二人の世界
港の片隅に添えられた芝生の上で
恋人同士がぼんやりと
海に浮かんだ灯りを見つめている
遠くで客船が光の粒をくっつけて
音もなく滑ってゆく
何もかもが遠くにあって
二人だけの時間の膜の中で
寄り添いながら、時折
優しい言葉を口にする
無粋に時が過ぎるのを見せつける
大きな観覧車
二人は気づかないふりをして
瞳を閉じて強く抱き合う
屋形船が呑気な音をたてて通りすぎてゆく
二人は手を繋ぎ、口づけを交わして
お互いの存在を感じながら
夢のように消えてしまうような
不安におちていく