表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

非日常的な「冬」

作者: 燐鏡 剣斗

「非日常」。これが何を意味するのだろう。

非日常とは、日常では起こることはまずない物事だろうか。

それとも、現実にはありえないような出来事なのだろうか。

それは、1人1人違うと思う。

そんなことを考えていた時、冬休みの時のことが思い浮かんだ。

今回は、その話を聞いてもらおうと思う。










ある冬の日のことだ。俺は冬休みの宿題をやっていた。

「・・・っし、数学終わった。あと美術と国語だけかな?」

なんて呑気なことをいいつつ宿題を終わらせていった。

「それにしても、寒いな・・・」

普段暑がりで、寒いのにはめっぽう強い自分でも、雪が降ってる日までは耐えられない。


こたつでずっとぬくぬくしていたいと思う。

しかし、外が雪となると雪だるまを作りたくもなる。

「まぁ、たまには初心に帰って雪だるまでも作りますかね。」

などと言いつつ、外に出た。


相変わらず寒い。すごく寒い。

しかし、マフラーや手袋などは苦手なので、

下着+上着+ダウンにジーパンといういつものスタイルで外に出た。

幸い、外の雪は水っぽくなく、しっかりとした雪なので大きいのが作れそうだった。

まぁ、大きいの作ると運ぶのが面倒なのだが。


「とりあえず胴体から作るかぁ。」

ゴロゴロと雪玉を転がしながらいろいろと考える。

どーせならこの雪だるまをみんなが驚くくらいにでかくしてやろう。とか、

雪だるまを題材に絵を描こう。とか。

夢が膨らんでいくようである。(ぇ


「とりあえず胴体完成。」

胴体は完成した。図ってみたところ1メートルちょいはあった。

「上に乗せる頭どーすっかなぁ・・・」

自分の計算式で言うと、「胴体が 1 に対して頭が 0.8」

という比率が黄金式になっている。(簡単に言うと 頭:胴体=0.8:1)


となると、1メートルちょいある胴体に対して80センチもの大きさで頭を作らなればならない。

重さを考えて、体積を計算式に当てはめると「3分の4πr3乗」となる。

これに当てはめると1メートルの雪玉の重さは480キロにもなる。

頭の大きさが80センチなので、約360キロ。

こんなのを一人で持つというのは到底不可能である。


などと考えているうちに頭が80センチまで行った。

さて、どう持ち上げようと考えて試行錯誤した結果、

てこの原理で持ち上げることにした。

結果、もちあがったはいいものの、体が少し潰れた。


とりあえず家に戻り、美術の宿題で書くことに決めた。

さっそく筆を出し、紙に書こうと思ったその時。

「あれ、雪だるま居ない・・・?」

さっきまで窓の前にいた雪だるまが忽然と消えていた。

「おかしいな・・・しっかりと窓の前に作ったはずなんだが。」


と、その瞬間

ドンッ!

と、鈍い音がした。

「ガラスの音か?!」

窓を見ると、雪だるまが窓の外に立っていた。


「はっ・・・はぁ?!」

さっきまでいなかったはずの雪だるまが立っている。

しかも、状況から考えて窓をたたけたのは雪だるましかいない。

しかし、それを認めるとおかしいことになってしまう。

なぜなら、雪だるまは動かないからだ。


雪だるまが動かないというのは赤ちゃんでも知っている事実だ。

どうぶつの○やスーパーマ○オの世界でしか動く雪だるまなど見たことがない。

というか、現実であり得てははいけないのだ。

だって動かないじゃん?

動いてほしくないじゃん?


