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異世界新選組  作者: ジーアイ
第一章 異世界新選組の雑用係
1/19

始まり

 暗い空に浮かぶ大きな満月。

 その満月の光は、山の中にいる二人の少年を照らす。


「この!いい加減に死ね!」


 白い短い髪を伸ばした少年は青い剣を振るった。

 すると空中にいくつもの氷柱が現れ、高速に飛んだ。

 弾丸の如き速さで飛ぶ無数の氷柱は、黒髪の少年を襲う。

 しかし黒髪の少年は恐れない。


「来い」


 静かな声で呟くと、少年の右手首に嵌められた腕輪が輝き出した。

 すると銃と剣が一つになったような武器が出現。

 銃剣を構え、少年は動き出す。


「シッ!」


 迫りくる無数の氷柱を銃剣の刃で切り裂き、弾丸で破壊した。

 白髪の少年はガリッと歯噛みし、青い剣を消す。

 そして茶色に輝く剣を生み出した。


「こいつならどうだ!」


 彼は茶色の剣を振るい、巨大な石の人型人形を生み出す。

 その石の人型人形は黒髪の少年に突撃し、拳を振り下ろした。

 黒髪の少年は後ろに素早く跳んで、拳を躱す。

 彼が先ほどまでいた地面は、巨大人形の拳によって大きく陥没した。


「なら……こいつだ」


 銃剣を投げ捨てた黒髪の少年は、ウォーハンマーを生み出した。

 すると彼の筋肉が膨れ上がる。


「砕けろ」


 強化された筋肉の力で彼は高く跳躍。

 そして全身の筋肉を使い、ウォーハンマーを力強く振るう。

 重い一撃は巨大な石人形の頭を粉砕。

 それを見て、白髪の少年は眉間に皺を寄せる。


「なんなんだ……お前はなんなんだ!」


 怒りを宿した声で問う白髪の少年。

 地面に着地した黒髪の少年は、落ち着いた声で答える。


「新選組雑用係。器用雑多(きようざつた)だ」

「雑用係……だと?」


 黒髪の少年—――器用雑多の言葉を聞いて、白髪の少年は額に青筋を浮かべる。


「ふざけんなよな!!」


 白髪の少年は茶色の剣を消し去り、赤い剣を生み出す。

 その剣は赤い炎を纏っており、周囲にある木や草を燃やした。

 雑多はウォーハンマーを地面に投げ捨て、別の武器を生み出す。

 その武器は血の如く赤い刀。

 黒い瞳を怪しく光らせながら、雑多は刀を構える。


(まったく……なんでこうなったんだろうな)


