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赤眼の吸血鬼  作者: カエルオオカミ
人ならざる者
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ピロー大森林へ

「ようやく見えてきたか」


ピロー大森林へ向かう馬車の中でジオンは言う。


やがて、馬車の小窓から他の冒険者達を乗せてきたであろう馬車が沢山集まっている様子が見え始める。


「やけに多くないか?」


ウィルディアがクレイブに尋ねる。


「確かに言われてみるとそうですね。ピロー大森林は森の浅いところであればそれほど危険ではないですが、それでも銅級冒険者には危険な場所のはず...。」


クレイブがそう言って考えていると、前で馬を操っていた馬車の主が振り返って言う。


「なんだ兄ちゃん知らないのか?ここ最近の魔力風の影響で今ピロー大森林はセリオン王国からの冒険者が押し寄せてる状態だ。魔力風がある間は浅い場所でも魔草が採れるからな。」


「なるほどな。それでこんな状態ってわけか。まるで観光スポットだな。」


ジオンが笑いながら言う。それに対し、クレイブは疑問を抱えていた。


魔力風は今まで何度かあった。

でもそのいずれもこんなに冒険者が集まるほど魔草が採りやすい、ということはなかった。

魔力風により、魔草などが増えることよりもより強力な魔物が出現しやすいということが多かったからだ。


というのも、魔力風というのは、強い魔力をのせた風が遠くに地域からやってくるというものなのだが、それはある地域に全体的に広がっていくものなので、魔草などを急激に成長させるほどの魔力は溜まらないのだ。

むしろ、魔力の強い方向を目指すという魔物の習性のために他の地域から魔物が集まってくるということが多い。


そう考えると、今回の森の異変は魔力風ではないと考えるのが妥当だろう。となるとやはり、何か強大な魔物が現れたと考えるのがしっくりくる。


「やはり私の考えは合っていたようですね。」


クレイブはニヤリと笑う。


「クレイブ....。あんたなんだい、その顔は...?」


「頭の使いすぎでとうとうおかしくなったか...。」


やがて三人の乗った馬車は、多くの馬車が集まるその場所で止まったのであった。




「さて。ここから森まではすぐだな。どうする?もうすぐに行くか?」


「いえ。私は少し話を聞くことにします。ジオン、あなたは邪魔なのでどこかに行っていてください。」


「おい!なんだそりゃ!」


「ちょっと!ここまで来てまた喧嘩する気かい!?」


「お前さんら...もしかして金級冒険者かい?」


言い争う三人に話しかけてきたのは、初老の男。

三人を連れてきたのとは別の馬車の主である。

すると、三人の馬車から、先程の馬車の主がこちらへやってくる。


「うん?あんたは、よく見る顔だが...。」


「確かにお前さんの顔はわしもよく見るよ。こうして顔を合わせて話すのは初めてだが。」


それを聞いて馬車の主は少し不思議そうな顔をした。


「確かあんたは、二日前に街を出たはずだったが?」


「まあそうなんだがね...まだわしが連れてきた冒険者らが帰って来てないんだよ。

それで銀級以上の強い冒険者がやって来たら彼らを探すことを頼もうと思っていたんだがね。」


「それで、私たちにそれを頼もうと?」


クレイブが初老の男に聞き返す。


「まあそう言う事になる。まさか金級に会えるとは思ってなかったがね。」


そう話す男に対してクレイブは少し顔をしかめる。


「そうは言いましても、私たちにも森の調査という仕事があります。それに付き合っている暇は...。」


「おい!クレイブ!それくらいやってやろうぜ!どうせ森には入るんだからな。」


「今は私が話して...。」


「俺たちにどんと任せておきな!おっさん!」


「なっ!」


それを聞いた初老の男の顔がパッと明るくなる。


「それは本当かい!良かった。このままどうしようかと思っていたところだったんだよ。」


そうしてジオンと男は笑って握手をする。

クレイブはジオンを睨みつけていた。


「全く...あいつは...。」


すると話をずっと黙って聞いていたウィルディアがふと口を開いた。


「一つ言っておきたいことがある。」


この場にいる四人がウィルディアの方を見つめる。


「街を出たのは二日前だったな。となれば彼ら冒険者が森に入ったのも二日前....

普通はこの森の中に二日も留まるなんてことはしない。銅級ならば尚更だ。」


場が一変し静まり返る。


「十中八九死んでいるな。そうでなくともただ、と言うことはないだろう。」


一瞬で場の空気が凍りついた。

とはいえ、なんら不思議なことはない。冒険者は常に死と隣り合わせであるもの。今回のように異変が起き、魔草が大量に採れるようになったとなれば勿論魔物も強力なものとなる。尚更だろう。


「やはり...そうなるかい。感じのいい奴らだったんだがね。」


「となると...ここにいるのは...。」


馬車の主が尋ねる。


「半分以上はわしと同じだよ。皆それで帰れないでいる。」


初老の男はそう答える。

ウィルディアは少し考えた後に...


