同類
「私と……戦ってくれないかな?」
沖田総司の言葉を聞いて、器用雑多は一瞬だけ思考が停止した。
初めて出会った時、とてつもない殺気を放っていた桃髪の少女。
そんな彼女と戦う。
戦うことができると理解した雑多は、口元を三日月に歪める。
彼の瞳が爛々と輝き、心臓がドクンドクンと高鳴った。
(ああ……なんでだろう。あの時は恐ろしい化物と思っていたのに、今ではとても美味しそうなごちそうに見える)
器用雑多の闘争本能が叫んでいた。
早く沖田総司と戦いたい。
早くこの強者と戦いたい。
早く、早く、早く。
早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く。
コイツを知りたい。
「いいですよ。やりましょう……戦いを」
雑多がそう言うと、沖田は目を細めて静かに微笑む。
その微笑みは花の如く美しく、そして死神の如く恐ろしかった。
全身が凍り付くような感覚と全身の血が沸騰するような感覚が雑多を襲う。
「魔装顕現、菊一文字血雨」
沖田総司は唱えた。
すると彼女の右手から一本の刀が現れる。
その刀の刀身は血の如く赤く、恐ろしくも美しい。
「それがあなたの魔装ですか」
「うん。能力は切れ味をよくする。ただそれだけだよ」
「なるほど……なら俺もその刀で戦いましょう」
雑多は右手を前に突き出し、唱える。
「複製」
直後、彼の右手から赤い刀—――菊一文字血雨が現れる。
雑多は刀を両手で握り締め、構えた。
剣道の基本中の基本である正眼の構えだ。
「へぇ~……なにかやってたみたいだね」
「剣道を少し」
「ふふふ。そっか」
沖田総司は膝を曲げて腰を低くし、刀を顔の横に構える。
彼女の剣の構え方を見て、雑多は眉を顰める。
「あれは……霞の構えか?にしては姿勢が低いような)
雑多は前の世界で飢えを満たすために、あらゆることをしてきた。
その中には剣術もあり、だから彼にはある程度の知識がある。
だからこそ不思議だった。
沖田総司は腰を低くしすぎている。
「天然理心流の剣技。ご覧あれ」
刹那、音もなく一瞬で雑多の懐に入った。
「なっ!?五メートルは離れていたのに一瞬で!?」
目を大きく見開く雑多に、沖田は嵐の如き連撃を放つ。
迫りくる斬撃の嵐。
それを見て雑多は理解する。
一つ一つの斬撃が命を奪う必殺の攻撃なのだと。
「いいな!燃える!」
笑みを浮かべながら雑多はわずかに身体を傾けて、紙一重で斬撃の嵐を躱す。
そして彼は刀を振り下ろした。
「甘いよ」
沖田は軽く刀を振るい、雑多の一撃を弾き返した。
金属音が鳴り響き、火花が飛び散る。
「くっ!」
雑多は慌てて後ろに移動した。
同時に沖田総司は腰を低くし、また一瞬で雑多の懐に入る。
音を立てず一瞬で懐に入ってくる彼女の移動術を、雑多は自分なりに理解した。
(そういうことか!あえて腰を低くして全身をバネのように使って移動しているのか。面白い!)
楽しそうに笑う雑多。
そんな彼に沖田総司は容赦なく斬撃を放つ。
全ての攻撃をギリギリ躱す雑多は、彼女の動きを細かく記憶する。
「へぇ~やるね。なら」
沖田は瞳を怪しく光らせ、静かに息を吐く。
そして、
「無明三段突き」
次の瞬間、超高速の三度の刺突が放たれた。
躱すことは不可能な三連撃。
それを目にした雑多は……笑みを深め、口を動かす。
「無明三段突き」
直後、雑多は超高速の三連刺突を放つ。
三連撃と三連撃は真正面からぶつかり合い、火花が散る。
「!?」
沖田は目を大きく見開き、後ろに跳んで距離を取る。
彼女の頬から一筋の汗が流れた。
「ハハハハ……」
雑多はただ笑う。
できないことができて喜んでいる子供のように。
「こんな感じかな」
静かに刀を構え、彼は腰を低くした。
そして音を立てずに一瞬で沖田の懐に入る。
その動きは沖田総司の移動術だった。
「!?私の」
「あなたの技……盗ませてもらいました」
「言うね」
桃色の瞳を怪しく光らせた沖田は斬撃の嵐を放つ。
同時に雑多も刀を振るい、斬撃の嵐を放った。
二つの斬撃の嵐はぶつかり合い、火花が飛び散る。
「おい、あれって」
「沖田さんと同じ動き」
「嘘でしょ!?」
新選組の女性たちは訓練をするのをやめて、雑多と沖田の戦いを見ていた。
同じ魔装で戦い、同じ剣技で戦う二人。
美しくも、恐ろしい剣舞。
誰もが驚いて目を見開く。
だが一番驚いていたのは沖田総司だった。
彼女は今、鏡にいる自分と戦っているような感覚を覚えている。
「……甘く見ていたよ。まさかここまですごいなんて」
「褒めていただき光栄です」
刀同士で鍔迫り合いをしながら、喋る沖田と雑多。
沖田総司は目を細め、氷のように冷たい声を漏らす。
「やっぱり君は私と同類だよ。人間じゃない」
「人を化物みたいに言わないでもらえます?」
「ううん。君は化物だよ。そんな君だから少しだけ見せてあげる」
「私の本気を」
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