表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界新選組  作者: ジーアイ
第一章 異世界新選組の雑用係
9/19

飢えを満たす

(今……なにをした?)


 近藤勇は自分の目を疑った。

 彼女の目に映っていたのは、青い血を浴びながら笑う器用雑多の姿。

 雑多は勇と同じ大剣型魔装を生み出し、怪異の首を斬り飛ばしたのだ。

 それが勇には信じられなかった。


(器用が魔装を使えるのにも驚きだが、それ以上に……なんで戦える!?)


 人とは初めての命懸けの戦いの時、『動けなくなる』か『逃げる』を選択する。

 戦いは怪我、死、精神的な苦痛を伴う。

 故に人間はそれらを本能的に回避しようとする。

 戦う訓練もしていなければ、安全な世界で暮らしていた異世界人なら尚更。


(私だって初めての実戦の時は、逃げたくて仕方がなかった。だというのになぜ器用は……)


 勇が疑問を抱いていた時、もう一体の怪異が器用雑多に襲い掛かった。


「器用!逃げろ!」


 勇は叫んだ。

 しかし雑多は逃げなかった。

 それどころか好戦的な笑みを浮かべ、大剣を構える。


「ヴモオオォォォォォォォォ!!」


 怪異は雄叫びを上げながら、鎌を振るった。

 同時に雑多は豪快に大剣を振るう。

 鎌と大剣は衝突し、火花が飛び散る。


「アハハハハ!」


 雑多は笑いながら大剣を振るい続け、怪異の身体に傷を付ける。

 傷口から青い血が噴き出し、怪異は悲鳴を上げた。


(あの動きは……!)


 豪快に大剣を振るう雑多を見て、勇は気付く。

 彼の動きは、自分が戦っている時と同じ動きだと。

 魔装を複製しただけではなく、使い手の動きすらコピーした器用雑多に近藤勇は一筋の汗を流す。


「アハハハハハハハハ!」


 笑いながら、大剣を振るい続ける雑多。

 そんな彼に向かって、怪異は鎌を力強く振るう。

 しかし、その攻撃は当たらなかった。

 雑多は一歩だけ後ろに下がり、怪異の一撃を紙一重で回避する。

 そして、


「死ね」


 容赦なく怪異の胸に大剣を突き刺した。

 大量の怪異の血が、地面を青く染める。


「ヴ、ヴオオオォォォォォォォォ」


 怪異はゆっくりと後ろに倒れ、絶命。

 それを見下ろす雑多は、満足した顔で笑う。

 笑みを浮かべる雑多を見て、近藤勇は目を細める。


(どうやら……私の勘は当たっていたな)


 近藤勇は器用雑多を拾って、正解だと思った。

 なぜなら、雑多は放置しておくには危険すぎるから。


(アイツがなにに飢えていたのか、よく分かった。これは……他の奴らにも言っておかないとな)


<><><><>


「アハハハハハ」


 初めての戦闘で二体の怪異を倒した器用雑多は、笑っていた。

 今まで感じたことのない幸福感と満足感。

 まるで何日も飲まず食わずだったが、ようやく美味しいご飯や水が飲み食いができたような感覚を雑多は覚えた。


「あ~これだったのか……俺の足りなかったのは」


 今まで感じていた飢えが満たされたことで、雑多は理解する。

 そしてアクションゲームやバトルアニメを見ている時、なぜ羨ましいと思っていたのか彼はよくわかった。


 飢えていたのは、戦い。


 命を懸けた戦いをすることで、生きていると実感できる。

 雑多に足りなかったのは、戦闘だったのだ。

 だからバトルアニメを見て、羨ましいと思った。

 だから怪異と戦って、楽しいと思った。


「俺って……戦闘狂だったんだな」


 雑多は笑いが止まらなかった。

 そんな彼に一人の女性が近づく。

 近藤勇だ。


「あ!近藤さん!聞いてください!ようやく俺、なにを求めていたのかわかっ―――」

「器用」


 名前を呼ばれ、雑多は口を閉じた。

 なぜ口を閉じたのか?

 それは……近藤勇が心配そうな、なにかを恐れているような顔を浮かべていたから。

 

「とりあえず屯所に帰って、風呂に入ろう」


<><><><>


 屯所に帰ると、青い血を浴びた雑多と背中に傷を負った勇を見て、新選組の女性たちは驚愕の表情を浮かべた。


「ちょ、器用くん!?どうして怪異の血なんて浴びて」

「局長!?お怪我を!」

「今すぐ医者を呼んできます!」


 慌てる新選組の女性達に、勇は「落ち着け」と言う。


「たいした傷じゃない。それより風呂に入ってくる。器用、行くぞ」

「え?え!?一緒に入るんですか!?」

「そうだ。ほら行くぞ」

「え!?いや、ちょ!」


 勇は強引に雑多の首根っこを掴み、風呂場に向かう。

 脱衣所に到着すると、勇は服を脱ぎ始める。


「ちょ、なんのためらいもなく!?」


 雑多は慌てて振り返る。

 彼は顔を赤く染めながら、ドキドキと鼓動が早くなるのを感じる。

 服の擦れる音を聞いていた雑多は、近藤勇の裸を想像してしまう。


(って!なに想像しているんだ!!)


