73話
差し込んできた朝の光でリアムは目を覚ました。
「あ………」
掛布団の上には赤いネズミがいる。昨日奴隷商から出て一緒にこの家にやって来た事を思い出した。
体調が良い。
こんなにぐっすり眠ることが出来たのはいつぶりだろう。きっとあの幸せだった時以来だ。今振り返ってみれば家族が笑顔だったあの時は確かに幸せだったのだと思う。
「ダグラス………」
丸まって寝ている小さな体に指の腹で触れてみる。いままで勝手に体に登ってきたことはあったけど、自分から触るのは初めて。生き物の柔らかさを感じて、なんだか泣きそうになった。
「ん、おう………リアムか」
「おはよう」
「おはようさん、よく眠れたか?」
「うん、ぐっすり」
ネズミは布団の上で伸びをした。
「だろうな、結構イビキがうるさかったからな」
にやりと笑った後で勢いよくベッドの上から飛び降りた。
「私はイビキなんかかかないから」
「いやいやマジだって、ぶごーぶごー言ってたし」
「なにそれ、変なウソはやめて」
「ウソじゃないって」
その時、扉をノックする音がした。
「え!?なに?!」
「多分セトとルーナだ。ほら、昨日言ってたじゃないか、様子を見に来てくれたんだろ?」
「そうだった………」
緊張する。
あの天使のように綺麗でお優しいルーナ様が来て下さっているんだ。ああ、緊張する。扉を開けてしまったらそこにはルーナ様がいるんだ。
「どうしようダグラス、わたし扉を開けられない」
「なんでだよ、開けるだけなんだからさっさとやればいいだろ?」
「だって私は人前に出られるような見た目じゃない」
「何言ってんだよ、昨日会ってるんだから大丈夫だろ。リアムは昨日と変わってないんだから驚いたりしないさ」
「そうだけど、そうだけど、でも、ルーナ様は王子様なのよ!?」
「だったら余計に速く出た方が良いぞ。こうしている間にも相手を待たせているってことだからな」
「ああ!そうか、そうだよね、どうしよう!私今とても失礼なことをしてしまっる!」
布団を跳ねのけ玄関へ向かう。その途中で一度だけ大嫌いな鏡を見て、髪の毛が顔を隠してくれるように手櫛で整えて、深呼吸してから扉を開けた。
「おはようご………え!?」
スライムを抱いた黄色い髪の美しい少女がいることは想像通りだったのだけど、その後ろには白い服を着た知らないオジサンがいた。
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