剣を愛する者3
「ほら、もっと振って!」
「はい!」
訓練所で木刀を振りながら、斎藤は雑多に教えていた。
彼女の剣技を雑多は必死に覚えようとする。
すでに四時間以上が経っており、雑多は大量の汗を流していた。
「よし、ここまでよ」
「はぁ~疲れた~」
雑多は床に座り込んだ。
「この程度で音を上げるなんて、まだまだね」
「す、すいません」
「でもまぁ……真似とはいえ、アタシが培ってきた剣技のほとんどを吸収したことは褒めてあげなくもない」
「ありがとうございます」
雑多は竹で作られた水筒に入っている水を一気に飲む。
ごくごくと飲んだ後、プハァーと息を吐く。
「それにしても斎藤さんって、色々な剣技を知っていますよね?」
「まぁ……好きなのよ。剣が」
「剣が……ですか?」
「そ。アタシは剣を愛しているの。だから多くの剣術を学んだり、給料のほとんどを刀を買うことに使っている」
斎藤一は、いわゆる剣オタクというやつだ。
ありとあらゆる剣術を学び、多くの名刀を持っている。
剣術だけなら新選組最強である沖田よりも上だと、雑多は聞いていた。
「へぇ~じゃあ、斎藤さんの魔装もきっとすごい剣なんでしょうね」
雑多が笑いながらそう言うと、斎藤は暗い表情を浮かべて肩を落とした。
明らかに落ち込んだ斎藤を見て、雑多は戸惑う。
「あ、あの……なにか不味いことを言いました?俺」
「……銃なの」
「え?」
「だから!アタシの魔装は銃なの!何度も言わせないで!」
涙目になりながら、怒鳴り声を上げる斎藤。
雑多はビクッと肩を震わせ、目をパチパチと開いたり閉じたりする。
「え、えっと……銃なんですか?」
「そうよ!悪い!?」
「いや……別に悪くないですけど」
「アタシだって剣の魔装がよかったわよ!自分で言うのはアレだけど、アタシは剣の達人よ!?なのにアタシの魔装は銃型よ!なんなの、意味が分かんない!」
「お、落ち着いてください!めちゃくちゃ不満があるってのは、わかりましたから」
どうやら斎藤は自分の魔装が銃である事が、そうとうストレスのようだ。
「あの……因みにどんな魔装ですか?」
「……魔装顕現。鬼神殺戮」
斎藤が唱えると、彼女の両手から二丁の拳銃が現れた。
「これがアタシの魔装。能力は一分ぐらいの先の未来を見ることができるの」
「すごいじゃないですか」
「確かに凄い魔装ね。でも……アタシはこんな魔装はいらない。剣が欲しかった」
どこか悲しそうな顔で笑う斎藤。
未来視ができる二丁拳銃。
それはチートと呼ぶぐらいにはすごい武器だ。
だが誰よりも剣を愛し、剣で戦いたい斎藤にとってはいらないもの。
サッカーが好きでそれ一筋でやって来たのに、実はまったく興味がなかった水泳のほうが才能があったのと同じように。
「……斎藤さん。俺はどんなものにも意味はあると思うんです」
「急になに?」
「例えばそこらへんにある綺麗な石ころ。なにもしなけらばただの意思のままで終わりますが、綺麗に磨いたり少し工夫すればなにかの装飾品になるかもしれません」
「……」
「だから……なにが言いたいかって言うと、きっと斎藤さんの魔装が銃である事も意味がありますよ」
雑多が言えるのはそれだけだった。
それしか言えなかったのだ。
彼が慰めていることに気付いた斎藤はプッと吹き出し、クスクスと笑う。
「もっとマシな慰め方があるでしょ?」
「す、すいません。女の子の慰め方なんてわからなくて」
「そうみたいね。でも、まぁ……ちょっと心が軽くなったから感謝しなくもないわ」
微笑みを浮かべる斎藤は木刀を構える。
「さぁ!訓練を再開するわよ!」
「はい。わかりまし―――」
雑多が立ち上がろうとした時、彼は思いっきり滑った。
「え?」
倒れそうになった雑多の両手は、斎藤の胸を掴んでしまう。
雑多はだらだらと大量の汗を顔から流す。
「あ……ああ……!」
斎藤の顔がだんだんと赤くなっていく。
そんな彼女に雑多は、
「……おっぱいって、最高ですよね」
直後、バシン!と強く叩く音が鳴り響いた。




