69話
「麻飯飯店」という名前の料理店の今日の昼営業は貸し切り。入り口に下げられたプラカードをみて、ガッカリして帰っていく人たちの姿が何人もいた。
「うめー、やっぱりここの飯はうめぇ!」
静かな店内にある円いテーブルの上で、大きな肉にむしゃぶりついている赤いネズミが上機嫌に言った。
「この店には初めて来たが美味いな。隠れた名店ってやつか」
汁なし担々麺のようなものを食べているスライムが言う。
「本当に美味しいね、なんかほっぺたがきゅーってなっちゃう」
酸辣湯のようなものを食べている黄色い髪の少女が言う。
「俺のところにはいろんな食い物屋の情報が入ってくるけど、その中でもここは人気店なんですよ」
「ずいぶんと詳しいんだな」
「そりゃあそうですよ。俺はうまいものを食うために生きてるんですから」
「それに関しては俺も全く同じ意見だ」
「ここはデザートもいいんですよ」
「おすすめは?」
「胡麻団子、これはうまいです」
「えーおいしそう!」
「それじゃあ後で注文してみようか」
「うん」
ルーナのにっこり笑いを見た後でネズミが語り出す。
「ずっと探してた例のやつがようやく見つかりました」
「それって将来性のある奴隷のことか?」
「そうです」
「大丈夫な人なの?」
ルーナが不安そうな顔で聞く。
「まあ、多少の問題はあるかもしれないですが、根は悪いやつじゃないです。むしろ良いやつと言って良いと思いますね」
「ずいぶんと奥歯にものが挟まったような言い方だな」
「まあ………」
「はっきり言えよ」
「実を言うとそいつは人を殺しています」
「ほう」
「しかもそれは自分の親です」
「奴隷を買うなら良い人じゃないと嫌だとルーナが言っていたのは覚えているよな?」
「もちろん覚えています」
「それでもお前はそいつを仲間にしようと思っているのか?」
「そうです」
ネズミははっきりと言い切った。
「それを知った時最初は俺も、こいつは無いなと思いました。けど話を聞いてみれば悪魔である俺にとっては、そうなってもしょうがないだろうと思ったんです」
「親を殺すほどの事情か………」
「お二人がどう思うのかは分かりませんから、本人にはお前を俺の仲間として迎い入れたいなんてことは一言も言っていません」
「名前はなんていうやつだ?」
「リアムという女です」
「そいつは強くなるんだよな?」
「俺の特殊魔法「サクセス」で成長曲線を確かめたので間違いないです。今はヒョロヒョロでかなり頼りないですが、右肩上がりで強くなっていくはずです」
「そうか………どうだルーナ、その事情っていうのを聞いてみるか?」
「う、うん………」
貸し切りの料理店の静まり返った個室に戸惑いの声が響いた。
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