第15章 命尽きる
大輔は手術を受けたが銃弾が当たった場所が重要な血管を傷つけた為、医者は今夜が山だと美緒と由紀と桜に告げた。大輔はベッドの上で苦しんでいた。大輔は美緒にもし僕が死んだら銀行口座の名義変更を頼んだ。みずほ銀行に普通口座9億円と証券口座に約10億円があり貸金庫17番に通帳は保管している事を告げた。自宅も美緒の名義に変更し、由紀に言えばやってくれるはずと伝えた。由紀にも遺書を書くから立ち会ってもらい由紀の目の前で遺書を書いた。遺産はすべて美緒に譲渡すると書いた。その頃、高野刑事は逮捕されていた。桜には救急車を呼んでくれて有り難うと感謝した。先生が病室に入って来て「円城寺さん、今回の手術は残念ですが手の施し用がなく今晩が山になります。皆さんに伝えたい事があればお伝えください。」先生は大輔の目を見つめて目を伏せた。大輔は先生の言葉に目を閉じて観念し、ため息をフーと吐いた。「駄目だったか?これからだと思っていたんだが?美緒!」大輔は美緒を呼んだ。「美緒、悪い君にはこの先苦労をかける。すまない。お金はある。娘は頼んだ。名前は君がつけてくれないか?ピアノは是非教えてあげてくれないか?後、今、家に来ている生徒は君が教えてあげてくれ。みんな優秀だ。それと由紀と桜さんにも甘えていいんだぞ!僕の友達だから。」大輔は美緒の目を見て優しく見つめ微笑んだ。「大ちゃん。死んじゃ嫌!もう少し側に居させてよ。この子の顔も見れないのね。残念。大ちゃん。愛してる。あなたとの時間楽しかった。幸せでした。」美緒は涙を流した。「美緒幸せだったか?それなら良かった。悔いはない。」大輔も美緒の目を見て涙を流した。「次は由紀ちゃん。こっち来て!由紀ちゃんとは高校時代からの付き合いだったな長かった。由紀ちゃんがいなかったら今の僕はない!最高のダチでした。裁判頼んだぞ!今まで有り難う。最後にピアノコンサート出来た事嬉しかった。由紀ちゃんの幻想即興曲好きだったな!」大輔は由紀の目を見て涙を流して優しく微笑んだ。「大輔先生。私もあなたとの時間は楽しかった。ピアノが二人を繋ぎとめてくれていたんだね。コンサートをした時、気付いた。別れがこんな早く来るなんて思ってもいなかったわ。裁判は任せてね。一生シャバに出られないようにしてやるから!」由紀も大輔の目を見て涙を流しニコリ笑った。「有り難う。次は桜さん。毎日桜さんの笑顔に救われていました。桜さんの作る松前漬け好きだった。美味しかった。美緒にも作り方教えてあげてください。今度は美緒と娘の話し相手になってください。ピアノは続けて下さいね。美緒が教えてくれます。美緒が新しい男連れて来たら僕以下の男ならダメ出しして下さい。お金ない時は美緒に言えば貸してくれますから遠慮なく!」大輔は桜の目を見つめて涙を流した。「大輔先生こちらこそ色々有り難うございました。先生のお宅から聴こえてくるビアノの音色が好きでした。私より先に逝くなんて信じられません。」桜は大輔の目を見て笑顔で涙を流した。その後も三人は大輔のベットサイドに座り思い出話をして盛り上がった。午前4時を過ぎた頃、大輔が激しい痛みを感じベッドの上でのたうち廻った。「痛い!痛い!もうすぐお迎いにきそうだ!みんな有り難う!幸せだった。」大輔はそう言うと三人の目を見つめて、目を閉じて寝てしまった。美緒がナースコールを押したが三人の「大輔!」と叫ぶ声も届かず三人は大輔の手に握り看取られて天国へ逝った。大輔の目から涙が溢れ落ちた。先生が大輔の脈と瞳孔を確認し、「午前4時8分御臨終です。死因は大動脈損傷による大動脈破裂になります。」先生が三人の顔を見て目を伏せた。「お体を洗います。一緒に洗ってあげて下さい。」看護師が三人の顔を見た。看護師2人と美緒と由紀と桜でお風呂に行き、変わるがわる大輔の体を洗った。お腹の傷に三人は驚いた。午前中に出入りの葬儀屋が遺体を引き取りに来た。お通夜は自宅でやりたかったので棺に入れてもらい家のリビングに祭壇を設けた。由紀は「大ちゃんおかえりなさい。あなたのピアノでお別れの一曲弾かせてください。ショパンの別れの曲です。私からの本当の意味でのお別れの曲。大ちゃん、私悔しいよ。」由紀はピアノの椅子に座り手を鍵盤にかざし、泣きながら演奏を始めた。綺麗な音色だった。そこに居た者すべてが涙を拭った。お通夜は明日の午後6時となり、関係者に連絡をした。結婚式に参列してくれた方と大輔のピアノの生徒など次の日午前10時から告別式が行われたくさんの参列者がお別れを言いに来てくれた。円城寺大輔享年27歳のピアノを愛した短な生涯であった。




