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小さな人生  作者: 蒸留水
旅立ち
4/52

4話 1年間、成長する

 1年が経過してようやく1歳を超え、体の方も大きく成長した。


 まず、喋れるようになった。

 さすがに声帯に負担が掛かるために会話はできないが、単語を発することはもはや自在だ。まあ、最初から会話できるような赤ん坊など気持ち悪く思われるだろうし妥当なところだ。

 ちなみに、初めて喋った言葉は「ママ」だ。それを聞いたリンダ母さんが歓喜していた。一方で、呼ばれなかったグロンド父さんとレオル兄さんが悔しそうな顔をしていたので、数日後には「パパ」、「にぃにぃ」と呼んでみた。それはもうすごい喜びようではあったが、騒がしすぎてその後リンダ母さんに叱られていたのは見ていて面白かった。

 言っているこちらは非常に気恥ずかしかった。


 話す以外にも、ようやく歩くことができるようになった。

 家の中を自在に移動することが可能になり、活動の範囲が広がった。

 ただ、歩けるようになったばかりとは思えないほど素早く動けることには驚いた。しかし、両親たちがあまり驚かなかったところを見ると、ハーフリングの子供としては当たり前のようだ。

 自在に移動できるようになったと言っても、一人でふらふらしているとすぐに家族の誰かに捕まえられ、ベッドに連れ戻されてしまう。過保護なのか、なかなか自由にはさせてもらえない。最近ではベッドから抜け出して、隠れて家の中を散策している。最初のころはすぐに見つかっていたが、少しずつ隠密行動が上手くなってきている。

 散策中に多くの本が置いてある部屋―――書斎のような場所を見つけたが、まだこの世界の文字を読むことができないので、内容は読めていない。

 今はリンダ母さんに簡単な本の読み聞かせを頻繁にせがんで、勉強している最中だ。幸いにも文字は、前世のローマ字に近い形式のようなので、本を読めるようになるのも時間の問題だろう。


 家の外に出ることは禁止されていが、限定的にだが許可してもらっている。。

 それは、両親のどちらかと一緒であり、家の庭に限ってのことだ。

 庭と言っても岩家の中にある中庭で、ほとんど屋内にあるような場所を外と言っていいのかは疑問だ。どういう場所なのかと言うと、屋内と同じく周囲を岩壁に囲まれ、天井部分だけがくり貫かれたように穴があいている。その穴からは空を覗くことができ、晴れの日には太陽に光が降り注ぎ、雨の日にはどうやってか穴が塞がれている。テニスコート2枚分くらいの広さがあり、レオル兄さんと追いかけっこをしても余裕がある。さすがに木は生えていないが、草花が植えられていて、地面は芝生になっている。

 新しく情報が得られるようなものも特になく、せいぜい、初めて見る草花があったくらいだ。『鑑定』でそれが何かを知ることはできたが、前世の記憶にも草花の知識はほとんどないので、異世界特有のものなのかは分からなかった。


 情報を得る手段は増えてきたが、損点ははあまりないと言ったところだ。

 一方で、ステータスの方は、体の成長に平行するように上昇している。

 現在のステータスはこのようになっている。




 名前ムルト=バジーリア

 種族ハーフリング

 性別男

 年齢1


<能力値>

 体力 10/10

 魔力 644/645

 力  0

 耐久 1

 器用 1

 敏捷 1

 知力 8

 精神 6


<技能>

 戦闘系  なし

 生産系  なし

 技術系  魔力探知3

      魔力操作2

 特殊系  鑑定3

 魔力適正 火・水・風・土・光・闇・時空


<恩恵>

 武術の心得

 心体の極み




 体力は年齢に沿って徐々に上昇しているようだ。

 魔力は突出して上昇しており、日々の鍛錬では使い切ることの方が難しくなってきた。今のところ『鑑定』と【ステータス】でしか魔力を消費しないので余計に大変だ。

 未だに魔力の上昇に関しては良く分かっておらず、効率のいいやり方もよくわからないまま、ひたすらに魔力を消費しているだけだ。いろいろと謎のままだが、もうしばらくは上昇の余地がありそうなので、とりあえずは頑張っている。


 力はいまだに0だ。

 一年前よりは確実に腕力などは上がっているのだが、<能力値>としては0と判断されている。 今後の成長としては、ハーフリングの容姿からしても非力そうだし、事実両親はそうなので、力の伸びはあまりないかもしれない。

 ただ、器用と敏捷はそれぞれ1ずつ上昇している。

 器用さの方は実感できる様なことがこれまでになかったが、敏捷については歩く速度で十分に実感できている。


 これまでに分かったこととして、<能力値>が同じ値であっても、実際の能力では差が出てくるようだ。

 つまりは<能力値>における数値の差は非常に大きいことで、力を例に挙げるならば、同じ1という数値であっても、1になったばかりの人と2に近い1の人が実際に発揮される力には大きな差が生じるということだ。


 <技能>の方も順調に進展している。

 『魔力探知』は一気にレベルが3にまで上がっている。2に上がった時に自然に存在する魔力を明確に感じ取れるようになり、3に上がった今では自分以外の生物が持つ魔力も感じ取ることができる。

 探知できる範囲は自分を中心に半径5mほどとまだ短いが、外敵から身を守るには非常に有用な<技能>なので、今後も鍛錬を続けていきもっと範囲を広げていきたいところだ。

 逆に、敵対する存在がこの<技能>を持っている場合が心配になってくる。


(自分の魔力を隠すための<技能>も身につけないといけませんね。もしかしたら、魔力隠蔽みたいな<技能>が獲得できるかもしれませんし)