「やあ。」

・・・ぇ

「シャベッタァァァァァァァァァァァァァ!」

「うわっと・・・そんなに驚くことかなぁ・・・」

いやいやいやいやいやいや待て待て待て待て待て待て。

おかしい。何が?すべてがおかしい。

なぜしゃべってる。なぜ動いてる。つか動くな。止まれ。黙れ。


などとめちゃくちゃな思考状態に入っていたが、何とか落ち着いて、

雪だるまと喋ってみることにした。

「と・・・とりあえず、おまいさん名前は?」

「名前?名前ねぇ・・・あ、ユッキーって名前ならあるよ。」

あるよって・・・軽いなぁと心の中でつっこみつついろいろと喋った。


「つまり、お前は子供を楽しませるために生まれたと。」

「まぁ、そうなるね。」

最初は信じがたかったこの存在も10分もたてば慣れてきた。

慣れって怖い。

「でも、お前は雪無いと解けるよな?」


「そう・・・だね」

楽しそうだった顔が急に深刻な顔をした。

「解ける、つまりお前は存在出来なくなると。」

「うん・・・」


正直、俺らの感覚では当たり前だった。

雪は日に当たれば溶けるし、無ければ解ける。

しかし、雪だるまにとっては地獄のようなものらしい。

簡単に言えば、雪が解けるのは友人が死ぬに等しく、

自分が解けるのは人が死ぬ苦痛と同等らしい。


確かに、自分が死んだときのことを考えると苦痛がある。

人は誰だって死ぬのが怖い。死にたくないから一日を生きるのだ。

人に簡単に「タヒね!」とか言うけれども本心で言う人は0に等しい。

本当に死んだらそれは耐え難い苦痛だからだ。

それを思うと、雪だるまも雪だるまなりの命があるのだと思ってしまう。


「だが、いくらなんでも俺にはどうすることもできないぞ。」

「それは分ってるよ。でも、この少ない命でみんなに笑顔を与えるために生まれたんだ。」

「ふむ。その気持ちはわかる。」

「でも、もう無理なんだ。」

「はっ?なんでだよ。」


「もう・・・消えるからさ。」

「・・・え?」

そういえば今午後2時を回ったところだ。

日が出てきて、雪が解け始めている。

「あぁ・・・日が出てきてるな」


「なんか・・・ごめんね。君に何かを与えるのが僕の役目なのにね・・・」

「何言ってんだよ。いろいろと教えてもらったさ。」

「そんなこと・・・ないよ」

「自信持てよ。お前は笑顔与えるために出てきたのにお前が暗くてどーすんだよ。」

「うん・・・」


「頑張れよ。またいつか会えるさ。」

俺は、口からそう漏らした。

俺自身の、願望なのかもしれない。

また会えると信じて。


「うん・・・うん!ありがとう。」

「よっしゃ、その意気だ。」

「なんか・・・逆に笑顔をもらった気がするよ。」

「そうか?俺自身そんなこと思わず言ってたつもりなんだが・・・」

「きっと、いいことあるよ。」


その言葉を残して、雪だるまは解けてしまった。

「いいこと・・・か。」

そう呟きながら俺はこたつに入り、そのまま寝ることにした。

「・・・・・・・」

ぐーぐー。


( ゜д゜)ハッ!

「っべ・・・寝すぎたかな?」

時計は午後4時を指していた。

「2時間しか寝てないのかぁ・・・時間の流れってわからんなぁ」

そして同時に思い出す。


「あっ、宿題やってない。」

よく考えてみれば美術の宿題をほったらかしだった。

「っべーっべー忘れるところだった。」

さっそく筆をとり、紙に書こうとしたその時。

「え・・・あれ?」





そこには雪だるまと自分が並んだ絵が描かれていた。



自分と雪だるまの足元の雪に「ありがとう」という字とともに。





「いいことって・・・はははっ」

「サンキューな、雪だるま。」

雪だるまに出会えたことに感謝しつつ、しみじみと思った。





今日この頃雪が降っていると思い出す。

今日も庭に一体の雪だるまが立っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いしちょっと感動的だし良いと思います。 [一言] 俺も燐さんに追いつけるように頑張ります!!
2013/05/03 23:25 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