは呟く。


 冒険者組合(ギルド)での話の通り、魔力濃度が異様に高いのは確かだ。その証拠として、明らかに魔草の割合が高くなっている。

 しかし、最も気になるのはこれらの魔草は中心に行くほど割合が少なくなっている。本来では中心に向かうほど魔力濃度は高くなり、魔草の割合は高くなるはずなのである。いや.....正確には、()()()()に向かうにつれて、魔草の割合は高くなっている.....というのが正しい。


 リベルは後ろから冒険者たちに指示を出しながら、夜の森を進んで行く。その間、銅級冒険者たちは普段見慣れない異様な量の魔草に興奮し、道ながらそれらを採っていく。彼らは確かに優秀だとされているが、それはあくまで銅級の中で....ということだ。銅級冒険者の数は多く、その中でも彼らは.....()()()()()()()()()()()というだけだ。

 優秀だとされ、調子に乗っている彼らはよくて銀級止まり.....といったところか。そもそもリベルが彼らに付いていったのは、そんな彼らに思い知らせるため.....という意味が強いだろう。ちょうど金級冒険者でさえ苦戦する魔物が現れ、それを自分たちが倒すなどと息巻いている馬鹿共に現実というのを思い知らせてやる。

 当然、数人は死ぬことにもなるだろう。しかし、それをきっかけに彼らの成長にもなることだろう.....。そんなことをリベルは考えているのだ。加えて言えば、これを通して何か情報を掴む事が目的である。実力は金級にも達しているリベルならば、倒すことは無理でも逃げることはできるだろう。


「近頃.....見込みがある奴と言えば.....。やはりトムとかいうやつか.....。」


 一年前ほどから冒険者として活動をしているトム=ニコラスという冒険者。無駄にテンションが高く、ふざけているようにしか見えない男だが、彼の情報網の広さ。そして、依頼をこなす手際の良さといい、リベルもかなり評価をしている冒険者の一人だ。


「奴ならば.....金級、もしくはそれ以上も狙えるだろうな....。」


 長年冒険者をやってきており、様々な冒険者を見てきた彼だからこそ言えることである。それほどにトムの冒険者としての資質が高いということだろう。


「さて.....こいつらはどうか....。」


「うわあああぁぁぁぁ!!!」


 突如、夜の森に悲鳴が響く。


「おい!一体どうしたってんだ!?」


「い....いきなり....地面がなくなって...!」


 リベルは、後ろから集団をかき分けていくと、喚いている仲間の元へ向かう。そこには、喚いている男を中心に数人が固まっている。リベルが持っていた松明で辺りを照らすと.....そこには巨大な穴が地面に開いていた。


「なるほど....これか.....。」


「リベルの兄貴?何か知ってるんですか!?」


「あぁ。確か....ギルドで言っていた穴というのはこれの事か....。」


 数日前....。金級冒険者による調査のきっかけともなった銅級冒険者パーティーの証言では、巨大な穴から魔物が現れた....ということだ。魔物が何なのかは分からないが、今回のことと無関係ではないだろう。

 中を照らしてみるが.....どうもかなりの深さのようで、とてもそこは見えない、闇が広がっていた。


「これを調査するのは流石に無理だな.....。」


 そういって、リベルは穴から目を離し、周囲を見回す.....。そして目に入ったのは、遠くの方で光ってみえる何かであった。


「おい....なんだあれは?」


「何って....何のことで?」


「そっちじゃねぇ!こっちだこっち!」


 そう怒鳴ると、リベルはその冒険者の首を無理やりその光の方へと向かせる。


「ん....あぁ!確かに何か光っているように見えますね!」


「多分あれは魔草の光だろうな....。あそこから、と考えていいだろう。」


 これまでの異常な魔草の密集率。ここに来るまでにその割合はどんどん高くなってきている。そして....あの光の場所が、その中心と考えていいだろう。


「おい、お前ら!あの光に向かって進むぞ!!」


「マジかよこれ!?魔草だらけだぞ!!」


「大儲けだな!こりゃぁ!」


 リベルの予想通り、光の方向へと進んで行くにつれ、周囲の木々が光を帯びたものだらけになっていく。


「ここまでの魔草は....見たことがない....。」


 銅級冒険者たちには全く気付く様子はないが、これらは全て上位魔草である。上位魔草は森の中心近くでしか見られないはずなのだが、ここではそれがまるで雑草と同じレベルで生えている。そして.....。


「これは!?魔木.....。」


 魔木とは、木の葉だけでなく幹自体が光り輝いている魔力を帯びた木である。相当な魔力高濃度帯でしか見られず、リベルでさえ実際に見るのは初めてだ。


 リベルが驚いている中、そんなことはお構いなし....と言わんばかりに魔草を採取する冒険者たち。彼らの頭からは、すでに本来の目的など抜け落ちている。大量の魔草.....というだけですでに十分な収穫だからだ。


「.....な!?おい.....お前ら!?何してる!ここは危険だ!」


 ふと我に返ったリベルが、周囲の銅級冒険者たちに呼びかける。つい初めて見る光景に心を奪われた彼は重要なことを忘れていた。これだけの景色を作り出すことが出来る存在が.....近くにいる危険性を。

 しかしそんなリベルの声も、すでに彼らには届かない.....。


「おい!こっち見てみろよ!こんな木見たことあるか!?」


「もしかして....これって魔木ってやつじゃねえのか!?」


「マジかよ!?すげえええぇぇぇ!!」


「ん?なんだありゃ?」


 一人の冒険者の発した言葉に、冒険者たちの視線は一つに集まる。見れば、これらの景色は小さな池を中心にして広がるように生み出されている。そして池の縁に佇んでいる人影をこの場の全員が確認した。


「ん、人?」


「はあ?そんなわけねえだろ。こんな場所に俺たち以外がいるわけがねえだろ。人型の魔物か何かに決まってんだろ。」


 その時....リベルは確かにその目に見た....。


 白い蝙蝠が自分の横を飛んでいくのを....。


「へぇ.....。あれがギルドで言ってた危険な魔物ってやつか?もっとでかい化け物かなんかと思ったが.....みたところ弱そうだな.....。」


 そう一人が言ったのを聞き、調子づいたのか。


「俺がぶっ飛ばしてきてやるよ!!」


「おい!横取りすんじゃねえぞ!俺も行くぞ!」


「ふざけんなお前ら!俺一人で十分だっての!!」


 そう言って、三人の冒険者が影に向かって突っ込んでいく。


 もはや彼らには正常な思考はなかったのだろう。ただですら大量の魔草を手に入れることが出来たという収穫に、舞い上がっていたのが原因だろう....。


 それを見たリベルが、彼らを止めようと動いたのとほぼ同時.....。


「うわあああああぁぁぁぁ!!!」


「ぎゃああああぁぁぁぁぁ!!!」


「ぐああああああぁぁぁぁ!!!」


 三人の断末魔が森中に響き渡った....。

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