嫌だけど別に嫌いではないです(前半)
少し変わった少女と大きく変わってしまった少年の距離のお話です
処女作です。物語の展開は固めているのですが、誰も見ておらず、待たれていないのを良いこと(?)に更新は本当に私が暇な時だけの不定期で遅めになると思います。
もし宜しければご意見、ご感想等頂けると嬉しいです。
「部長、なんで部長なんですか?」
体操着を着た小柄な女の子が 体育倉庫マットの上に制服で横たわる少年に話しかけます。
「え、ううーん、非常に難しい問題やね。逆に質問してええ?なんで咲希は咲希なんやと思う?」
後輩に話しかけられた少年は僅かに上擦った声で質問に質問で返しました。
「いやいや、そういう哲学的な質問をしたいのではないのですよ。何故、怪我をしているわけでもないのに、着替えもせず、指示も出さずに寝ている男がこの部の部長なのかということについてお尋ねしているのです。」
つまらない冗談をあしらった彼女の艶のある髪は首くらいまで伸びています。
「それは、先代に俺が指名されたから、慣例に乗っ取って部長をしてるだけやよ。前にもゆったやろ?」
少年は、静かにそう告げて、やっと体を起こして、少女の方を向きました。
「確かに聞きましたね。それで何故指名されたのかも疑問ですが、その時はまだ部長が真面目だったとか、先代がふざけたとかで適当に呑み込んであげます。そこで、何故今の状態の貴方が部長を続けていられるのか、というのが今日の質問なのです。」
「まぁ、俺が一番向いているからやと思うよ。・・・・・はい、今日の質問と回答終わり。咲希もそろそろアップせんと練習始まんで」
彼には謎のモットーがあります。それは一人につき一日一回までしか、質問に答えないというものです。
少女は答えに満足していない顔でしたが、仕方無いと割り切って練習に向かいました。
フロアにキュッキュキュッキュとシューズが擦れ、ドリブルの度にボールが弾み、放たれたシュートがバスケットゴールを鳴らして、部員のかけ声が響く中、窓の外は徐々に夜で塗りつぶされていきます。そうして、練習が終わり、片付けを終えて挨拶をする段になって、やっと部長は体育倉庫から出てきました。
「今日も皆さん、練習お疲れ様でした。では、気をつけ!礼!ありがとうございましたぁー!」
この挨拶の号令が今日の、いえ、少なくとも今の一年生が入った時点から今日までのいつもの彼の部活動の全てでした。
最初は、部長でありながらまともに部活動をせず、学校の誰に聞いても、その理由が分からない彼の存在を皆が不思議に思いました。各々が勝手に推測して、色々と噂したりもしました。中には直接聞き出そうとする人もいましたが、先述の彼のマイルールにより、一日一回しか質問できない上に、回答も要領を得ないことが多いため、誰もが彼を「そういうもの」だとして扱うようになりました。ただ一人、東山 咲希を除いて。