表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界新選組  作者: ジーアイ
第一章 異世界新選組の雑用係
16/19

異世界人

 雑多は女性定員にある部屋に案内された。

 その部屋には一人の男性が椅子に座っている。

 男性は少し痩せており、身体が細い。

 三十代ぐらいだろう。


「やぁ、君が僕と同じ世界から来た人かな?」

「は、はじめまして。器用雑多と言います」

「僕は甘口砂糖(あまくちさとう)。話をしよう」


 雑多は用意された椅子に座る。


「いや~まさか僕と同じ異世界人と会えるなんて嬉しいよ」

「俺もです。正直びっくりしてます」

「僕もだよ。それにしてもこの団子屋に異世界人がいるってよくわかったね」

「ギャラクシークリーム団子。こんな江戸時代風の異世界でそんな言葉は聞きません」

「ハハハ、確かに。で……君はこの世界に来てからどれくらい経つの?」

「まだ数か月ですね。大変でしたよ。いきなり転移したかと思ったら、怪異に襲われて。助けが来なかったら死んでましたよ」

「それは災難だね」


 甘口は苦笑を浮かべながら、雑多に同情した。


「あの……俺、どうしてもあなたに聞きたいことがあって」

「なにかな?」

「どうしたら……元の世界に帰れますか?」

「……」


 甘口は口を閉じて、ポリポリと頬を掻く。


「わからない……かな。僕も十年ぐらい前にここに来たけど、帰り方の方法なんてわからない」

「そう……ですか」


 雑多は落ち込んだ声を漏らし、俯く。


「それに帰る方法が分かっても、僕はこの世界に残るよ」

「え?どうしてですか?」

「……僕は前の世界でパティシエをしていたんだけど、ある日この世界に転移したんだ」

「……」

「この世界に来たばかりの僕は困っていた。そんな僕を助けてくれたのが、団子屋の一人娘……今の妻だ。彼女には色々世話になってお礼に僕もできることをした。そしたらいつのまにか結婚をしたんだ。子供もできた。前の世界に未練がないと言えば嘘になるが、今の妻と子供を大切にしたい」


 甘口の言葉を聞いて、雑多は「そうですか」と呟く。

 この世界に来て、妻と子供ができたから今を大切にしたい。

 それは当然の答えだ。


「君のことも聞かせてくれないかな?今はどんな生活をしているのとか」

「ええ、いいですよ。今は新選組の雑用係として働いているんです」

「新選組?あの……新選組?」

「え?あ、はい」


 甘口は少し驚いた表情を浮かべ、顎に手を当てる。

 彼の反応を見て、雑多は首を傾げる。


「えっと……どうしました?」

「……器用くん。悪いことは言わない。今すぐに新選組から離れた方がいい」

「え?どうして……ですか?」

「……今、新選組同士で争っているんだ」

「はぁ!?」


 甘口の言葉を聞いて、雑多は勢いよく椅子から立ち上がる。


「え?え?ちょ、ちょっと待ってください。初めて聞きましたよ?そんな話!?」

「……今、新選組は二つの派閥に分かれている」

「二つの……派閥?」

「一つは近藤派。二つ目は永倉派」

「永倉って……永倉新八(ながくらしんぱち)のことですか?」


 甘口はコクリと頷く。


(永倉新八。俺がいた世界では神道無念流の剣術を使う二番隊組長。近藤勇とはあまり仲が良くなく、彼の元から去ったと聞いている。この世界でも同じなのか?いやでも……なんで争っているんだ?)


 雑多は深く考えたが分からなかった。


「あの……なんで争っているんですか?」

「……分からない。新選組の者達しかわからない」

「……そうですか」

「君も危ないから新選組を離れたほうが……」

「いえ、そういうわけにはいきません」


 ハッキリと雑多はそう言った。


「新選組には恩があります。仇で返したくありません」

「……そうか。困ったことがあったらいつでも言ってよ」

「はい。ありがとうございます」


<><><><>


 沖田は団子を食べながら、雑多のことを待っていた。


「器用くん……なにを話しているんだろう」


 そう呟いた沖田は、チラッと仲のいい男女を見る。


「恋人……か」


 沖田はふと思い出す。

 血塗れの自分の手と、身体が真っ二つにされた多くの女剣士たちを。


「私に作る資格はないね」


 沖田がもう一本の団子を食べようとした。

 その時、


「沖田さん」


 聞き覚えのある少年の子が聞こえた。

 声が聞こえた方向に視線を向けると、


「あ!器用くん!」


 少年—――器用雑多を見て、沖田は明るく……そしてどこか嬉しそうに笑う。


「おまたせしました」

「うん。大丈夫だよ」


 雑多と話をしていた沖田はふと疑問を抱く。


(あれ?なんで私、器用くんの顔を見てこんなに嬉しいと思うんだろう?)


 沖田自身にも分からなかった。

 なぜか雑多の顔を見て、声を聞くと嬉しいと感じる。


(不思議だな~。初めて会った時は()()()と思ったけど)


 沖田は明るい笑顔を浮かべて、団子を雑多の口に突っ込む。


「食べてみて。とてもおいしいよ~!」

「ん……んん」


 雑多は団子を咀嚼した後、ゴクリと呑み込む。


「どう?」

「美味しいです」

「だよね」


 沖田総司は笑顔を浮かべながら、願う。

 どうか雑多が自分と同じ道を歩まぬことを。

 読んでくれてありがとうございます。

 気に入ったらブックマークとポイントをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