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異世界新選組  作者: ジーアイ
第一章 異世界新選組の雑用係
15/19

人斬り

 それから雑多は雑用をしながら、訓練をしていた。

 新選組の女性たちの魔装や技をコピーし、沖田と一緒にゾーンの練習をする。

 そして時々、怪異との討伐をしていた。

 おかげで雑多は充実感を感じる日々。

 それを三か月ぐらい続けていたある日、


「え?団子を一緒に食べに行こう……ですか?」

「そうだよ」


 掃除をしていた雑多に、沖田は団子を食べに行こうと誘ったのだ。


「ほら、お詫びもまだだったし」

「ああ、初めて会った時、殺気を放っていましたよね」

「そうそう。だから行こう?奢るから」

「いや、気にしなくていいですよ。沖田さんにはゾーン……超集中を教えてもらってますし」

「あ~……お詫びって意味もあるんだけど……実は恋人同士の男女しか食べられない限定ぎゃらくしーくりーむ団子がどうしても食べたくて」

「ギャラクシークリーム……」


 沖田の言葉を聞いて、雑多は顎に手を当てる。


(ギャラクシーもクリームも、この江戸時代風の異世界では絶対に聞かない。ということは……その団子を作っているのは俺と同じ異世界人の可能性があるということ)


 同じ異世界人なら元の世界に帰る方法があるかもしれない。

 そう思った雑多は沖田と一緒に団子屋に行くことを決める。


「沖田さん。今すぐその団子屋さんに行きましょう」

「うん!行こうっか!」


<><><><>


 雑多と沖田は一緒に団子ややってきていた。

 その団子屋の建物はとても大きく、多くの男女が並んでいる。


「すっごい行列ですね」

「そうだね。とりあえず並ぼうか」

「はい」


 雑多と沖田は列に並び、三十分ぐらい待つ。

 そしてようやく建物の中に入ることができた。

 中は広く、とてもオシャレな雰囲気。

 とくに壁に描かれてある団子のイラストが可愛らしい。


「おまたせしました。お二人は恋人同士でしょうか?」


 定員らしき女性が雑多と沖田に近付き、声を掛ける。

 すると沖田は雑多の右腕に抱き付く。

 彼女の柔らかい胸の感触が腕に伝わり、雑多は顔を赤くする。


「はい。恋人同士です♪」

「でしたらぎゃらくしーくりーむ団子が食べられます。他にも色々ありますが、なににしますか?」

「とりあえずぎゃらくしーくりーむ団子をニ十個ください」

「わかりました。そちらの席に座ってお待ちください」


 雑多と沖田は椅子に座り、団子がやってくるのを待つ。

 建物の中にいた男女はイチャイチャしながら、団子を食べさせ合っている。

 それを見て雑多は気まずそうに俯く。


「アハハハ。器用くん。もしかしてこういうの苦手?」


 苦笑しながら問い掛ける沖田。

 雑多は少し口ごもった後、「はい」と答える。


「その……カップル……恋人同士の男女を見ていると、むず痒くて」

「あ~それは私も分かるよ。私も仲のいい男女を見ているとなぜか恥ずかしいって思うんだ」

「ああ、やっぱり?同じですね、俺たち」

「うん!同じ同じ」


 明るい笑顔を浮かべる沖田。

 そんな彼女を雑多は可愛いと素直に思った。

 だが同時に違和感を覚える。

 本当にあの時、戦っていた沖田総司なのかと。


(あの時の沖田さんは死神のように恐ろしく、強かった。だけど……今の沖田さんを見て、別人なんじゃないかと思ってしまう)


 今、雑多の目の前にいるのは、ごくごく普通の女の子。

 戦っている時の死神のような彼女とは違う。

 どちらが本当の沖田総司なのか、雑多は分からなかった。


「フフフ……でも、ちょっと憧れるな。恋人」

「沖田さんは作らないんですか?モテそうですけど?」

「いや~……恋人を作りたいという気持ちはあるんだけど。だぶん私には出来ないよ。私は……普通じゃないから」

「普通じゃない?」

「うん。君と一緒だよ。君と私は……戦いの中でしか生きていると実感できない」

「……」


 雑多はなにも答えず、定員が用意したお茶を一口飲む。


「戦うのが楽しい。戦いが自分の全て。君と私は生まれながらの戦闘狂なんだよ」

「それは……」

「戦いが大切なもの。君と私は人間ではなく、化物。戦場でしか生きられない飢えた化物」

「……」


 雑多は否定ができなかった。

 なぜなら沖田はなにも間違ったことを言っていない。


「そして君はいずれ……人斬りになる」

「そんな!!」


 雑多は「そんなことはしない」と言おうとした。

 しかし沖田の真剣な目を見て、言葉が出ない。

 そして気付く。

 沖田はしたのだ。人殺しを。

 知っているからこそ、雑多は忠告しているのだ。


(いや……なんとなくわかっていた。俺がいた世界の沖田総司も人斬りと呼ばれていた。だからこの世界の沖田さんももしかしたらと)


 雑多はなにも言葉が出なかった。

 ただ静かに俯く。

 その時、


「おまたせしました~。ぎゃらくしーくりーむ団子です」


 女性定員がニ十本の団子を乗せた皿を持ってきた。

 団子には白い生クリームとキラキラ輝く銀色の粒の砂糖が乗っている。


「さて、この話はここまで。食べよ食べよ」


 明るい笑顔を浮かべて、沖田はそう言った。

 雑多は暗い表情を浮かべて、「はい」と返事をする。


「ん~!このくりーむ?と銀色の砂糖がとっても甘くておいしい!」


 パクパクと美味しそうに団子を食べる沖田。

 雑多も団子を食べるが、味がしなかった。

 沖田総司の言葉が頭から離れないせいで。


(人斬り……か。本当にそうなるのかな)


 命を懸けた戦いがしたい。

 そのことに偽りはなかった。

 けれど……雑多は別に人殺しをしたいわけではない。

 ただ純粋に戦いを楽しみたいのだ。


(やめやめ。これはあとで考えよう。それよりこの団子を作った人のことを聞こう)


 頭を左右に振った雑多は、団子を運んでいる女性定員に声を掛ける。


「あの、すみません」

「はい!なんでしょう?」

「このギャラクシークリーム団子を考えたのは誰でしょう?」

「ああ、その団子は私の夫……店長が考えたんです」

「あの、その人と会えます?」

「え?失礼ですが……お客様と店長とはどういう関係でしょうか?」

「あ、いえ……関係者と言いますか……実は自分もその店長とは同じ世界の出身かもしれないので、会ってみたいと思いまして」

「!!もしかして、あなたも異世界人ですか?」

「は、はい」

「少々お待ちを!」


 女性定員は慌てて店の奥に消えた。

 数分後、女性定員が雑多のところに戻ってくる。


「おまたせしました。主人……店長が今すぐにお会いしたいそうです」

「!ありがとうございます。すぐに行きます」


 雑多は椅子から立ち上がる。


「沖田さん。少し待ってもらっていいですか?」


「わかった。ここで待ってろよ」


 沖田は団子を食べながら、手を振る。


 読んでくれてありがとうございます。

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