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異世界新選組  作者: ジーアイ
第一章 異世界新選組の雑用係
7/19

日常生活

 器用雑多が新選組で居候してから一か月が経った。


「ん、んん~!朝か」


 屯所の小さな部屋で、布団の中にいた雑多は背伸びをした。

 そして彼は布団から出て、寝巻きから青い小袖に着替える。

 服を着替えた後は布団を片付け、洗面所に向かった。

 洗面所の水道の水で顔を洗い、冷たい水で目を覚まさせる。


「江戸時代風の異世界だけど、水道とかあるから便利だな。この世界に来た他の転移者に感謝だな」


 手拭いで顔を拭いた雑多は、早歩きで調理場に向かう。

 調理場に到着した彼は、大型冷蔵庫の中身を見つめる。

 そして数秒ぐらい考えた後、雑多は食材を冷蔵庫から取り出した。


「さて!朝ごはんを作りますか!」


 雑多は調理を始め、一時間後。


「完成!出汁卵焼き定食!」


 雑多が作ったのは、百人分のホカホカ白米とナスと人参の味噌汁、そして出汁と醤油で作られた卵焼きである。

 美味しそうな香りが調理場に充満した。


「さて、あとは食堂に運ぶ……」


 雑多が百人分の卵焼き定食を運ぼうとした時、彼の視界の端に一人の少女の影が映る。

 その影は卵焼きに手を伸ばす。


「こ~ら!ダメだぞ、魁ちゃん。つまみ食いは」


 雑多がそう言うと、少女—――島田魁は手を止めて、頬を膨らます。


「む~。せっかく朝早く来たのに」

「朝早く起きて偉いね~。でもつまみ食いはダ~メ。他の人が屯所に来る前に準備しないとだし」


 雑多が雑用係をしてから、新選組の女性たちは朝早くに屯所に来て朝ごはんを食べるようになった。

 なんでも雑多の料理はおいしいからという理由で。


「とにかくダメなものはダメ。みんなが来たときに食べなさい」

「……わかった」


 シュンと子犬のように落ち込んだ島田魁は、調理場から姿を消した。

 それから雑多は百人分の料理を、食堂に運ぶ。

 全てを運び終わった時、


「おっはよう!器用くん!」

「おはよう」

「おはよう~」


 新選組の女性たちが食堂にやってきた。


「おはようございます、みなさん!」


 雑多は大声で挨拶をした。


「朝ごはんはできているので食べてください」

「うわぁ~!今日も美味しそうだね~」

「そう言ってくれて嬉しいです。おかわりもありますので、いっぱい食べてください」


 雑多がそう言うと、新選組の女性たちは美味しそうに朝ごはんを食べ始める。


「おいしい~」

「器用くんのご飯は最高ね~」

「美味しいご飯が食べられるって幸せ」


 新選組の笑顔を見て、雑多は嬉しそうに微笑む。


「嬉しそうだな、器用」


 雑多の耳に女性の声が聞こえる。

 声を掛けたのは近藤勇だった。


「近藤さん。はい、とっても嬉しいです。みなさんが俺の料理を食べて喜んでくれて」

「……」


 勇はジーと雑多を見つめる。

 まるで観察するように。

 彼女の視線に気が付いた雑多は、首を傾げる。


「あの……近藤さん?」

「ん?ああ、すまんすまん。なんでもない。ところでこの後、時間はあるか?」

「え?えぇ、今日は特に用事はありませんが」

「なら私と遊びに行かないか?」

「近藤さんと……ですか?」


 雑多はパチパチと目を閉じたり、開いたりする。


「お前、ここに来てからず~と働いてばかりだろう?」

「誘ってくれるのは嬉しいのですが、遊ぶためのお金が」

「そんなの私が奢ってやる。はい、遊びに行くの決定!」


 そう言って勇は雑多の手を引っ張った。


「ちょ、近藤さん!?」

「ほらほら行くぞ~!」


<><><><>


 雑多は勇に連れられて、街に来ていた。

 街は活気であふれている。

 ある女は野菜を売り。

 ある子どもは友人と遊び。

 ある男女は顔を赤くしながら、手を繋いでいる。


「よし、なにから遊ぶか!」

「遊ぶって……仕事は大丈夫なんですか?」

「今日は休みをとった。だから大丈―――」


 勇が「大丈夫」と言おうとした時、


「お~い!近藤さ~ん!」


 一人の老人が近藤勇に近付いた。


「おう!どうした、傘売りのおじちゃん?」

「悪いが、屋根の修理をしてもらえんかのう」

「わかった!任せろ、おじちゃん!行くぞ、器用!」


 雑多は慌てて、「は、はい」と答える。

 それから勇と雑多は、建物の屋根の修理を行った。

 修理が終わった後、老人は勇と雑多に感謝の言葉を告げる。


「ありがとう、二人とも」

「気にすんな。いつでも頼ってくれ!」


 ニッと歯を抜き出して笑う勇は、雑多を連れて老人と別れた。


「いや~すまんすまん。次は遊びに―――」

「近藤ちゃん!ちょうどいいところに!」


 勇が遊びに行こうとした時、少し太った女性がやってきた。

 彼女は困った表情を浮かべている。


「うちの猫がまたいなくなったの」

「またか。確か名前はミケだったか?」

「そうなの。また探してもらえないかしら?」

「わかった。すぐ見つける」


 そう言って勇は雑多と共に猫を探す。

 二時間後、二人はペットの猫を見つけて、女性に渡した。


「ほら、猫だ」

「ありがとう、近藤ちゃん!」

「気にすんな。さて、器用……今度こそ遊びに―――」


 勇が「遊びに行こう」と言おうとした時、


「うわぁ~!母ちゃん~!どこ~!?」


 子供の泣き声が聞こえた。


「……すまん、器用。ちょっとまた手伝ってくれないか?」

「フフフ、いいですよ。近藤さん」


 困った人を放っておけない近藤勇を見て、雑多は笑みをこぼしてしまった。

 それから迷子の子供の母親を、勇と雑多は探す。

 そしてなんとか子供と母親を会わせることができた時には、空は夕陽によってオレンジ色に染まっていた。


「すまんな、器用。遊びに連れてって息抜きさせるつもりだったんだが……」


 しょぼんと落ち込む勇。

 そんな彼女に「いいえ」と雑多は笑いながら返事をする。


「俺も誰かの役に立って嬉しかったです」

「……そう言ってくれて、私は嬉しいぞ」

「すごく頼られていましたけど、アレも新選組の仕事なんですか?」

「いいや、仕事とは関係ない。ただ私は……私たち新選組は困った人を放っておけない。ただそれだけさ。まぁあれこれ手伝っていたら何でも屋みたいになっちまったがな。アハハハ」


 頭を掻きながら、苦笑する近藤勇。

 夕陽の光に照らされた彼女の顔を、雑多は目が離さなかった。


「なぁ……器用」

「なんです?」

「お前さ……」


 近藤勇は軽い感じで、だがまっすぐな目で雑多の目を見つめながら問い掛ける。


「満足してないだろう?今の生活」

 読んでくれてありがとうございます。

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