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05

俺は大輔と一緒に昇降口に来た。水泳部の部室はプールの脇にあるから昇降口から一回校舎を出て行かないといけない。まぁ、大した距離じゃないから問題ないが。俺ら2人は靴を履き替え部室へ向かった。


プールはグラウンドの奥の方にあるからグラウンドを突っ切って行くことになる。グラウンドでは、野球部、サッカー部、陸上部が基本的に活動している。どの部も活動を始めているみたいだ。野球部は大きな声を出しながらランニングをしている。他のふたつの部も野球部ほどではないが声を出してランニングだとか、体操をやっている。さすが、運動部だな。俺らとは大違いだよ、まったく。小さなため息を漏らした。


部室前まで来た。大輔は、スマホを教室に忘れたといって、校舎に戻ったからいまは1人だ。部室の中から何か言い争いのような声が聞こえる。何かあったのかと思いドアノブに手をかけ扉を開ける。

「どもーっす。なんかあったんすか?」

そういいながら中にはいる。すると2人の男が言い争いをしているようだ。


「ラノベはやっぱりの異世界ものだろ!」

「俺は、断然ラブコメ派だ。異世界とか中二単語ばっかじゃねーかよ!」

「お前わかってねぇなー。そういうあり得ない感じがいいんだろーが」

「小説ってのは、主人公とかに共感できる方が心にくるだろ!」


言い争っていたのは同学年の2人だ。実にくだらない言い争いだ。ラノベはいろんなジャンルがあるんだし、あとは人の好みだろーよ。とりあえず、止めに2人の前にでた。


「なに言い争ってんだよ、まったく」

睨み合っていた2人は俺に気づきこちらを見る。

この二人はおれと同じ1年の部員だ。異世界ものを推しているのは、安東龍、みんなにはアンドリューと呼ばれている。塩素で色素が抜けたらしく、髪の毛が茶色い。そして、髪型はモヒカン。背もそれなりに高いから見た目はいかついけど、結構いいやつだ。見た目からはラノベを読むなんて想像できない。

一方、ラブコメを推しているのは、銅町奏夢。下の名前は’’りずむ’’と読む。俺は最初この名前を聞いた時自分の耳を疑った。いわいるキラキラネームというやつだろう。自分の周りにもこういうのがいるなんて驚きだ。こちらは、アンドリューとは違い真っ黒で長い髪を後ろで結んでいる。いつも教室では静かに本を読んでいるおとなしい奴だ。しかしなぜかアンドリューといっつも言い争ってばかりいる。2人はそれなりに相性がいいんだろう。


「こいつ頭おかしいんだぜ?異世界ものを中二ってバカにしてくんだよ」

「確かに異世界ものを中二ってバカにすんのはちょっとなー」

俺も異世界もののラノベを読むがそこまで中二じゃないと思う。まぁ、偏見なんだと思うんだけど。

「だよなー、まじイカれてるっしょ!俺の聖剣エクスカリバーで斬り殺してやろうではないか!」

そう言って部室の隅にあるブラシを剣のように構えた。ほんとに見た目とのギャップがすごい。この行為はまるで小学生だ。こいつは異世界ものばっかり読んでいるせいか、中二病発言をする。だからアンドリューはモテない。黙ってればモテそうなんだが。


「うっわ!厨二発言きたー!きもーい!」

ストレートすぎだろっ!なにこいつ普段あんましゃべんないのに!

「はっきり言い過ぎじゃねーか!」

おれはすかさずつっこむ。そしてちらっとアンドリューのほうを見る…


やばい。目がやばい。完全にスイッチが入ってしまったようだ。リズムは龍の逆鱗に触れてしまったみたいだ。龍だけにな!


俺がつまらないことを考えている間に2人の言い争いはヒートアップしていく。

「てめぇ!ぶっ殺されてーのか!」

「ころされたいひととか、そうそういないっしょ、ぶふぉ」

アンドリューの迫力のある怒号にもかかわらず、リズムは口に手を当てわざとらしく吹き出すまねとして挑発している。アンドリュー の顔が引き攣っている。

「うっせえ!根暗ぼっちやろう!」

「ぼっちは偉大さ。ある有名なラノベの主人公もぼっちじゃないか。」

「友達いない奴の言い訳だろ。ふはははっ!」

「違いますー。いないんじゃなくて作らないだけですー」

「そんな強がんなってー!見苦しいぞー」

「だまれ、精神年齢5歳児並みのおばかちゃん」

「うるせーぞ!コミュ障!」

「チンパンジーって喋れるん?」

「誰がチンパンジーだって?週末ニートくん」

「君のことだけどわかんないかな?モヒカン猿」

「あだ名付け勝負かよ!」


俺がつっこみを入れたが2人はまだ言い争っている 。誰かこの2人をどうにかしてとめてはくれまいか。


「髪型バカにしやがったな!セットすんのに10分かかんだぞ!」

「そんなかかんのかよ!」

「昼飯いっつも便所飯のくせに!」

「それマジっすか!リズム、俺の教室来ていいぞ」

「なんで知ってるんだよ!」

「うそだろ?適当に言ったのに…」

アンドリューが引いている。

「うっるさい!てめぇーの母ちゃんでべそ!」

「おめぇのほうが小学生じゃん!てか、そんなこというやつ小学生でもいねー!」


がちゃ

部室の扉が開いた。そこには、スマホを取りに戻っていた大輔ともう1人と先輩がいた。2年の立川来夢だ。救世主が来た。

「いいねー咲田、そのつっこみ!」

「そんなことはどうでもいいんすよ!この2人止めてくださいよ!」

「わかったよ。善処するよ」

そういって先輩は2人のとこに行き、なにやらひとりひとりに耳打ちをしている。そして睨み合っていた2人はうなずき合い目をそらした。先輩がこちらに戻ってくる。

「先輩、2人に何を言ったんすか」

「秘密だよー」

そう言って先輩は更衣室に荷物を持って、行ってしまった。


「おいおい、なにがあったんだ?」

入り口にいた大輔が俺の隣に聞いてきたのでかいつまんで説明した。


「そういうことだったのか。ところで、おまえどんなラノベが好きなんだ?」

「あ、俺も気になるなぁ」

「さっきは、どっちの味方にもつかなかったし」

アンドリューとリズムが食いついてきた。しかし、これは言えない。絶対バカにされるからだ。とりあえず、適当に言っておこう。

「異世界ものとかバトルものとかラブコメとかいろいろ読むけど、選ぶとしたらラブコメかな」

「そっかー、そんな気がしたよ」

「ちっ、ラブコメかよ」

「やっぱり、ラブコメだよなー!」


よし。これでいいだろう。本当は妹ものが好きだ。あったりまえだろう。


だって、俺は妹ものを書くライトノベル作家なのだから。

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