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異世界新選組  作者: ジーアイ
第一章 異世界新選組の雑用係
11/19

非常戦闘員

 水で濡らした雑巾で床を拭く器用雑多。

 彼は気まずそうな顔で掃除をしていた。


「あ、あの~沖田さん?なんでずっと俺の傍にいるんですか?」

「気のせいだよ」


 雑多が視線を向けた先には、団子を食べる桃髪の少女—――沖田総司の姿があった。


(いや気のせいじゃないだろう。もう三日間ず~と俺の傍にいるんだけど?)


 怪異と初めて戦ってから三日が経った。

 その三日間、沖田総司は雑多の傍にいるのだ。

 ご飯を作る時も、掃除する時も。

 そして……厠や風呂に行く時も。

 まるで監視されているかのよう。


(ず~と見られているからストレスが溜まるな。ああ~何とかしてストレス発散したい。漫画が読みてぇ、アニメが見てぇ、ゲームしてぇ、筋トレしてぇ、ランニングしてぇ、戦いてぇ~)


 雑多が心の中で僅かにいらいらしていた時、一人の女性が近づいてきた。

 土方歳三だ。

 彼女は鋭い目つきで、床を掃除している雑多を睨みつける。

 鬼のような威圧に、雑多はビクビクと怯えた。


「おい」

「は、はい!」

「その掃除が終わったら、訓練場に来い」

「え?」

「お前を……鍛える」


<><><><>


 新選組の屯所にある大きな道場。

 そこでは剣や槍、弓などの魔装で新選組の女性たちは訓練していた。

 ある者は剣と剣をぶつけ合い。

 ある者は的に向かって矢を放ち。

 ある者は怪異のような形をした動く石像と戦っていた。


「ここは新選組専用訓練道場……ですよね?」

「そうだ、器用。この道場は製作系魔装で作られた特別製。ここではどんな激しく戦おうが建物は壊れないし、怪異を模した動く石像と戦えるし、しかも怪我をしてもすぐに治る」


 土方の言葉を聞いて、雑多は「すげぇ~」と声を漏らす。


「魔装にも色んな種類があるんですね」

「そうだ。魔装には戦うものもあれば、怪我を治したり、なにかを作ったりするものもある」

「へぇ~」

「お前は週に三日、ここで訓練してもらう」

「あの……理由を聞いても?」

「……ここ最近、怪異の出現が多くてな。もしもの時があるかもしれない。そこで非常用の戦闘員としてお前を育てることにした。近藤さんからお前が魔装を使うことができるのは聞いている」


 僅かに間を開けて、視線を右下に向ける土方歳三。

 そんな彼女を見て、雑多は気付く。

 土方歳三はなにかを隠していると。


(人間ってのは嘘を言う時、必ず顔か身体に出る。目を泳がせたり、早口になったり、口元に手を当てたりなど……色々ある。さっき土方さんが言ったことは嘘ではないが、本当でもない。もっと他の理由があるんだろう。でも……まぁいい。戦闘訓練できるならな)


 器用雑多は口元を三日月に歪め、瞳を怪しく光らせる。


(ここでなら飢えをマシにすることができるし、なによりここで鍛えれば強くなれる)


 人間は誰もが強くなりたいと願う。

 その心理は弱さを隠したい、他人から認められたいという劣等感や承認欲求などだ。

 強くなることで不安から解放しようとする。

 人はなぜ勉強を頑張って、テスト一位を目指す?

 人はなぜ体を鍛えて、スポーツ大会で金メダルを目指す?

 答えは簡単。己が最強(一番)であると証明したいから。


 だが器用雑多は違う。

 彼が強くなりたい理由……それは、


(強くなれば、さらに強い怪異と戦える)


 雑多の願いは、強者との命懸けの戦闘。

 強力な怪異と激しい戦いをしたい。

 そのためには戦えるようにならなければならない。

 故に強くなりたい。

 そんな飢えた猛獣のような闘争心が、雑多の本質。


「……とりあえず一人一人に教えてもらえ」

「わかりました、土方さん。……って、誰から教えてもらえれば」

「そうだな……まずは私の魔装を複製し、動きを覚えろ」

「わ、わかりました」


 雑多から少し離れ、土方歳三は唱える。


「魔装顕現、和泉守修羅(いずみのかみしゅら)


