次の戦場が呼んでいる
【第28回フリーワンライ】
お題:茜色に滲む視界
フリーワンライ企画概要
http://privatter.net/p/271257
#深夜の真剣文字書き60分一本勝負
視界が赤く染まっている。頭が痛む。
それは子どものころ、友達と夢中で遊んだ時によく見た夕焼けに似ていた。だがこの赤は、夕日の色ではない。
痛む箇所を探るため、邪魔なヘルメットを後ろにずらした。前髪をかき分ける指先に、不快なぬめりを感じる。
額を切っているようだ。傷の深さはわからない。が、浅くはないはずだ。
この視界の茜色は、血の色だ。止めどなく溢れる血が、眼球を薄く覆っている。
熱い息とともに唾を吐き捨てた。あるいは胃液だったかも知れない。
俯せになっていた体を無理矢理起こす。
まだ、友の敵を討っていないというのに、こんなところで死んでたまるか。
茜色に滲む視界を左右に振るが、武器が見当たらなかった。取り落としたらしい。
懐を探る。脇腹に取り付けていたホルスターから、四十五口径でもって合衆国政府の代理を果たす拳銃を引き抜いた。
頼りないサイド・アームだ。有効射程距離五百メートルのアサルト・ライフルが幅を利かせる戦場にあっては、高々数十メートル先しか狙えない拳銃など、文字通りおもちゃに過ぎない。
間抜けにも背後を晒し、あまつさえ接近を許すような敵を期待して、おもちゃを真面目に振り回すよりは、いっそこの場でこめかみに銃口を当てて引き金を引いた方が利口だろう。
しかし、俺は馬鹿だ。
お利口さんが泥臭い戦場に足を運ぶわけがないだろう? そういうやつは、折り目正しいビジネス・スーツに袖を通して、ピカピカのオフィスに通ってるはずだ。
砂埃に塗れて、血反吐を吐く利口者などいない。
拳銃を左手で支えて、正面に構える。
出撃前に初弾は薬室に装填してあるし、いざという時に使うサイド・アームに安全装置をかける愚かな真似などするはずがない。政府代理は今このときから、いつでもその役目を果たすだろう。
いや、政府なんて関係ない。俺自身が自分の意思で、友の代わりに、死んでいったあいつの代わりに、一人でも多くの敵を道連れにしてやる。
砂埃の舞う荒野は、いつか見た第二次大戦の北アフリカ戦線を想起させた。炎のエル・アラメイン。
ほとんど瓦礫と化した廃墟に背中を預け、角の先を伺う。
遮蔽物のない、一直線のストリート。
身を隠す場所は皆無。だが、逆に言うと敵が潜んでいそうなところもない。
体力はもう限界を超えている。右足を引きずりながら迂回ルートを探すことは出来なさそうだ。
壁で体を支えながら、路地を行く他なかった。
決心すると、肩を始点にして角を曲がる。
視界が真っ暗になった。
頭を弾かれて後ろに吹き飛ぶ感覚があった。
その瞬間、ストリートの終端、ガラスの割れた窓からスコープのレンズを煌めかせる影を幻視した。
「くそ、キャンパーめ……!」
口汚く罵ると、彼は頭部を丸ごと覆うヘルメットを脱ぎ捨てた。
次の戦闘が始まるまでフルフェイス・ディスプレイを被ったままじっとしているほど、お行儀良くはない。ポインティング・デバイスの代わりを果たすラバーグローブをはめたまま、セブンアップのキャップを荒々しく切った。
次は覚えてろ。
次の戦場が呼んでいる・了
ストーリーガン無視で趣味を思う存分ぶち込んでやった感。
最近忙しくってワンライも三回飛ばしてしまったし、FPSも全然やれてない。今日はワンライのお題見てから、取材と称して久しぶりに三十分ほどOperation Lockerで偵察兵やって来た。
うむ。やはりFPSはPCでやってこそだ。