 頭を左右に振って、雑多が自分の妄想を消し去った時、


「ほら、器用!お前も脱げ!」

「いや、ちょ、待っ!」


 裸になった勇は雑多の服を掴み、無理矢理に脱がせた。


「イヤアアァァァァァァァァァァァ!」


 脱衣所で雑多の悲鳴が響き渡った。


<><><><>


「うぅ……もうお嫁に行けない」

「いや、お前は男だろう?」


 身体を洗い、湯船に入った雑多は両手で顔を覆い、シクシクと泣いていた。


「泣くなよ、私の裸を見ていいからさ。なんならおっぱい揉むか?」

「女性がそんなことを言うんじゃありません!」

「ガハハハハハ!お母さんかな?」


 豪快に笑う近藤勇。

 そんな彼女の身体を、雑多は指の隙間からチラッと見ていた。


(すっごい胸が大きい。少し筋肉質だがいい身体だ。だけど……)


 勇の身体には、いくつもの古い傷跡があった。


「ん?やっぱり私の身体に興味があるのか?変態」

「ち、違……わないです。はい」

「ハハハ。素直でよろしい」

「……あの、近藤さん。背中、大丈夫ですか?」

「ん?ああ、そんな深い傷じゃないから問題ない」

「そうですか」


 雑多がホッとした時、近藤勇は彼の裸をジーと見ていた。

 慌てて彼は両腕で身体を隠す。


「ちょ、なんですか!?」

「いや……お前っていい身体をしているなと。長く鍛えているのが分かる」


 雑多の身体は細マッチョ。

 余計な脂肪はなく、余計な筋肉もついていない。

 ほどよく脂肪がなく、ほどよく筋肉がついている。


「ああ~……実はほぼ毎日、筋トレとランニングをしているんです」

「きんとれ?らんにんぐ?」

「えっと……つまり筋肉を鍛えたり、走り込みをしているってことです」


 湯船に写る自分の顔を見つめながら、雑多は言葉を続ける。


「俺は昔からなにかに飢えていた。それは言いましたよね?」

「ああ」

「俺はその飢えを誤魔化すために好きなことをしました。アニメや漫画を見たり、ゲームで遊んだり、掃除をしたり、料理をしたり。そして……体を鍛えたり」


 雑多は湯船のお湯で顔を洗う。


「特に筋トレとランニングがよかった。筋トレとランニングはストレス軽減、精神的なリフレッシュ、感情の安定などの効果があるので」

「すまん、言っている意味が分からない」

「要するに気分がよくなって、飢えを一時的に忘れられていたんです」

「なるほど……なぁ、器用。いくつか質問があるんだが」

「なんです?」


 真剣な表情を浮かべながら、近藤勇は尋ねる。


「まず一つ。お前の手首に嵌っていた腕輪は魔装か?」

「はい、魔装です。名前は写鏡腕輪。能力は他人の魔装を複製するというものです」

「複製……とんでもない能力だな」

「でも完全に複製できるわけじゃありません」

「どういう意味だ?」

「俺が複製したものは、本物よりも劣っているんです。能力、強度、切れ味……すべてが六割から七割ぐらいまでしか複製できません。つまり偽物を生み出す能力ってわけです」

「なるほど……」


 勇は顎に手を当てる。


「二つ目の質問だ。どうして私の動きで戦った?」

「ああ、あれですか。俺、昔から器用なんです・だからなのか人の技を真似るのが得意なんです」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。私が怪異と戦うところを見せたのは二回だけだ。それを見て真似て戦ったのか?」

「はい。俺、大剣の使い方なんて知りませんから。だから近藤の戦い方を見て、覚えて、実践しました」


 勇はポカ~ンと口を開けた。


「あの?どうしましたか?」

「あ、いや……なんでもない。じゃあ最後の質問だ」


 勇は真っすぐな瞳で、雑多の目を見つめながら尋ねる。


「今日、戦ってみて、どう思った?」

「……そうですね」


 怪異との戦いを思い出した雑多は口元を三日月に歪め、瞳を怪しく光らせた。


「最高でした♪」

 読んでくれてありがとうございます。

 気に入ったらブックマークとポイントをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