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77話

 


 扉が開いた途端、そこにあったのは般若の顔だった。


「お、お前………!」


「元気か?」


「お前、よくも俺の前に顔を出せたな!」


「え、なにが?」


「何がじゃねぇだろ!あの襲撃事件の後始末を全部俺ひとりに任せやがって、あれから俺がどんだけ苦労したと思ってるんだ!呼び出し呼び出し呼び出しで、いろんなところに説明しに行かなきゃいかなかったし、同じような書類を何枚も何枚も書かなきゃいけなかったんだぞ!」


 とぼけたスライムの言葉にボルビックがものすごい勢いで捲し立てる。


 襲撃事件というのはセトへの恨みに見せかけた生徒誘拐事件を企てた犯人が国立学校を襲った事件である。


 襲撃者を全滅させた後、救援の兵たちが来る前にセトとルーナは、面倒ごとに巻き込まれたくないと、すぐさまその場を脱出していた。


 あれ以来学校は休校状態で生徒たちは自主学習という名の休みだが、教師たちは今後の対応策なども含め忙しかったので、顔を合わせたのは久しぶりだった。


「あの、先生」


「ん?」


 ボルビックはルーナの声に少し驚いた様子を見せた。どうやら興奮のあまりスライムしか目にはいていなかったようだ。


「これ、お土産なんですけど、良かったら妹さんとどうぞ」


「あ、ああ………これは?」


 ルーナが差し出したのは青い木が描かれた白い箱。


「「森のカスミ」っていういま学校ですごく話題になっているケーキ屋さんです。色々なフルーツを使ったケーキが美味しくて彩もきれいなんです」


「そうか………ありがとう、きっと妹も喜ぶと思う。俺は甘いものが苦手で、話題のケーキ屋とかそういうのは全然分からないから助かるよ」


「あと、これも………」


 そういって鞄から取り出したのは一枚の紙。


「これは!」


「私たちが通う学校の入学許可証です」


「おお………」


「セトと約束していたんですよね?先生が魔女の塔で護衛をしてくれる代わりにこれを渡すって」


 上等な紙が使われたそれには重厚な判子が押されていて、その隣には校長のサインも記されている。


「ああそうだ、けれどまさかこんなに早く許可を出してもらえるとは思いもしなかったな」


「うちの学校は国立なので、頼んだらすぐでした」


「そうか、さすがは王子だな。ありがとうよ………えーと、これはいまから編入することも出来るし、来年の頭からのタイミングで入学することも出来るのか」


「はい。お好きなタイミングでどうぞ。これでボルビックさんの妹さんと私は一緒の学校に通う事になりますね。もし何か困ったことがあったりしたら、頼ってもらって大丈夫ですよ」


「助かるよ………」


 ボルビックの声が少し震えている。


「よし、それじゃあ怒りは収まったようだから茶でも出してもらおうか。いつまでも客を玄関で立たせておくなんてのはマナー違反だからな」


「ちっ、」


 ボルビックは舌打ちをした後で、呆れたように笑った。


「全くしょうがないやつだな、今回だけは見逃してやるよ」





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