70話
看板に「オカノ奴隷商」と記されたなかなかに大きな石造りの建物の扉の鍵を開け、大欠伸をしながら中に入っていったのはこの店の店主であるオカノ。
正直言って店の中に入るたびに、げんなりとした気持ちになるのだが、他に食っていく術がわからないので仕方なくやっている。
店内のカーテンを開けていくと背中に奴隷たちの注目が集まるのを感じる。降り注ぐ朝の光で起きたやつ、もうとっくに起きていたやつ、色々いる。
鉄格子の隙間から覗く暗い目。ああ嫌だ嫌だ、俺が悪いわけじゃないのに、どうして毎日恨みがましい目で見られないといけないんだろう。
本当はプロのポーカープレイヤーになりたかった。けれど散々借金した挙句にマフィアに追い込みをかけられて、先祖伝来の土地を売ってようやく返済した。
あのときはもう、家族からも親戚からもとんでもなく白い目で見られて、もう二度とギャンブルはやらないと約束させられた。本当はいまでもちょっとだけやっているが、ちょっとだけだから別に良いだろう。そんなことを考えていたらポーカーをやりたくなってきた、さすがにこんな朝早くからギャンブル場は開いていないだろうけど。
扉の開く音がした。
「営業時間はまだですよ」そう言おうとして言えなかった。恐る恐る入店してきた黄色い髪の少女に気品があったから。
当たり前のことだが、自分のような一般庶民が貴族に対して少しでも失礼な態度を取ってしまったら何をされるか分からない。それが条件反射のようにオカノの体に染みついているのだ。
「ど、奴隷の人を購入したいのですが」
スライムを抱えた少女は明らかに緊張していた。きっと奴隷商に来るのは初めてなのだろう。
「はい。ここにはいま10人ほどの奴隷がおりますが、一体どのようなものをご希望でしょうか」
「ええと………リアムさんという人を」
「リアムですか、何かのお間違えではないですか?」
「間違いではありません。確かにそう言われましたから」
そう言われた?
「うちの店にたしかにリアムという名前の奴隷はおりますが、それは高貴な方にお見せできるようなものではありませんが………」
「………それでもいいんです」
少しの間考える時間があってから少女は意を決したように言った。
「わかりました。それではこちらへどうぞ」
頼むから面倒ごとだけは起こさないでくれよ。そう祈りつつオカノは地下室への扉を開いた。
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