剣を愛する者2
朝食を食べ終えた後、雑多は斎藤と共に訓練所にやってきた。
二人の手には木刀が握られている。
「あの……これはどういう」
雑多が問い掛けると、斎藤は静かに木刀を構える。
「あんたが人斬りにならない理由を教えてあげるために私と戦うのよ」
「それはどういう……」
雑多がどういう意味か尋ねようとした時、斎藤は駆け出した。
反射的に雑多は木刀を構える。
しかしその直後、斎藤が放った一撃が雑多の木刀を弾き飛ばした。
木刀は空中をクルクルと回転し、床に落下する。
「え?」
雑多は呆然とした。
斎藤が放つ一撃はとても速いものではない。
ただ……美しかった。
近藤のような豪快な剣撃ではない。
土方のような流れるような攻撃ではない。
沖田のような恐ろしくも、美しい剣撃ではない。
斎藤の一撃はまるで芸術の如く美しかったのだ。
あまりにも美しすぎるあまり、雑多は言葉を失った。
「アンタ……人の技を盗んだり、沖田の超集中が使えるのよね?だったらそれらを駆使して私を倒しに来なさい」
「……素敵な挑発ですね」
雑多は笑みを浮かべた。
彼の闘争本能に火が付く。
「なら……望み通りに本気を出します」
木刀を拾った雑多はゾーンを発動。
彼の瞳孔が縦に割れ、蛇のようになる。
「行きます!」
雑多は姿勢を低くし、全身をバネのように使って床を蹴る。
一瞬で斎藤の懐に入った雑多は木刀を振るう。
さきほど斎藤が放った一撃と同じく、美しい剣撃。
それを見て彼女は、
「フーン。まぁまぁね。でも……やはり真似ただけね」
斎藤は木刀を振るう。
先ほどの美しい一撃とは違って力強く、そして荒々しい一撃。
まるで猛獣の爪撃のよう。
「なに!?」
雑多が放つ一撃は斎藤が放つ剣撃によって弾かれる。
そして斎藤は木刀の剣先を雑多の首に突き付けた。
「こんなものかしら?」
「まだまだ!」
その後も雑多は木刀を振るい続けた。
しかし斎藤の剣撃が彼の攻撃を無効化する。
時には荒々しい剣撃で。
時には踊るような剣撃で。
あらゆる剣撃で雑多を追い込む。
そして、
「ハァ…ハァ…ハァ……」
雑多は汗だらけになって、床に座り込んでいた。
いつのまにかゾーンは解除されており、木刀が床に転がっている。
疲れていた雑多を、斎藤は見下ろす。
「これでわかった?」
「な……なにがです?」
「あんたが人斬りにならない理由」
「!」
「あんたはアタシが人斬りにさせない。アタシのありとあらゆる剣技で、あんたを人殺しにさせない。……絶対に」
真っすぐな瞳で雑多を見つめる斎藤。
彼女の目には、強い決意が宿っていた。
雑多はハハハと自然と笑う。
「そうですか。なら……安心ですね」
雑多は斎藤の言葉を聞いて、ホッと安堵した。
「あの……斎藤さん。一つお願いしてもいいですか?」
「なにかしら?」
「あなたの剣技……教えてください」
「……いいわよ。教えてあげる。厳しいから覚悟することね」
「はい」




