非日常的な「冬」
「非日常」。これが何を意味するのだろう。
非日常とは、日常では起こることはまずない物事だろうか。
それとも、現実にはありえないような出来事なのだろうか。
それは、1人1人違うと思う。
そんなことを考えていた時、冬休みの時のことが思い浮かんだ。
今回は、その話を聞いてもらおうと思う。
ある冬の日のことだ。俺は冬休みの宿題をやっていた。
「・・・っし、数学終わった。あと美術と国語だけかな?」
なんて呑気なことをいいつつ宿題を終わらせていった。
「それにしても、寒いな・・・」
普段暑がりで、寒いのにはめっぽう強い自分でも、雪が降ってる日までは耐えられない。
こたつでずっとぬくぬくしていたいと思う。
しかし、外が雪となると雪だるまを作りたくもなる。
「まぁ、たまには初心に帰って雪だるまでも作りますかね。」
などと言いつつ、外に出た。
相変わらず寒い。すごく寒い。
しかし、マフラーや手袋などは苦手なので、
下着+上着+ダウンにジーパンといういつものスタイルで外に出た。
幸い、外の雪は水っぽくなく、しっかりとした雪なので大きいのが作れそうだった。
まぁ、大きいの作ると運ぶのが面倒なのだが。
「とりあえず胴体から作るかぁ。」
ゴロゴロと雪玉を転がしながらいろいろと考える。
どーせならこの雪だるまをみんなが驚くくらいにでかくしてやろう。とか、
雪だるまを題材に絵を描こう。とか。
夢が膨らんでいくようである。(ぇ
「とりあえず胴体完成。」
胴体は完成した。図ってみたところ1メートルちょいはあった。
「上に乗せる頭どーすっかなぁ・・・」
自分の計算式で言うと、「胴体が 1 に対して頭が 0.8」
という比率が黄金式になっている。(簡単に言うと 頭:胴体=0.8:1)
となると、1メートルちょいある胴体に対して80センチもの大きさで頭を作らなればならない。
重さを考えて、体積を計算式に当てはめると「3分の4πr3乗」となる。
これに当てはめると1メートルの雪玉の重さは480キロにもなる。
頭の大きさが80センチなので、約360キロ。
こんなのを一人で持つというのは到底不可能である。
などと考えているうちに頭が80センチまで行った。
さて、どう持ち上げようと考えて試行錯誤した結果、
てこの原理で持ち上げることにした。
結果、もちあがったはいいものの、体が少し潰れた。
とりあえず家に戻り、美術の宿題で書くことに決めた。
さっそく筆を出し、紙に書こうと思ったその時。
「あれ、雪だるま居ない・・・?」
さっきまで窓の前にいた雪だるまが忽然と消えていた。
「おかしいな・・・しっかりと窓の前に作ったはずなんだが。」
と、その瞬間
ドンッ!
と、鈍い音がした。
「ガラスの音か?!」
窓を見ると、雪だるまが窓の外に立っていた。
「はっ・・・はぁ?!」
さっきまでいなかったはずの雪だるまが立っている。
しかも、状況から考えて窓をたたけたのは雪だるましかいない。
しかし、それを認めるとおかしいことになってしまう。
なぜなら、雪だるまは動かないからだ。
雪だるまが動かないというのは赤ちゃんでも知っている事実だ。
どうぶつの○やスーパーマ○オの世界でしか動く雪だるまなど見たことがない。
というか、現実であり得てははいけないのだ。
だって動かないじゃん?
動いてほしくないじゃん?
「やあ。」
・・・ぇ
「シャベッタァァァァァァァァァァァァァ!」
「うわっと・・・そんなに驚くことかなぁ・・・」
いやいやいやいやいやいや待て待て待て待て待て待て。
おかしい。何が?すべてがおかしい。
なぜしゃべってる。なぜ動いてる。つか動くな。止まれ。黙れ。
などとめちゃくちゃな思考状態に入っていたが、何とか落ち着いて、
雪だるまと喋ってみることにした。
「と・・・とりあえず、おまいさん名前は?」
「名前?名前ねぇ・・・あ、ユッキーって名前ならあるよ。」
あるよって・・・軽いなぁと心の中でつっこみつついろいろと喋った。
「つまり、お前は子供を楽しませるために生まれたと。」
「まぁ、そうなるね。」
最初は信じがたかったこの存在も10分もたてば慣れてきた。
慣れって怖い。
「でも、お前は雪無いと解けるよな?」
「そう・・・だね」
楽しそうだった顔が急に深刻な顔をした。
「解ける、つまりお前は存在出来なくなると。」
「うん・・・」
正直、俺らの感覚では当たり前だった。
雪は日に当たれば溶けるし、無ければ解ける。
しかし、雪だるまにとっては地獄のようなものらしい。
簡単に言えば、雪が解けるのは友人が死ぬに等しく、
自分が解けるのは人が死ぬ苦痛と同等らしい。
確かに、自分が死んだときのことを考えると苦痛がある。
人は誰だって死ぬのが怖い。死にたくないから一日を生きるのだ。
人に簡単に「タヒね!」とか言うけれども本心で言う人は0に等しい。
本当に死んだらそれは耐え難い苦痛だからだ。
それを思うと、雪だるまも雪だるまなりの命があるのだと思ってしまう。
「だが、いくらなんでも俺にはどうすることもできないぞ。」
「それは分ってるよ。でも、この少ない命でみんなに笑顔を与えるために生まれたんだ。」
「ふむ。その気持ちはわかる。」
「でも、もう無理なんだ。」
「はっ?なんでだよ。」
「もう・・・消えるからさ。」
「・・・え?」
そういえば今午後2時を回ったところだ。
日が出てきて、雪が解け始めている。
「あぁ・・・日が出てきてるな」
「なんか・・・ごめんね。君に何かを与えるのが僕の役目なのにね・・・」
「何言ってんだよ。いろいろと教えてもらったさ。」
「そんなこと・・・ないよ」
「自信持てよ。お前は笑顔与えるために出てきたのにお前が暗くてどーすんだよ。」
「うん・・・」
「頑張れよ。またいつか会えるさ。」
俺は、口からそう漏らした。
俺自身の、願望なのかもしれない。
また会えると信じて。
「うん・・・うん!ありがとう。」
「よっしゃ、その意気だ。」
「なんか・・・逆に笑顔をもらった気がするよ。」
「そうか?俺自身そんなこと思わず言ってたつもりなんだが・・・」
「きっと、いいことあるよ。」
その言葉を残して、雪だるまは解けてしまった。
「いいこと・・・か。」
そう呟きながら俺はこたつに入り、そのまま寝ることにした。
「・・・・・・・」
ぐーぐー。
( ゜д゜)ハッ!
「っべ・・・寝すぎたかな?」
時計は午後4時を指していた。
「2時間しか寝てないのかぁ・・・時間の流れってわからんなぁ」
そして同時に思い出す。
「あっ、宿題やってない。」
よく考えてみれば美術の宿題をほったらかしだった。
「っべーっべー忘れるところだった。」
さっそく筆をとり、紙に書こうとしたその時。
「え・・・あれ?」
そこには雪だるまと自分が並んだ絵が描かれていた。
自分と雪だるまの足元の雪に「ありがとう」という字とともに。
「いいことって・・・はははっ」
「サンキューな、雪だるま。」
雪だるまに出会えたことに感謝しつつ、しみじみと思った。
今日この頃雪が降っていると思い出す。
今日も庭に一体の雪だるまが立っている。