 雑多は思い出す。

 自分がこの世界に来たときのことを。


<><><><>


「……」


 日本のとある街の中、一人の少年—――器用雑多は空を見つめながら、考えていた。

 なぜか物足りないな……と。


「ハァ……」

「どうしたの、器用くん?ため息なんか出して」


 雑多の隣にいた眼鏡を掛けた少年は、首を傾げながら問い掛けた。


「ああ、田中……いやな、なんか物足りないな~って」

「物足りないって何が?」

「さぁ……なんだろう」


 雑多にもなにが言いたいのか、分からなかった。


 器用雑多。

 平凡な人生を生きる十八歳。

 普通の家庭に生まれ、普通の人として育ち、普通の高校生活を送っていた。

 容姿は黒髪黒目。

 ブサイクでもなければ、イケメンでもない。

 特技と言えば、他の人より器用だというぐらい。


「俺さ……今の人生……満足しているのにさ、なんか違うって感じる時があるんだよね」


 今まで雑多は本当に平凡な少年として生きていた。

 そのことに彼は不満はないと言える。

 だが……なぜか物足りないと思ってしまっていた。


「よく分からないけどさ……なんかモヤモヤ?みたいな感じがするんだよな」

「ふ~ん」

「今の楽しみと言えばアクションゲームをしたり、バトル系アニメを見たり、学校が終わった後にお前と一緒に帰るぐらいかな」

「そう言ってくれると嬉しいね。ならそんな君にこれを貸してあげよう」


 田中という少年は鞄から一冊の本を取り出す。

 その本には刀を持って戦う男の絵が描かれていた。


「なにこれ?」

「新作ライトノベル『新選組伝説、斬撃嵐』」

「また新選組の本を買ったのか?」

「僕は新選組オタクだからね」


 エッヘンと胸を張る田中。

 彼は江戸時代で活躍していた浪士隊―――新選組が大好きな少年。

 見てきた新選組系のドラマや映画、漫画は数百以上。

 新選組検定では1級を持っている。

 新選組に関しては、もはや専門家レベル。


「お前のおかげで俺まで新選組に詳しくなっちまったよ」

「いいことじゃん。じゃあ読み終わったら感想を教えて~」


 田中は雑多とは別の道を歩き、「バイバイ~」と手を振りながら姿を消した。

 残された雑多は新選組の本を見つめる。


「新選組……ね」


<><><><>


 家に帰った雑多は適当に食事を済ませた後、自分の部屋で友達から借りた新選組の本を読み始めた。

 ベットの上で転がりながら、ペラペラと紙をめくる。


「ふ~ん……今まで読んだ新選組の本の中で一番面白いかも」


 それから雑多は四時間ぐらいかけて本を読んだ。


「ふぅ~……面白かったな」


 本を読み終えた雑多は上半身を起こし、背伸びをする。

 彼は面白いと思った本は一気に読む派だ。


「いや~面白かったな。ギャグとアクションが組み合わさった新選組の話。最高だった~……」


 フゥ―と軽く息を吐いた彼は、天井を見つめながらポツリと呟く。


「……羨ましい」


 なぜ新選組の本を読んでそんな言葉が出たのか。

 なぜ羨ましいと思ったのか。

 なぜ虚しいという感情を抱いているのか。

 雑多自身にも……分からなかった。


「ん?」


 グゥ~とお腹が鳴っていることに気付いた雑多は、「そう言えば夕食はまだ食べてなかった」と思い、リビングに向かうことにした。

 ベットから降りた雑多は扉のドアノブを握り締め、ガチャと回す。

 そして扉を開けると、彼の意識が白く染まった。


<><><><>


「……え?」


 意識を取り戻した器用雑多は、自分の目を疑った。


「え?」


 彼は目を擦るが、目に映る光景は変わらなかった。


「え?え?え?」


 今、雑多の目に映っていたのは、古い日本の光景。

 日本の伝統的衣装である小袖を着た男と女。

 人を乗せて走る人力車。

 瓦と木材で作られたであろういくつもの町屋。


「ハ…ハハハハ。江戸時代にでもタイムリープしたのか俺?」


 ドラマや映画でしか見たことない光景に、雑多は頬を引き攣った。

 夢でも見ているのか?と思った彼は自分の頬を強く抓る。


「……痛い」


 痛みを感じた。

 そしてなにより今、見ている光景は作りものにしてはリアルすぎることに彼は気付く。

 

「と……いうことは、これって現実……か?」


 雑多は頭痛を覚え、倒れそうになった。

 その時、


 カンカンカンカン!


 大きな鐘の音が鳴り響いた。

 その鐘の音を聞いた人々は慌てて走り出す。


「怪異だああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「逃げろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「キャアアァァァァァァァァァ!」


 響き渡る人々の悲鳴を聞いて、雑多は困惑する。


「怪異?」


 いったいなにが起きたんだ?と雑多が思ったその時、黒い物体が彼の目の前に空から落ちてきた。

 煙が舞い上がり、思わず目を閉じた雑多はゲホゲホと咳をする。


「な、なんだ。いっ…た……い?」


 ゆっくりと目を開けた雑多は、言葉失った。

 今、彼の目には信じられないものが映っている。

 それは中型自動車なみの大きさの生物。

 ギョロギョロと動くいくつもの目玉。

 六本の腕に太長い脚。

 ギザギザの歯に、頭から伸びた鋭い角。


 一言で言い表すなら……怪物だ。

 その怪物が口から白い煙を吐きながら、雑多を見つめていた。


「えぇ~と……とりあえず」


 雑多はゆっくりと振り返った次の瞬間、全力で駆け出した。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!なんなんだマジで!?」


 死ぬ気で走る雑多。

 今までの人生の中で最も速く走る彼は、後ろに視線を向ける。


「グアアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」


 口を大きく開けて追いかけてくる異形の怪物。

 少年は前に視線を戻し、逃げることに集中した。

 しかし怪物はすぐに追いつく。

 そして怪物は腕を振るった。


「やばっ!」


 怪物の鋭い爪が雑多に襲い掛かる。

 彼の頭の中で『死』という文字が浮かんだ。

 その時、


「頭を伏せろ、少年!」


 女性の声が聞こえた。

 咄嗟に雑多は頭を伏せる。

 その直後、白い山形模様をあしらった浅葱(あさぎ)の羽織を羽織った女性が現れた。

 彼女は桜の模様が施された大剣を振るい、怪物を切り裂いた。


「がアアアァァァァァァァァァァァァ!!」


 傷口から青い血を流しながら、地面に倒れる怪物。

 それを見て雑多は呆然とした。


「いや~危ないところだったな。間に合ってよかった。ガハハハハハハハ!」


 大剣を肩に担いだ女性は、大声で笑う。

 その女性は背が高く、胸がスイカ並みに大きい。

 短い茶色の髪を伸ばしており、両目に宿る瞳はブラウンダイヤモンドの如く美しい。


「あ…あなたは?」


 雑多は無意識に尋ねた。

 すると女性はニッと歯を剥きだしながら、笑みを浮かべる。


「私は新選組局長の近藤勇(こんどういさみ)だ!」

 読んでくれてありがとうございます。

 少しでも読者の皆様が楽しんでくれたら嬉しいです。

 これからもよろしくお願いします。

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