第12話 夢の中の誰か
瀬乃華はある夢を見た。いつもの風景、いつもの時、いつもの日常。なにもかもがいつも通りの日常の夢。
「ルルイエ…こんどはそこを出そう」
朝。ネタ帳を見ながら歩いている瀬乃華。銭子も一緒なので安心だろう。
「舞歌さん、怒らない?それとまた覚えてるの?」
必死にルルイエ語の聖句を覚えている瀬乃華。
「直したのは完全に覚えたけどね。ルルイエの館にて死せるクトゥルフ。夢見るままに待ちいたり」
さりげなくの自慢。銭子は完全に呆れたようで頭を抱えている。そろそろ目的地が見えるはずだ。
「おはようございます」
銭子は自称全非科学の支配者、峰一舞歌にあいさつをする。いつも舞歌にネタをもらいに来ている。
「ふふふ。そうね。今日はなんにもないわね。歩いたらどう?きっと見つかるわよ」
それを聞いた瀬乃華はがっかり。なんにもないとなると、言われた通り探すかー。そう思い「ありがとうございました」と言うと瀬乃華と銭子と別れ探し始める。
異世界の入り口を見つけた日の夢。それを確認すると、太陽の光が眩しく輝いていることも確認できる。
「おはよう、瀬乃華ちゃん」
すでに起きていた銭子が呼びかける。目を擦って、起き上がる。
酒場に行くと、朝食が並べられ、ロールが出迎えてくれた。すでに酒場は賑わっていた。
「おはよう2人とも」
手招きされた席にはパン、サラダ、チーズ、水がそれぞれ2つ並べられている。
「チーズだ」
チーズを食べるのは久しぶりだと言う銭子。1番最初に食べて、久しぶりだからか目を輝かせる。
「それじゃ、やってもらいたい依頼はこれだ」
そういい朝食中の2人に見せる。
「これって…私達まだレベル7程度ですよ?」
その依頼の内容を見て2人は驚いた。瀬乃華はパンを咥えたまま言った。銭子は呆れている。ロールは2人にやらせたい一心。
「火山に化石を発掘に行きます。ですがその火山には魔物がいるので倒してください。
報酬10000Gと化石。自分で発掘したのは持ち帰ってオッケーです。」
しっかりと読んで行きたくないという気持ちが勝つ。
「嫌ならこっちをやってもらう」
見せられたのは護衛の依頼。そしてある者に会ってもらいたいというもの。
「なぜか2つとも2人にやってもらいたいって言われてな」
瀬乃華は依頼表をジロジロ見てどっちにしようか考えている。銭子は瀬乃華に任せてのんびり朝食を食べている。
「じゃあ…ほ…噛んだ。護衛の方で」
「よっしゃ、そんじゃ頼むな」
朝食を食べ終わった2人はちゃっちゃと支度を済ませ出て行ってしまう。
「いい子ね、ロール。うふふ。どこまで行ってくれるかしらね」
誰かはそっとロールの肩にもたれる。前にリコが言っていたあの子なのだろうか。それは瀬乃華と銭子にしかわからない。