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異世界新選組  作者: ジーアイ
第一章 異世界新選組の雑用係
13/19

ゾーン

「そんな君だから少しだけ見せてあげる。私の本気を」


 氷のような冷たい声を漏らす沖田総司。

 そんな彼女の瞳に、四角星の形をした光が宿る。


「!?」


 咄嗟に器用雑多は距離を取る。

 理由は分からない。

 ただ光を宿した沖田総司の瞳を見た瞬間、雑多は自分が狩られる存在だと本能的に認識した。

 そして彼の勘は当たっている。


「シッ!」


 沖田総司は刀を振るう。

 それに合わせて雑多も刀を振るった。

 刀と刀は金属音を響かせながらぶつかり合い、


 雑多の刀が真っ二つに切断される。


「!複製!」


 雑多は慌てて新たな刀を生み出す。

 直後、沖田の剣撃が彼を襲う。

 ギリギリ反応し、彼女の剣撃を雑多は刀で防ぐ。

 しかし刀はまた真っ二つになってしまう。


(さっきより剣の腕が上がってる!?これが沖田さんの本気?だけどスピードとパワーはさっきと同じだ。どういう……)


 沖田の剣撃を必死に躱しながら、雑多は彼女を観察する。

 そして観察し、気が付く。

 沖田総司が()()()()()()()()()()()()


(そうか!沖田さんはゾーンに入ったのか!!)


 ゾーン。

 極限の集中状態になり、最高のパフォーマンスをすることができる精神状態。

 周りの時間の流れが遅く感じたり、余計な音が一切聞こえなくなる。

 ただ簡単に使えるものではなく、三つの条件を満たさないといけないと言われているのだ。

 一つは明確な目標であること。

 二つ目は目標は難しすぎず、簡単すぎないこと。

 三つ目は目標に挑戦するのが楽しいと思うこと。


(ゾーンなんてアニメみたいにポンポンと発動できるものではない。だけど沖田さんはそれを自由に使える。ああ……なんて、なんて)


 器用雑多は口元を三日月に歪める。


(なんて……最高なんだ)


 雑多の心臓がドクンドクン!と高鳴る。

 同時に彼の瞳孔が縦に割れた。

 まるで獲物を見つけた蛇の目だ。


「最高に……興奮する!!」


 雑多は両手からそれぞれ魔装を生み出す。

 右手からは刀型魔装―――菊一文字血雨を。

 そして左手からは銃剣型魔装―――和泉守修羅を。


「二刀流!?」


 目を見開く沖田に、雑多は突撃した。

 先ほどよりも速く動き、そして高く跳躍する。

 跳躍した雑多は身体を回転させて、刀と銃剣を振るう。


「くっ!」


 雑多の攻撃を刀で防いだ沖田は軽く吹き飛ぶ。

 そんな彼女の懐に一瞬で入った雑多は荒々しくも、だけど美しく剣と銃剣を振るって斬撃を放つ。

 顔をわずかに歪めた沖田は刀で雑多の連撃を受け流す。


「君、二刀流なんてできたんだ。しかもその動き……見たことないよ」

「アニメやゲームに登場した二刀流キャラの真似ですよ。それとカッコイイからアクロバティックを学んでました。まぁ……強いて言うなら、器用流戦闘術ってところですかね!」


 雑多は身体を低くし、沖田の足を払う。

 バランスを崩した彼女に銃剣の銃口を向け、弾丸を撃ちこむ。

 超高速に放たれた弾丸を沖田は紙一重で躱し、後ろに下がった。


「やるね」

「どうも」


 技とは誰もがゼロから生み出すものではない。

 最初は他人の技を真似をし、アレンジを加え、新たな技へと進化させる。

 器用雑多はそれと同じことをしたのだ。

 今まで経験した技。

 今まで溜め込んできたオタク知識。

 それを戦闘の技に利用したのだ。


「沖田さん。こっからは簡単に俺を倒すことはできませんよ?」

「……」


 沖田は無言のまま器用雑多を見つめる。

 そしてプッと吹き出し、


「アハハハハハ!」


 楽しそうに笑った。


「最高最高!こんな楽しいのは初めてだよ。しかも君の目……そこも私と同じなんだ。アハハハハハ!」


 沖田総司は大きな声で笑う。

 そして思いっきり笑った後、彼女はとてつもない殺気を放つ。

 新選組の女性たちの何人かが気を失って、倒れる。


「君とは全力で戦いたい(殺し合いたい)よ。器用くん」

「俺もです」


 二人の戦士は己の武器を強く握り締める。

 ここから先は本当の戦い。

 全力の殺し合い。

 だが二人は止まらない。

 止まりたくなかった。


「行くよ」

「はい」


 二人は笑いながら、全力を出そうとした。

 その時、


「それまで!」


 大きな声が聞こえた。

 声の主は土方歳三だ。


「これ以上の戦いは私が認めない」


 彼女は鬼の如き威圧を放ちながら、そう言った。

 沖田と雑多はしばらく無言のままでいると、土方は目を鋭くする。


「なんか文句はあるか?」

「「ありません」」


 沖田と雑多は魔装を消し去り、両手を挙げる。


「ならいい。それと雑多。今すぐ屯所に行って掃除して来い」

「え?でももうちょっとここで訓練を」

「いいからしてこい」

「……はい」


<><><><>


 訓練所から器用雑多が去った後、土方は沖田に近付く。


「沖田……お前」

「すみません。楽しくなっちゃって」


 てへぺろ♪と舌を出す沖田。

 そんな彼女を見て、ため息を吐いた土方は目頭を指で揉む。


「まぁいい。で?お前から見て、器用はどうだった?」

「そうですね。やっぱり私と同類。人の皮を被った化物です」


 土方は目を細める。


「私、本気を出す時……すっごい集中できるんです。全てが遅く見えて、どう動けばいいか分かるんです。でもそれができるのは私だけ」

「……」

「でも器用くんは私と同じことができた。それも自分の意思で。きっと器用くんは天狗や鬼……もしくは龍にもなるかもしれません」


 沖田は楽しそうに笑い、瞳を怪しく光らせる。


「これから楽しみだね。器用くん♪」

 読んでくれてありがとうございます。

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