 『魔力操作』は、魔法を使いたい一心で体内の魔力を動かそうと試していたら、いつの間にか獲得できていた。レベル2の現在では、体内の魔力をほぼ自在に操れるようになっており、薄くではあるが体の周りに纏わせることもできる。

 今はより精密な制御を目指している。さらに、自然界の魔力を操作して体内に取り込むことができないかも検証中だ。


(ですが、このまま同じ鍛錬を続けていても魔法が使えるようになるとは思えませんね。・・・もう少し違う鍛錬も考えましょう)


 まだまだ、魔法への道のりは長いが、研鑽あるのみだ。


 続いて、『鑑定』も技能レベルが3に上昇した。

 これによって、対象のより詳しい情報がわかるようになった。


 例えば、石壁の情報は



 名称 アルク岩の壁

 アルク岩で形成されている

 (耐久 591/600)



 という具合に変化し、耐久という項目が追加された。


 この耐久というのは他の物を『鑑定』した際にも表示される。

 壊れたコップに『鑑定』を使った際には耐久の数値が0になっていたため、物の耐久が0になるということはその物が破損した状態になることを示すのだろう。道具を扱う上では非常に便利な情報だ。


 人を対象にした『鑑定』は、さらに便利になっている。

 家族を対象に行ってみた結果がこれだ。



 名前 リンダ=バジーリア

 種族 ハーフリング

 性別 女

 年齢 82


<能力値>

 体力 40/40

 魔力 200/200

 力  2

 耐久 2

 器用 7

 敏捷 5

 知力 6

 精神 6




 名前 グロンド=バジーリア

 種族 ハーフリング

 性別 男

 年齢 82


<能力値>

 体力 70/70

 魔力 100/100

 力  3

 耐久 3

 器用 6

 敏捷 6

 知力 5

 精神 6




 名前 レオル=バジーリア

 種族 ハーフリング

 性別 男

 年齢 8


<能力値>

 体力 20/20

 魔力 40/40

 力  1

 耐久 1

 器用 2

 敏捷 2

 知力 2

 精神 2




 このように<能力値>を確認できるようになった。

 これは非常にありがたいことだ。

 他の人たちと自分を比べることもできるようにまり、非常に情報収集が進んだ。

 ……まぁ、私の魔力の異常さが浮き彫りになる結果でもあった。


(―――うん、何度見ても魔力に数値が違いすぎですね。けれど、もしかすると、私の家族があまり魔力を持っていないだけかもしれませんし、とりあえず今は判断を保留にしておきましょう。)


 結局のところ<能力値>にうついては、今以上の情報が必要なので、時間をかけて判断していこうと思う。むやみに結論付けるのは危険だ。

 今分かっていることとしては、ハーフリングが非常に貧弱だということだ。

 両親の力や耐久は非常に低く、体力に関しても1歳の私と比べて分かるように、ほとんど成長しないようなのだ。両親の容姿からうすうす予想はしていたのだが、その通りになってしまった。

 一方で、器用、敏捷、知力、精神については成長が期待できそうだ。両親の数値が高いかどうかは判断できないが、ハーフリングが後衛向けの能力なのは分かる。

 むしろ戦闘は不向きで、生産系の職業が適していると言える。


 実際、両親は薬草などを育て、それらを使って薬を作ることを生業としている。

 グロンド父さんが薬草を育てている。毎日のように薬草がたくさん入った籠を抱え、泥まみれの姿で帰ってくる。

 リンダ母さんは父さんの薬草を使って薬を作っている。仕事部屋から出てくるときには、薬品特有の良い香りをさせている。不思議なもので、いろいろな薬草が混ざっているはずなのに、不快な匂いをさせていないことから、リンダ母さんはかなり腕のいい調薬師なのかもしれない。他の調薬師にはあったことが無い。

 いつか両親にそれぞれの技術を教えてもらうのもいいかもしれない。薬はどこに行っても必要とされるだろうし、何かしら技術を身につけておけば、生きていくことが可能だろう。


(そういえば、今までに貨幣を見たことがありませんね。もしかすると、物々交換を主流としているのでしょうか?)


 ステータスについての考えから、思わず周辺の文化について考え込んでしまっていた。

 改めて自分のステータスについて考えることにする。


(この先私の<能力値>が両親に似ていくのはある程度は予想できますが、魔力が突出しているように、鍛錬次第では種族限界を超えることも夢ではないですね。<恩恵>の「武術の心得」や「心体の極み」も明確な効果は分かりませんが、きっと成長を補助してくれるものでしょうから、多少は期待できるかもしれません)


 せっかくの異世界なので、できれば世界中を旅して前われるようなステータスは欲しいところだ。

 ハーフリングの<能力値>は戦闘向けにならない可能性が高いのだから、<技能>で補うようなスタイルも考えないといけない。

 もしかしたら戦いが不要なほどに平和な世界なのかもしれないが、自分の身を守るすべくらいは必要になるはずだ。


 まずは、鍛錬をひたすらに続けて基礎能力を上げていこう。

 その過程でいろいろな<技能>を身につけることも可能なはずだ。

 何者になるにしても私にとって不利益になることはないのだから、後悔しないように生きていこうと思う。


 こうして、鍛錬漬けの日々が過ぎていく。


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