 次の瞬間、なにもないところから銃身が長い銃が出現。

 その銃の銃身には剣のような刃がついていた。

 言葉で言い表すなら銃剣だ。


「これが私の魔装だ。能力はあらゆる動きを加速させるというものだ」

「おお~!かっこいい!!」


 瞳をキラキラと輝かせながら、雑多は土方の銃剣型魔装を見つめる。

 すると土方は目を鋭くした。


「おい、ジロジロ見るな」

「す、すいません!」


 慌てて頭を下げる器用雑多。

 そんな彼を見て、土方歳三はため息を吐く。


「……とりあえず今から怪異を模した石像と戦うから見ていろ」


 土方はパチンと指を鳴らした。

 すると床から異形の怪物の形をした石像が現れる。

 その石像は四本の腕を生やし、目がない。


「フゥ―……」


 土方は銃剣を両手で構え、息を静かに吐く。

 そして弾丸の如き速さで突撃した。

 石像は四本の腕を振るい、迫りくる土方に攻撃を仕掛ける。

 四つの拳を土方は素早く銃剣で受け流し、弾丸で破壊した。


「フゥ!」


 土方は一瞬で石像の背後に回り込み、素早く首を斬り飛ばした。

 首を斬り飛ばされた石像は砂と化して消滅。

 予想以上に石像を早く倒した土方を見て、器用雑多は驚いて目を見開く。


「すっげぇ~……流石は新選組副長だな」

「ボケっとしてないで、さっさと訓練を始めろ」

「は、はい」


 器用雑多は慌てて唱える。

 己の武器の名を。


「魔装顕現、写鏡腕輪」


 次の瞬間、雑多の右手首に鏡が埋め込まれた腕輪が出現する。


「複製」


 雑多がそう言うと、なにもないところから銃剣型魔装―――和泉守修羅が現れる。


「ほう。確かに私の魔装とそっくりだ」


 興味深そうに土方は、雑多が生み出した複製品を見つめる。


「よし。ならそれで戦え」

「はい。わかりました」


 土方がパチンと指を鳴らすと、さきほどと同じ怪物の石像が現れる。


「フゥ―……」


 器用雑多は静かに息を吐き、両手で銃剣を構える。

 その構えは、土方歳三と同じだった。


「行きます」


 床を強く蹴り、素早く突撃する雑多。

 そんな彼に向かって石像は四本の腕を振るい、拳を放つ。

 迫りくる拳を雑多は銃剣で受け流し、弾丸で破壊する。

 土方歳三と比べたら遅い動き。

 だが間違いなく彼女の技。

 呼吸の仕方も、足の動きも、銃剣の使い方も……全てが土方歳三と同じ。


「シッ!」


 雑多は素早く石像の背後に回り込む。

 そして……石像の肘と膝の裏すべてに弾丸を撃ちこみ、首を斬り飛ばした。

 石像は砂と化して消滅していく。


「フゥ」


 石像を倒した雑多は息を吐き、肩から力を抜く。

 そんな彼に土方歳三はゆっくりと近づき、問い掛ける。

 威圧するような声で。


「おい。最後になんで肘と膝に弾丸を撃った?」

「え、えっとですね……そっちのほうが確実に倒せると思ったからです」

「なに?」

「肘や膝などの関節を破壊することで動きを封じ、敵の首を斬り飛ばす。そちらのほうがいいと思いました」

「……」


 土方は目を細めながら、顎に手を当てる。


「……よし、他の奴らからも魔装を複製できるようにして、技を盗み、自分のものにしろ」

「は、はい!」


 雑多が慌てて返事をした時、


「器用くん。ちょっといいかな?」


 少し離れたところにいた沖田総司が桃髪を揺らしながら、雑多に近付く。

 彼女は明るく、ニコニコと笑っていた。


「な、なんでしょう?沖田さん」

「ん~とね。実はお願いがあって」

「お願い……ですか?」

「うん!そう」


 沖田は桃色の瞳を怪しく光らせながら、雑多を見つめる。


「私と……戦ってくれないかな?」

 読んでくれてありがとうございます。

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