剣を愛する者1
ある日、新選組の女性たちの朝食を作るために調理場で食材を切っていた雑多。
彼はふと思い出し、包丁を動かしていた手を止める。
「人斬り……か」
沖田の言った言葉が、雑多の頭から離れなかった。
(沖田さんは俺が人斬りになると言っていた。恐らく自分はもうなっているのだろう)
自分も人を殺す日が来るのだろうか?
そんな不安を抱えていたその時、
「なに暗い顔をしてんのよ。アンタ」
背後から少女の声が聞こえる。
振り返るとそこにいたのは金色の髪を二つに結んだ少女—――斎藤一だった。
「斎藤さん」
「まったく様子を見に来たら……ってうわぁ!?」
雑多に近付こうとした斎藤は何もないところで躓き、転びそうになる。
「斎藤さん!」
転びそうになる斎藤を雑多が両手で受け止めようとした。
そしてムニッという柔らかい感触が雑多の両手に伝わる。
「え?」
雑多は自分の両手に視線を向け、顔から大量の汗を流す。
彼が掴んでいたのは斎藤一の胸だった。
「あ…ああ……」
みるみる顔を赤く染めていく斎藤。
雑多は頭を超高速回転させる。
(どうする?どうすればいい!?言い訳する?それとも謝る?いや、どっちにしても殴られる。なら……)
雑多は覚悟を決め、フゥ―と息を吐く。
そして優しく微笑む。
「斎藤さん。いいおっぱいですね」
直後、斎藤の拳が雑多の腹に叩き込まれた。
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「いてて……まだ痛い」
腹に手を当てながら、朝食作りの続きをする雑多。
そんな彼を、両手で胸を隠しながら斎藤は睨んでいた。
「変態野郎……」
「ぐっ……」
変態という言葉の刃が、雑多の胸に突き刺さる。
「悪かったって言ってるじゃないですか。もう許してくださいよ」
「許すわけないでしょ!この変態!!」
「ハァ……」
ため息を吐いた雑多は味噌汁づくりに集中する。
「そう言えば沖田さんはどうしたんですか?今日は一度も見ていませんけど?」
「……医者のところに行って薬を貰いに行ったわよ」
「そうなんですか?やっぱり体調があまりよく―――」
「そんなことよりなんでアンタは暗い顔をしていたの?聞かせなさい」
無理やり話を変える斎藤。
雑多は疑問を抱きながら、素直に答える。
「えっとですね……俺って人斬りになるのかなと思って」
「!」
「俺はこの世界に来て、自分が戦闘狂だと気づきました。そんな俺に沖田さんはこう言ったんです。このままだとお前は人斬りになるぞと」
「……」
「戦うのは好きですが……人を殺したいわけじゃないんです。でも……沖田さんの言葉がどうしても頭に残って。本当にそうなっちゃうのかなって」
雑多が自分の不安を言うと斎藤は、
「ハァ~……バカじゃないの?」
腰に手を当てて、深いため息を吐いた。
「そんなことで悩んでいたの?心配して損した」
「……心配してくれたんですか?」
「べっ、別に心配してないし!」
顔を赤く染めながら、否定する斎藤。
彼女は人差し指を雑多に向ける。
「朝食を食べ終えた後、訓練所に来て私と戦いなさい!」
「え?いや……なんでですか?」
「いいから!先輩命令!!」
「は……はぁ……」




