79話
真っ白で分厚い雲が覆う空に向かってそそり立つ恐ろしく重厚な塔は、まるでサグラダファミリアのようだ。
「ふえええええぇ………」
ふわふわの黄色い髪の毛を風に流されながら上を向き、オカリナのような声をあげているのはルーナ。
「魔女の塔………宝物ひとつで一生遊んで暮らせるようになると言われるダンジョン。その反面世界一探索が困難なダンジョンとも言われ、年間に何千人もの人間が帰らぬ人となる」
そんなルーナを見て悪ガキ笑顔を浮かべているのは黄色いスライムだ。セト、ルーナ、ボルビックの三人は魔女の塔へとやって来た。
これはただの塔ではない。近づくほどに目に見えない恐怖という霧は吐き、ただここにあるだけで近づくものを威圧する存在なのだ。
「今日はもうやめておくか?」
ボルビックが聞く。その表情はセトとは違い、本当にやめておいた方が良いと思っているようだ。
「いえ、止めません!」
「いやいや、ルーナよ。冷静にならないと駄目だ、さっきも言った通りここは年間に何千人も死んでいる場所だ、意地だけじゃどうにもならない厳しい場所なんだ。大人しくお部屋に帰って温かいココアでも飲んでいるほうがいいんだよ」
「嫌だ!また私を置いてけぼりにするつもりだもん」
「そう言っても足が震えているじゃないか」
「震えてない!」
「これだけ言っても分からないなんてルーナは頑固者だなぁ」
スライムが苦笑いする。
「………」
おかしい。
ボルビックは首をひねる。今まで学校で見たルーナはこんなに自分の意志を貫くような子では無かったはずだ。
王族でありながら自我が薄いというか、気が弱いというか、セトに寄りかかって生きているようなところがあった。それなのにどうしたというのだろう。
「そういうボルビックの武器は剣か」
「ああそうだ、子供の頃から何百回と振ってきた相棒だからな」
「そして当然のごとく魔武器か。やはりいつもとは違って迫力があるな」
「セトは?」
「見ての通り丸腰、スライムだから人間みたいに器用に武器は使えない。これがスライムの弱点だな」
「まあ、お前にはあの体当たりがあるからな、別に心配してないよ」
「それじゃあルーナ、そろそろ落ち着いて来ただろ?そろそろ本当に魔女の塔に入るかどうか決めてくれ」
「入る」
ルーナははっきりと言い切った。
「わかったよ、それじゃあ後は頼んだぞボルビック」
「はぁ………王子に何かあったら全部俺の責任になるんだろうな、全く気が重いぞ」
「それが大人の責任ってもんだ、腹をくくれ」
ため息をついた後でボルビックは巨大な塔へと向かって歩きだし、そのあとにセトを抱えたルーナが続いた。
空では大きな雲がなかなかの速さで流れていく。どうやら上空では強い風が吹いているようだった。
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