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ありふれた日常2



朝の食卓は、いつもと同じ景色だった。

母が作った目玉焼きとトースト。父が新聞を広げながらコーヒーを飲んでいる。そして、制服姿の妹・美月が慌ただしくスマホを操作しながら朝食を掻き込んでいる。


「美月、食べながらスマホはやめなさい」

「はーい」


返事だけは元気だが、手は止まらない。相変わらずだ。

俺はトーストを齧りながら、自分のスマホをチェックした。メールの通知が一件。

送信元は「境界島管理局 適応検査事務局」。


——来た。



【適応検査予約抽選結果のご連絡】

藤堂陽斗 様

この度は境界島適応検査にお申し込みいただき、誠にありがとうございます。

下記日程にてご来島ください。

検査日時:6月23日(土) 午後1時〜

集合場所:境界島第一港 受付棟



「……ふぅ」


「どうしたの?」

母が不思議そうに俺を見る。


「あ、いや……」

言うべきか、一瞬迷った。でも、隠す理由もない。

「境界島の適応検査、受けに行くんだよね」


「え?」

母の手が止まる。新聞を読んでいた父も顔を上げた。

そして——


「え、お兄ちゃん適応検査申し込んでたの!?」

美月が勢いよく顔を上げた。目を丸くして、完全にスマホから注意が逸れている。

「ああ。友達と軽いノリで」

「軽いノリって……すごいじゃん! 私の友達、去年申し込んで落ちたって言ってたよ!」

美月の反応が予想以上に大きくて、俺は少し面食らった。


「そんな大したことじゃないだろ。どうせ能力とか出ないし」

「それはわかんないじゃん! もしかしたらお兄ちゃん、超越者とかになっちゃうかもよ?」

「ねーよ」


即答すると、美月は不満そうに頬を膨らませた。

「夢がないなぁ。私だったら絶対ワクワクするのに」

「お前も興味あったんだな」

「私まだ高校生だし。それに興味はあるけど、実際に行くのは怖いかも」

美月はそう言いながら、でも目は輝いている。


「陽斗」


父が静かに口を開いた。


「適応検査って、危険はないのか?」

「大丈夫だよ。低濃度の魔力環境に入るだけだし、医療スタッフも常駐してる。」

「そうか……」

父は少し考え込むような表情をしたが、やがて頷いた。


「まあ、体調には気を付けるんだぞ」

「わかってる」

「お母さんも心配だけど……」

母が少し不安そうな顔をする。

「でも、陽斗が何か新しいことに挑戦するのは良いことじゃない。気をつけてね」

「うん、ありがとう」

俺はそう答えながら、改めて家族の顔を見た。


心配そうな母。冷静だが少し緊張した父。そして、目をキラキラさせながらこちらを見ている美月。

「ねえねえ、結果出たら教えてよね! もし能力出たら、私にも見せて!」

「出ないって」

「もー、決めつけないの! お兄ちゃん、実は隠れた才能あるかもしれないじゃん」

「あったらいいけどな。」


後ろ向きに話しながらも、俺の胸の中では何かが静かに動き始めていた。

期待、とまでは言わない。でも——少しだけ、この平坦な日常に風穴が開くかもしれない。

そんな予感があった。



----------------------------------



「おー、陽斗も来てたか!」


昼休み、大学の学食で大輝と合流すると、彼もメールを見せてきた。


「お前もか」

「てか、俺ら、もしかしたら歴史に名を残す適応者になるんじゃね?」

「ならねーよ」

笑いながらも、大輝のテンションの高さに少し引きずられる。


「で、親には言ったのか?」

「言った。母親は『危なくないの?』って心配してたけど、結局OKもらえた。お前は?」

「うちも。美月がやたらテンション上がってたけど」

「美月ちゃん? あー、確かに、ああいうの好きそうだもんな」

大輝は笑いながらスマホを操作し始めた。


「境界島、マジで楽しみだわ。ゲート、実物見れるんだぜ?」

「まあな」


俺も少しだけ、胸が高鳴るのを感じていた。



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