「二日前からここにいるのは帰ってもいいだろう。もしも森で見つけたら私たちが対処する。」


「それは...本当に...。ありがとうございます!!」


「他の奴らには俺が言っておくよ。兄ちゃんたちは心配しなくて大丈夫だ。」


馬車の主はそう答えると、初老の男と共に多くの馬車がある方向へと向かっていったのだった。




「何ですか?ウィルディア。あなたがジオンの味方をするなんて。」


「味方をしたつもりはない。ただ、成り行きから断るのは良い策ではないと思っただけだ。」


クレイブはしばらく周囲を見渡した後、ウィルディアの方を再び向いて言う。


「それにしても...これだけの馬車の半分がまだ乗せて来た冒険者たちの帰って来ていないものだとしたら...。」


「おいおい!そんなに深く考えるなって!調べれば分かることだろ!」


クレイブは呆れたような顔をジオンに向ける。


「全く...あなたは気楽でいいですね。」


こうして三人はピロー大森林へと歩みを進める。

あんなことが待っているとも知らずに...。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




耳に入る甲高い生き物の鳴き声。

それで私は目を覚ました。


どうやら眠ってしまっていたらしい。

至って普通のことに思えるが、私は洞窟で目覚めて以来一度も眠ったことがなかった。


と言うよりも、そもそも眠気を感じたことがなかった。なぜそんなことが起こったのか。その答えはすぐに出た。


半分もなかった魔力が、すっかり回復しているのだ。


身体中に勢いよく流れる魔力の感覚。少し前まで感じていた体のだるさも、うって変わって今では驚くほど体が軽い。


とても久しぶりに感じる好調な気分に、私は思わずローブのフード部分を手でよけて、外の風を感じる。


と、顔に鋭い痛みが走る。

ちょうど登り始めた陽の光が顔に直撃する。


すっかり忘れていた。普段は昼間、日陰の外に出るということがないため、つい夜と同じ気分でやってしまった....。


そんなことをしていると、岩の反対側から物音が聞こえる。

見れば、ヴェルドが同じく起きて来ていた。

快調な私とはうって変わって、ひどく疲れた様子だ。


一応、私と同じように休んでいたはずなのだが....おかしいな...。

とはいえ、これ以上休んでいるつもりはない。


私はもう疲れてないし?


そもそも向こうも行く気満々な様子だ。


「このように休ませていただいてありがとうございます。お陰で疲れも取れました。」


とても、そうには思えないのだが...。


ヴェルドの話によれば、人間の国までは、まだ数日かかるらしい。

その...セリ...なんとか王国は、ここから最も近い場所にあるとはいえ、やはりそれなりの距離はあるのだろう。


ところで、先日、王国へ先に行っているように言った蝙蝠なのだが...案の定というか、今朝私のもとに戻ってきた。

まあ私も王国の場所は知らないので当然といえば当然なのだが。

そういうわけで、事前に情報を集めるということは結局できなかったわけだ。


とはいえ、最終的に私は王国に行ければそれでいい。

そもそも当初の目的は、人間の国に行って情報を集めるということ。

主に吸血鬼(ヴァンパイア)について調べてみるつもりだが、それ以外にも人間についても知りたいことがある。

集落で、ウバラから人間については聞いたが、それでも実際に見てみないことには分からないことがたくさんある。



ところで、人間の国では魔力の込められた物が高値で取引されているらしい。

狼人(ウェアウルフ)の中には王国に行ったことがある者が何人かおり、それはそういったものを売るためらしい。

亜人は自給自足のため、そうして得られる通貨は必要ないので、あくまで人間との交流が目的、ということらしい。


亜人たちは魔力の比較的充実した場所に住んでおり、多くの魔力は魔物から放出されたものであるため、魔物から離れて生活する人間たちは必然的に魔力との関わり合いが薄い。


人間と魔力の関わり合いが薄いというのは、私にも理解できるところがある。

それは人間の自分の体に保有している魔力の圧倒的少なさからだ。

これまで何度か人間は見たが、そのどれも森の魔草よりも少なかった。


ただ、私が見た限り、人間たちには魔力こそ少ないものの、それとは別の他の力が見られた。

魔力を青白い色とするのなら、赤みのかかったオレンジ色...といった感じだ。

とまあ、この力のことについても調べることにして。


ともかく、人間の国に行くとなれば、そこでの通貨というものを持っている方がいいだろう。

というわけで、ちょうど巨大な崖の場所でいくつか取ってきた。

魔鉱石といったか、私が洞窟でいくつも見たクリスタルの下位互換だが...


本当にこんなものが高く取引されているのか?

洞窟に行けば腐るほどあるものだし、私にとっては石ころみたいなものなのだが...。

正直これが高く売れるとは到底思えない。

人間たちもいくら魔力が込められているとはいえ、石ころに金を払うということはないだろう。


そもそもこれが魔鉱石なのかどうかも分からないし...。

もしかしたら、クリスタルの方が魔鉱石だったのかも...。


私とヴェルドは王国へ向けて歩を進める...。





そうして数日....


延々と続いていた平原の向こうに、巨大な門が見え始める。

王都、および多くの国々との貿易で栄えるセリオン王国である。

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